2024年9月21・22日に開催された「BITCOIN TOKYO 2024」において、Laser Digital Japan代表取締役社長の工藤秀明氏とSBI Zodia Custody代表取締役社長の狩野弘一氏が「ビットコインETF:資産運用のゲームチェンジャー」と題したセッションで議論した。米証券取引委員会(SEC)が2024年1月にビットコインETF(上場投資信託)を承認したことは、業界に大きな衝撃を持って受け入れられた。
今後の日本におけるビットコインETFの展望を両氏はどのように考えているのか。モデレーターは、ウィステリアハウス東京代表取締役の佐藤陽一郎氏が務めた。
ビットコインETFの衝撃
「米国のビットコインETFの承認は凄まじい衝撃だった」
工藤氏はその驚きをこう表現する。だが一方で、世界に目を向けてみると、デジタル資産ETP(Exchange Traded Products:「上場取引金融商品」を意味し、ETFもETPの一種)にアクセス可能な国は意外に多いと指摘。欧州では、世界に先駆けて2015年にビットコインETPがローンチされているほか、オーストラリア、ブラジル、カナダなど、多くの先進国で導入が進んでいる。
先進国で承認されていないのは、日本と韓国ぐらいだと同氏は述べた。
米国では、2024年1月にビットコインETFがローンチして以降、8カ月間で230億ドル(約3兆3000億円、1ドル144円換算)もの資金流入があったという。
「これはかなりのハイスピード。開示資料によると、1200以上の機関投資家がビットコインETFを保有していることが明らかになっている。米国では、すでに大きな広がりを見せている」(工藤氏)
ビットコインを直接保有する場合とETFで保有する場合とではさまざまな違いある。流動性や取引所、管理費用の違いなどだ。特に日本でのビットコインETFの可能性を考える場合は、税金の問題をクリアにすることが不可欠になる。
日本でもビットコインETFが認められれば、「裾野が広くなることで、産業的な意味合いが出てくるだろう。さらには、経済安全保障の面からも重要だと考えている。こうした技術が海外だけにしか存在しないのは問題だと思う」(工藤氏)
次の時代の金融を引っ張る存在に
両氏は、日本におけるビットコインETFの展望やその課題についてどのように考えているのだろうか。狩野氏は現在の日本市場の状況について次のように語る。
「日本人のマクロ金融知識のリテラシーは高い。ただ、暗号資産はさまざまなインシデントがあったこともあり、日本政府は、消費者保護の規制にいち早く着手した。一方でそのために、我々カストディに関しても非常に明確なルールがあり、海外の企業からの評価も高い印象だ」(狩野氏)
その明確な規制がアドバンテージでもあり、課題でもあると工藤氏は指摘する。
「暗号資産、ステーブルコイン、セキュリティ・トークン(デジタル証券)に関連する3つの法律が全部違う形で存在している。その分、規制が明確なわけだが、分断も生まれてしまっている状況になっている」(工藤氏)
日本でのビットコインETFが実現した未来は、どのような社会になっていくのだろうか。
「投資対象が増え、ユースケースも増えていくだろう。さまざまな相互関係がある中で問題も出てくるだろうが、ブロックチェーンは、金融業界のみならず社会を変革する力を持っていると思う。業界を挙げて環境を整備し、いろいろな可能性を広げていきたい」(狩野氏)
「世界的にデジタル資産のETF化が進んでいる中で、日本でビットコインETFが実現しない未来は想定しえないと思っている。伝統的金融にビットコインが取り込まれるという話ではなく、ビットコインETFが、伝統的金融を変え、次の時代の金融を引っ張っていくようなインパクトを生み出してくれると期待している」(工藤氏)
|文:橋本史郎
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:橋本史郎、CoinDesk JAPAN編集部