平将明デジタル大臣が2日、就任記者会見を行った。平大臣は「今回、石破総理よりデジタル大臣をはじめとしたさまざまな職務を拝命いただいたことを重く受け止め、誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化を進めるよう、近年発展著しいAIなど新しい技術の活用も含めて、関連する取り組みを強力に進めてまいりたいと考えております」と述べた。
その後の質疑応答は、石破首相が自民党総裁選の公約として掲げていた地方創生におけるデジタル活用を皮切りに、サイバーセキュリティ、マイナンバーカードの健康保険証利用、地方自治体のデジタル化、ライドシェアなど、さまざまなテーマに及んだ。特にマイナンバーカードの保険証利用については、不安の声や医療現場での混乱をあげ、従来の健康保険証との併用をなぜ行わないのか、拙速ではないかとの質問が続いた。
平大臣は、新型コロナウイルス感染拡大時に保険証のデジタル化が進んでいなかったためにマスクの配布や避難所での対応に難しい点があったことを指摘し、次のパンデミックや頻発している自然災害に備えるためにも、マイナンバーカードの健康保険証利用を推進していきたいと述べた。また人口減少が進み、人手不足が加速度的に進行する日本で、十分な行政サービス、社会保障サービスを提供するためにも不可欠と述べた。
さらに「日本の社会保障のコストは非常に大きい。そこに与えるメリットも考えて欲しい」と付け加えた。
10年前にはできなかったことができるように
Web3、ブロックチェーンについての質問は、全体から見れば多くはなかったが、石破首相が総裁選で掲げていた地方創生におけるデジタル活用については「地方創生は地方創生担当大臣が政策を作っていくが、デジタル庁としては、デジタルの切り口で地方創生に資する政策を提案していく」と述べた。
特に、石破首相が自民党総裁選で公約の柱に掲げた「地方創生2.0」については「私がかなり関与していた」と明かし、「10年前に地方創生担当副大臣を務めていたときにはできなかったことが今、デジタルが進化してできるようになった。ブロックチェーン、DAO(分散型自律組織)、NFTなどを使って、地方が持つアナログの価値を最大化できると思っている」と騙った。
自民党web3プロジェクトチーム(web3PT)座長として取り組んできたWeb3推進、ブロックチェーン技術の活用については「一番(の課題)は、税制だと思うが、税制は言える立場にないのでノーコメント」としたうえで、「例えばNFTは、コレクティブルアートみたいなもので一時ブームになり、今は下火だが、NFT自体は日本の潜在価値を最大化することに活用できる。日本の体験価値、伝統文化、コンテンツなどをグローバル価格に引き直すことに有効と思っている」とこれまでの考えを改めて強調した。
さらに「ゲーム業界も日本は強く、これからゲーム業界も本格的にWeb3分野、ブロックチェーン分野に入っていくと聞いている。ステーブルコインが出てくると、メタバース空間に新たな経済圏が生まれてくると思う。そういった意味で、日本はチャンスと思っている」と続けたが、「これは(デジタル庁の)所管なのか」と述べる一面もあり、Web3、ブロックチェーンの活用分野の広さと、それゆえの行政や規制の対応の難しさをのぞかせた。
暗号資産(仮想通貨)関連の税制改正についても「税制改正は金融庁マターなので、発言は控えるが、ブロックチェーン活用は日本の経済や金融にいろいろな影響を与えることは(政権内で)一閣僚として、デジタル大臣として発言していきたい」と述べた。
平大臣が代表を務める団体が、のちに粉飾決算で社長が逮捕された企業から献金を受けていたのと報道については、「破綻、粉飾決算とのニュースを見て、その時点で弁護士に相談した。寄付でいただいたものを返すとなると、寄付することになるが、政治団体の寄付はいろいろな制約があり、簡単ではない。今、改めて専門家に相談しているところだ」と説明した。
|文:増田隆幸
|写真:伊藤穰一氏が手書きしたボードを使いWeb3を説明する平氏(CoinDesk JAPAN)