金融庁は、認証技術を用いたアンホステッド・ウォレットを提供するサービスが暗号資産(仮想通貨)交換業(管理業)に該当しないとの見解を10月8日に公表した。この判断は、一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)が経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて確認したものとなる。
暗号資産用デジタルウォレットの一種であるアンホステッド・ウォレットは、秘密鍵をユーザー自身が管理する方式を採用している。「メタマスク」や「ファントム」などが代表的なユーザー管理型ウォレットとして知られる。中央管理者が介在しないこの仕組みは、ユーザーに資産の管理権を付与する一方で、秘密鍵を紛失した場合のリスクも利用者が負うことになる。
JCBIは、この判断を受けて、企業向けの生体認証ウォレット開発支援ASPサービス「PassWallet(パスウォレット)」の無償提供を開始した。PassWalletは、パスキーを使用した生体認証(顔、指紋)でウォレット作成と秘密鍵生成が可能な技術を提供する。
このサービスにより、ユーザーは秘密鍵を意識せずにウォレットを利用でき、事業者はカストディ規制に抵触することなくウォレット機能を自社サービスに組み込むことが可能となる。
今回の金融庁の判断は、次の流れで下された。JCBIはまず経済産業省に対してPassWalletサービスが資金決済法上のカストディ規制に該当するかどうかの照会を行った。経済産業省を介して金融庁が検討を行った結果、PassWalletサービスがカストディ規制に該当しないとの見解を示し、公表に至った。
|文:栃山直樹
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