- 国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、東南アジアにおけるサイバー詐欺に対抗するための一連の勧告を発表した。
- また、詐欺組織は新しい戦術を用いて多様化し、人工知能(AI)などの新技術も利用していると警告した。
国連薬物犯罪事務所(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)は、東南アジア諸国に対し、無免許でマネーサービス事業または暗号資産(仮想通貨)サービスプロバイダー(VASP)事業を運営することを刑事犯罪とするよう求めた。
UNODCは現地時間10月7日発表の報告書で、既に知られている複数の犯罪者と繋がりがあるVASPを含む、一部のVASPが詐欺組織やリスクの高いギャンブルサイトの取引を手助けしていると述べた。
同報告書によると、身元不明の1つの団体が「少なくとも数億ドル」の犯罪行為との取引に関与していた。その中には、大規模な麻薬密売、人身売買、サイバー犯罪、子どもの性的虐待表現物に関係または直接関与しているグループ、米国対外資産管理局(OFAC)の制裁対象団体、北朝鮮のラザルス・グループ(Lazarus Group)とつながりのあるウォレットが含まれていた。
「この真にグローバルな脅威の深刻さ、規模、そして影響を各国政府が認識し、この地域において急速に進化する犯罪エコシステムに対処する解決策を優先させることが重要がこれまで以上に重要になっている」と、UNODCの地域代表であるマスード・カリミプール(Masood Karimipour)氏は声明で述べた。
詐欺に先進的技術を活用
UNODCはまた、カジノ、ジャンケット(視察旅行)、サイバー詐欺、各種詐欺活動に関連するその他のビジネスへの組織犯罪の関与の監視を強化するとともに、オンラインギャンブルや、特に暗号資産などの高度な技術を使ったマネーロンダリング手法についての当局のトレーニングを強化することを推奨した。
同地域で行われる詐欺のすべてが暗号資産に関係しているわけではないが、暗号資産は詐欺組織の間で人気の決済方法となっている。その理由は「国境を越えた迅速な取引が容易に行えること、暗号資産の機能に関する誤った情報が広まっていて理解度が低いこと、そして場合によっては国境を越えた法執行機関の協力、捜査、事件の受理、資産回収がうまくいっていないこと」にあると同報告書は述べている。
質素なオフィスビルやカジノ複合施設から運営されるオンライン詐欺は、同地域で巨大産業に成長しているが、詐欺師や被害者は通常、他の地域から来ている。以前の国連の報告書では、カンボジアとミャンマーだけで約22万人が詐欺に関わっていると推定されており、なかには合法的な仕事と偽られて両国に誘われ、意に反して働いている者もいるという。
詐欺の中には「ピッグ・ブッチャリング(豚の屠殺)」と呼ばれるものがある。ロマンス詐欺の一種で、オンラインで何も知らない被害者と仲良くなり、詐欺プラットフォームに投資するようそそのかすものだ。
同報告書によると、詐欺師は、なりすまし詐欺、仕事やタスクに関する詐欺、資産回収詐欺、ターゲットを絞った承認フィッシング詐欺など、手口を多様化させている。また、AIやディープフェイクなどの新技術を利用する使用が増えていることも判明した。
|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Nils Huenerfuerst/Unsplash
|原文:UN Agency Recommends Criminalization of Unlicensed VASPs in Southeast Asia to Counter Cyber Fraud