流動性とオプション戦略、ビットコインETF市場の拡大を促進
  • ビットコインETFは総額189億ドル(約2兆8400億円、1ドル150円換算)の純流入を記録し、現在約86.9万BTCを保有。
  • ビットコインETFはビットコイン総取引量の約3%を占める。
  • ビットコインETFへの資金流入の一部は、投資家がスポット価格と先物価格の差額から利益を得ようとする「ベーシストレード」によるもの。

ビットコイン(BTC)ETF(上場投資信託)は2024年、膨大な量のメディアの注目を集めており、史上最も成功したETFのローンチとなったのは間違いない。

Farsideのデータによると、ビットコインETFは1月11日のローンチ以来、合計189億ドル(約2兆8400億円)の純流入を集めている。「グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」を除く9つの新しいETFは、64.6万BTCを保有。heyapolloのデータによると、GBTC自体はさらに22.3万BTCを保有。合計で、ビットコインETFは現在86.9万BTCを保有しており、これは流通するビットコイン供給量の約4%に相当する。

ビットコインETFは今年、いくつかの重要なマイルストーンを達成した。ブルームバーグ(Bloomberg)のシニアアナリスト、エリック・バルチュナス(Eric Balchunas)氏によると、最も注目すべきは、この10年で2000のETFがローンチされたことで、ブラックロックの「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」とフィデリティの「ワイズ・オリジン・ビットコイン・ファンド(FBTC)」が最大資産額のトップ10に入っている。

ETF取引量は市場のごく一部

しかし、ETF市場はビットコイン取引量全体のごく一部であることに変わりはない。

checkonchainのデータによると、直近の取引日である10月11日のビットコイン先物市場の取引高は534億ドル(約8兆円)、スポット市場の取引高は45億ドル(約6900億円)、ETFの取引高は20億ドル(約3000億円)だった。つまり、ETFの取引量は、その日のビットコイン市場全体の取引量の約3%に過ぎなかった。

ベーシストレードは資金流入全体の一部

ETFへの資金流入のうち、キャッシュ・アンド・キャリー取引としても知られる「ベーシストレード」に結びついた資金流入の正確な割合を知ることは難しい。この戦略は、投資家が原資産をロングすると同時に、通常プレミアムで取引される先物契約をショートするもの。この取引の目的は、スポット価格と先物価格の間のプレミアムを獲得することだ。先物契約の満期が近づくにつれ、その価格はスポット価格に収束し、アービトラージ(裁定取引)の機会がなくなり、投資家はスプレッドを獲得できるようになる。

投資家は同じ資産のロングとショートの両方のポジションを持っているため、これは市場中立的な取引だ。先物ポジションは、原資産であるETFのスポット価格の動きを相殺し、投資家は方向性のある市場リスクにさらされることなくアービトラージのプレミアムを固定できる。

IBITの最大保有者

Fintelのデータを使用して、「フォーム13F」で開示されているIBITの最大保有者を確認する。フォーム13Fでは、運用資産残高(AUM)が1億ドル(約150億ドル)を超える機関がETFの購入を報告する必要がある。

上位保有者を見ると、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)やジェーン・ストリート(Jane Street)などの主要保有者は、ETF株式の設定と償還に関与する公認参加者であることがわかる。さらに、ミレニアム・マネジメント(Millenium Management)やキャピュラ・マネジメント(Capula Management)などのヘッジファンドは、ETFをベーシストレードに利用している可能性が高いようだ。この戦略に参加していないと思われる唯一の大きな保有者は、ウィスコンシン州投資委員会だ。

IBITの最大保有者(Fintel)

今後何が期待できるか

投資会社のバーンスタイン(Bernstein)は以前、機関投資家によるベーシストレードを「採用に向けたトロイの木馬」と呼んだ。バーンスタインは、ETF市場の流動性が高まるにつれて、こうした取引がネットロングポジションにつながる可能性を示唆。市場全体に占めるETFの割合が大きくなれば、流動性と投資家の参加はさらに高まるだろう。

ETFにとってもう1つの触媒となり得るのは、IBITに結びついた物理的に決済されるオプションの承認だ。より洗練された投資家に好まれるこれらのオプションは、カバードコールなどの戦略を通じて受動的な利回りを得る機会を提供したり、マイナーがポジションをヘッジすることを可能にしたりする。ETFの導入が進むにつれて、これらの要素は市場でより大きな役割を果たすと予想されている。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:ビットコインの先物とスポットとETFの取引量(Checkonchain)
|原文:Liquidity and Options Pave the Way for Bitcoin ETF Market Expansion