1720億ドルのステーブルコイン市場が暗号資産価格を押し上げる理由とは?
  • ステーブルコインの時価総額が過去最高に近づいている。
  • アナリストのアリス・リウ氏によると、これは勢いが再び高まった時に投入される準備ができた多くの待機資金があることを意味する。
  • リウ氏はステーブルコインをバークシャー・ハサウェイの現金保有高になぞらえた。

投入の準備ができた巨額の現金準備金

暗号資産(仮想通貨)市場は、価格をすぐに急上昇させる可能性のある火薬庫の上に乗っている。

暗号資産データ企業CoinMarketCapの主任研究員であるアリス・リウ(Alice Liu)氏はCoinDeskに対し、暗号資産投資家は1720億ドル(約26兆円、1ドル150円換算)のステーブルコイン市場を、ビットコイン(BTC)が再び上昇し勢いが増した瞬間に暗号資産市場に投入される準備ができた巨額の現金準備金として見るべきだと述べた。

リウ氏は、「多くの人々が現金を手元に控えておきたがっている。暗号資産の投機に熱心な人も機関投資家もどちらもだ。これはウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏が現金を手元に置いて、いつでも買う準備をしているのと似ていると言っていい」と述べた。

億万長者のバフェット氏が運営する投資会社バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)は、第2四半期末時点で2770億ドル(約42兆円)近い現金保有高を報告した。これは第1四半期の1890億ドル(約28兆円)から46%増加している。

ステーブルコインが置かれた場所にも注目

イーサリアム(ETH)などの一部の暗号資産は2021年に記録した史上最高値を下回ったままだが、ステーブルコイン市場は以前の強さをほぼ取り戻しており、2022年春の1870億ドル(約28兆円)のピークと比較してわずか8%低いだけだ。

さらに印象的なのは、ステーブルコインがパブリックブロックチェーン上で決済される全価値の約50%を占めていることだ。ビットコインは25%にとどまる。

リウ氏は、その資本の一部は他の目的、例えば分散型金融(DeFi)プロトコルを通じて利回りを得るために使用されているが、利用可能な流動性の規模が非常に大きいため、暗号資産価格が再び上昇し始めれば、ステーブルコインがその火に油を注ぐ可能性が高いと述べた。

重要なのはステーブルコインの時価総額合計だけでなく、どこに置かれているかだ。例えば、暗号資産取引所で保有されているステーブルコインは、市場に迅速に投入しやすい。そして過去のデータでは、取引所のステーブルコインの増加が価格上昇の前兆となる傾向があることが示されている。データ分析会社CryptoQuantによると、取引所のステーブルコインは今年20%増加している。

リウ氏は、「これはおそらく強気相場の主な原動力の1つになるだろう」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Unsplash
|原文:Why the $172B Stablecoin Market Could Send Crypto Prices Higher