暗号資産VC市場、第3四半期の投資額20%減で「低迷」:ギャラクシーデジタル
  • 暗号資産(仮想通貨)関連のベンチャーキャピタルは2024年第3四半期に24億ドル(約3576億円、1ドル=149円換算)を投資したが、これは第3四半期に比べて20%の減少となった。
  • 業界に流れる資金としては2023年よりもわずかに多くなる見込みである。
  • 高い金利、スポットの暗号資産ETF(上場投資信託)、そして2022年の余波による影響が、投資家を業界から遠ざけている。

暗号資産関連のベンチャーキャピタルによる活動は2024年、特に第3四半期は静かだった。

暗号資産投資会社ギャラクシーデジタル(Galaxy Digital)が発行した最新のレポートによると、ベンチャーキャピタルはこの四半期に、478件の案件数で暗号資産関連のスタートアップに対して24億ドル(約3576億円)を投資した。これは、今年の第2四半期に比べて金額は20%の減少、件数で17%の減少となった。

今年の第1から第3四半期までの投資の合計が80億ドル(約1.2兆円)というのを受けて、2024年に業界へ流入した資金は、2023年実績をほとんど上回らない見込みとなっている。これらの数字は、2021年と2022年のものとはかけ離れており、当時は年間3000件の案件数で300億ドル(約4.5兆円)以上を業界は得ていた。

「暗号資産専門のベンチャーキャピタルや、より幅広な投資を行うベンチャーキャピタルに対する投資家の関心は、以前よりも低くなっている」と、ギャラクシーデジタルのリサーチ総責任者であるアレックス・ソーン(Alex Thorn)氏はCoinDeskに述べた。ソーン氏による言及は、ベンチャーキャピタル自身の資金調達元である機関投資家のことを指している。

要因は何か

関心が低い理由は何であろうか。金利が高いことによりベンチャーファンドの魅力が低下しており、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のスポット上場投資信託(ETF)が暗号資産へのエクスポージャーを得るための新しい手段を提供しているとソーン氏は述べた。そして言うまでもなく、2022年に起きた業界での様々な崩壊は、まだ人々の記憶に新しい。

「これにより、ベンチャー投資家は新しくファンドを立ち上げるための大規模な資金源を見つけるのに苦労しており、暗号資産関連ベンチャーの投資市場の逼迫につながっている」とソーン氏は述べた。

しかし、ETF主導の市場の急上昇は、「生き残った暗号資産ベンチャーキャピタルの間で案件フローをめぐる競争が激化し、企業価値算定に関しては起業家が主導権を握ることになる」と同氏は付け加えた。

「資金を調達できるなら、創業者になるには絶好の時期だ」と同氏は述べた。

資金の配分

資金の大部分は初期段階の企業、つまり製品やビジネスモデルをまだ開発中のスタートアップに流れた。これらの企業は資金の85%を受け取り、一方、一般的にすでによく知られた製品やブランドを有する後期段階にある企業は資本の15%しか受け取っていない。

(Source: Galaxy Digital)

2023年に暗号資産関連企業の評価額​​が急落した一方、2024年第2四半期には回復し、第3四半期には堅調に推移し、プレマネー評価額の中央値は2300万ドル(約34億円)、平均の案件規模は350万ドル(約5.2億円)となっている。

暗号資産エコシステムの一部のセクターについては、他のセクターよりも高い関心を集めた。暗号資産取引所、レンディング、投資および取引のプラットフォームは、ベンチャーキャピタルからの18%にあたる4億6000万ドル以上(約685億円)を調達した。次に多かったのはレイヤー1関連のプロジェクトで約4億4000万ドル(約655億円)、続いてWeb3やメタバース関連のプロジェクトが約3億6000万ドル(約536億円)、インフラ関連プロジェクトが3億4000万ドル(約506億円)だった。一方、仮想通貨と人工知能(AI)を組み合わせたプロジェクトは約2億7000万ドル(約402億円)で、前四半期の5倍に上るとギャラクシーは指摘した。

(Source: Galaxy Digital)

驚くことではないが、投資額では米国がトップで、全体の56%を供給し、全案件の44%を占めた。英国は金額では11%と大きく引き離されて2位、件数では6.8%で3位となった。シンガポール勢は全資本の7%、全案件の8.7%となった。

今回のレポートによると、暗号資産関連のベンチャーファンドによる資金調達は困難で、8つの新規ファンドで調達された金額はわずか1億4000万ドル(約208億円)だった。「年間ベースで見ると、2024年は2020年以来、暗号資産関連のベンチャーキャピタルによる資金調達が最も不作の年になりそうだ。新規ファンドはわずか39件、19億5000万ドル(約2900億円)の調達であり、熱狂的だった2021~2022年を大きく下回っている」と同レポートでは述べられている。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto VC Market ‘Tepid’ as Q3 Investments Declined 20%, Says Galaxy Digital