大手ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が10月16日に発表した年次レポート「State of Crypto」によると、暗号資産(仮想通貨)の利用は記録的な水準に達している。
レポートは、ブロックチェーン・アクティビティの劇的な増加を強調、2023年9月には最低1回はブロックチェーンにアクセスしたアドレスは2億2000万に達し、2023年後半の3倍になったと述べている。
ステーブルコインの拡大
成長の主な要因は、米ドルなどの法定通貨に連動したステーブルコインの普及拡大にあるという。
「ステーブルコインは、プロダクト・マーケット・フィットのまったく新しいレベルに達している」とa16zの最高技術責任者(CTO)エディ・ラザリン(Eddy Lazzarin)氏はCoinDeskに語った。
「ステーブルコインの発行、送金、利用は、あらゆるレベルで桁外れだ」
フェイスブックやAirbnbへの初期投資で知られるa16zは、暗号資産分野でも大きな影響力を持ち、大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)、DeFi(分散型金融)プロトコルのユニスワップ(Uniswap)、レイヤー1ブロックチェーンのソラナ(Solana)といった主要プラットフォームを支援している。
レポートでa16zは、米国および海外における暗号資産の長年にわたる規制の不明確さが投機的なミームコインの増加を招いたと警告している。
昨年、セレブたちが推奨するミームコインは、個人投資家の熱狂を取り戻す一因となったが、詐欺やラグプル(出口詐欺の一種)などが起こりやすいことを考えると、ミームコインが業界の評判に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念は絶えない。
「皮肉なことに、合法的でフェアなミームコインをリリースする方法は、合法的なネットワーク・トークンをリリースするよりも実際には明確だ」とラザリン氏は述べた。
「ネットワーク・トークンは、私が好んで使っている用語で、分散型ネットワークを表し、分散型ネットワークに不可欠なものだ」
大統領選の難しさ
a16zの共同創業者マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏とベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)氏は最近、米大統領線でドナルド・トランプ氏を支持すると表明、2人は、トランプ氏が「違法で非アメリカ的な暗号資産規制を終わらせる」と約束したことを支持の決定的な要因としてあげている。
しかし、バイデン大統領が選挙戦から撤退した後、ホロウィッツ氏はカマラ・ハリス氏の選挙キャンペーンに個人的に寄付を行った。政治情勢の複雑さとどちらの陣営を選択するかの難しさを認めている。
米国の規制の不透明性は、a16zのこれまでのレポートでも中心的テーマだったが、今年のレポートでは、政治的な議論における暗号資産の存在感が高まっていることが強調されている。特にペンシルベニア州やウィスコンシン州などのスイング・ステート(激戦州)で注目が高まっている。レポートは、米国における規制の明確化に向けた「党を超えた」前向きな進展を指摘している。
レイヤー2と新しいチェーンの台頭
a16zのレポートは、ブロックチェーン技術における重要な技術的進歩により、特にテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などのステーブルコインの取引コストが過去最低水準にまで低下したことを指摘している。
例えば、イーサリアムブロックチェーンのEIP-4844アップグレードは、コインベースのレイヤー2「Base」のような、より安価なレイヤー2ブロックチェーンの開発を促進したとラザリン氏は強調した。
「BaseでUSDCの送金にかかる費用は1セント未満、利用が増えているにもかかわらず、持続可能だ」と同氏はCoinDeskに語った。
さらに、スイ(Sui)やソラナのような「よりモダンなブロックチェーン」は、「ステーブルコインとして米ドルを国際的に送金するコストを99%削減した」と続けた。
例年通り、a16zは2024年のレポート用にさまざまなデータを可視化した「Crypto Index」を公開している。
「アクティブ・ディベロッパー」や「関心のあるディベロッパー」といった一部の主要指標は、この1年で低下しているが、暗号資産の進展をその重要度に応じて評価するa16zの総合的な「state of crypto index」は、史上最高値に近い数値となっている。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:コンセンサス2024でのa16z Cryptoのクリス・ディクソン氏。(Jesse Hamilton/CoinDesk)
|原文:Crypto Usage Setting Records Amid Regulatory Uncertainty, A16z Says in Report