ビットコインやイーサリアムのような暗号資産を組み入れた、バランスのとれたポートフォリオは、株式や債券などの資産だけで構成された伝統的なポートフォリオに比べて、優れたリターンと高いシャープ・レシオを実現する可能性があるとティモシー・バージェス(Timothy Burgess)氏は述べる。
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ここ数年、暗号資産(仮想通貨)は、ニッチな投資対象から、メインストリームのデジタル資産クラスへと進化し、分散化の目的でポートフォリオに組み入れられることが増えている。ポートフォリオのリスク調整後リターンを向上させたい投資家にとって、暗号資産をポートフォリオに組み入れることは魅力的な戦略となり得る。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような暗号資産を組み入れた、バランスのとれたポートフォリオは、株式や債券などの資産だけで構成された従来のポートフォリオに比べて、優れたリターンと高いシャープ・レシオを実現する可能性がある。
その理由はなぜか、そして、リスクとリターンの観点から暗号資産を組み入れることのメリットを明らかにする指標を見ていこう。
リターンの向上
暗号資産は爆発的な成長を見せ、リターンでは伝統的な資産クラスをはるかに上回っている。例えば、ビットコインは過去10年で年率230%のリターンを達成しているが、S&P500の年率リターンは約11%。もうひとつの主要暗号資産であるイーサリアムも、初期の段階で3桁の年率成長率を達成している。 暗号資産はボラティリティが大きいものの、特に市場が拡大している時期には投資家に大幅な高リターンをもたらし得る。
ポートフォリオに暗号資産を少額、例えば2〜10%組み入れることで、こうした利益の一部を獲得できる。過去のデータによると、暗号資産に少額でも投資しているポートフォリオは、全体的なパフォーマンスが向上している。
例えば、伝統的な60/40ポートフォリオ(株式60%、債券40%)は過去10年間で年率8%のリターンを達成しているが、5%をビットコインに配分したポートフォリオは、リスクを大幅に増加させることなく、年率約12%、あるいはそれ以上のリターンを達成している。
シャープ・レシオへのメリット
暗号資産はボラティリティが大きいことで知られているが、ポートフォリオに組み入れ、適切に管理すれば、リスク調整後リターンを改善できる。これを評価する重要な指標のひとつが、リスクあたりのリターンを測定するシャープ・レシオだ。シャープ・レシオが高いほど、ポートフォリオのリスク調整後リターンが良好であることを示す。
2015〜2023年のデータを分析すると、暗号資産に少額を配分したポートフォリオは、従来のポートフォリオに比べて、シャープ・レシオが0.5〜0.8ポイント改善している。例えば、伝統的なポートフォリオのシャープ・レシオは0.75だが、ビットコインを5%追加することで、1.2程度まで上昇し、リスク/リターンの最適なバランスを示している。シャープ・レシオの上昇は、暗号資産の価格変動が従来の資産クラスと低相関または逆相関なことが多いため、優れた分散効果が得られることによるものだ。
分散投資によるリスク軽減
暗号資産は、インフレや伝統的な金融市場の下落に対するヘッジ手段としても知られている。特にビットコインは供給量が限られているため、しばしば「デジタル・ゴールド」と呼ばれる。インフレ期や経済が不安定な時期には、ポートフォリオに暗号資産を加えることで、株式や債券といった伝統的資産の下落を相殺できる。
結論として、ポートフォリオに暗号資産を加えることで、リターンが大幅に向上し、シャープ・レシオの増加が証明しているように、リスク調整後リターンが改善する。暗号資産には本質的なボラティリティがあるものの、ポートフォリオに適切に配分することで投資家に戦略的な優位性をもたらすことができる。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:How a Small Crypto Investment Can Improve Your Portfolio