米上院議員のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)氏が、今後5年で10億ビットコイン(BTC)を購入することを財務省に指示する画期的な法案を提出したことで、ビットコインは準備資産として正当なポジションへと移行しつつある。米政府がビットコインを準備資産として検討する意思があるなら、企業も検討すべきことは当然だ。
企業は先取り
興味深いことに、企業はすでに時代を先取りしている。ビットコインの機関投資家とより広範への普及が進む現在のサイクルの中で、暗号資産ネイティブではない企業でも、さまざまな理由からビットコインを準備資産として保有することの戦略的価値を認識し始めている。
従来は暗号資産ネイティブ企業のみが、バランスシートにビットコインを計上していた。だが、この4年できわめて大きな構造的シフトが起きている。今では、上場、未上場を問わず多くの企業が、経済、地政学、規制などの要因からビットコインを受け入れている。
例えば現在、企業は全ビットコインの4%以上を保有しており、その価値は約500億ドル(7兆5000億円)にのぼる。パイオニアはマイクロストラテジー(MicroStrategy)で、2020年8月から130億ドル(1兆9500億円)相当のビットコインを買い集めている。
この変化には大きな理由がある。多くの企業が、特に米ドルに比べて信頼性の高い「価値の貯蔵手段」としての可能性を理由に準備資産としてのビットコインに注目している。
バランスシートをポジティブに
1913年に連邦準備制度が米国の財政をコントロールし始めて以来、ドルは大幅に切り下げられており、この傾向は新型コロナウイルス感染拡大によってさらに悪化した。現金、債券、現金同等物などの伝統的な準備資産は、インフレや絶え間なく発行されるドルに追随できずに価値が下落している。
マーケットでは、現金は価値が下落する資産と見なされ、バランスシート上の現金は従来、ゼロとみなされてきた。しかし、現金を価値が上昇するビットコインのような資産に置き換えることで、企業はバランスシートをよりポジティブに評価できる。この戦略的な動きは、すでに株価の大幅な上昇につながっており、マイクロストラテジーの成功がそれを示している。
ビットコインは、2100万という供給上限が設定されているため、金(ゴールド)とは異なり、長期的に希薄化することはない。これにより、ビットコインは強力な価値保存資産となり、特に長期的な価値の保存を求める企業にとっては魅力的だ。一方、金の年間希薄化率は、主要な株式指数と比べてパフォーマンスが低いため、魅力に欠ける。
リスクを認識
しかし、バランスシートにビットコインを加えることを検討している企業は、特定のリスクを認識しておく必要がある。ボラティリティは依然として大きな懸念事項だ。
ビットコインはまだ成長と普及の段階にあり、その価格は劇的に変動する可能性がある。このボラティリティにより、ビットコインは短期保有よりも、長期保有資産により適している。理想的には4年以上だ。企業は、財務諸表に影響を与える可能性がある大幅な価格変動にも備えておく必要がある。
こうしたリスクを管理するために、多くの企業は資産の一部のみをビットコインに割り当てるという慎重なアプローチを取っている。この戦略により、企業はビットコインの潜在的成長から利益を得ながら、そのボラティリティを限定することができる。
準備資産を分散化させることで、企業は潜在的なリターンと価格変動リスクのバランスを取ることができ、単一の資産に過度に依存しないようにすることができる。
経済的な魅力に加え、ビットコインは地政学上の不確実性に対する安全策としても捉えられている。世界各地での紛争や政治的不確実性によってインフレが深刻化する時代において、ビットコインのプログラム済みのインフレ率(約4年ごとの半減期)と中央銀行の政策からの独立性は、ユニークな金融安全性を提供している。流動性があるため、必要に応じて現金に容易に換金でき、多用途な準備資産としての魅力もある。
金融の自由へ
ビットコインの普及は、特定の企業に限ったものではない。暗号資産ネイティブではないさまざまな企業が今、多くの方法でビットコインを活用している。
ファミリーオフィスは、利回りの獲得、保有資産を使った借入、長期的な富の保全を目的として、ビットコインや他の暗号資産を財務戦略に組み込んでいる。
不動産開発業者をはじめとする中小企業は、ビジネスや不動産プロジェクトのための融資を確保するために、ビットコインを担保として使っている。NPOも、寄付を最大化し、ミッションを長期的に掲げていくために、ビットコインの利用を拡大している。
米国政府がビットコインを準備資産に追加することを検討しているなか、幅広い企業がすでにデジタル資産を財務戦略に組み込むために積極的に取り組んでいる。ビットコインが準備資産として受け入れられるにつれ、さまざまな業界で普及がさらに拡大し、金融の自由という新たな時代が到来する。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
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|原文:From Skepticism to Strategic Reserves: Corporate Treasuries Embrace Bitcoin