- 分散型予測市場のポリマーケット(Polymarket)は、多くのユーザーを集めてオーガニックな成長を遂げ、人気アプリケーションという点で、ポリゴン(Polygon)ブロックチェーンにとっては、きわめて大きな成功となっている。
- しかしデータを見ると、ポリマーケットは2024年、ポリゴンのPoSチェーンにわずか2万7000ドル(約410万円、1ドル152円換算)の手数料収入しかもたらしていない。
- ポリゴンラボ(Polygon Labs)CEO、マーク・ボイロン(Marc Boiron)氏は、収入がわずかなことは認めたが、これは同ブロックチェーンの使用がいかに安価であるかを示しており、セールスポイントだと主張する。ポリゴンの取引手数料は約0.007ドル(約1円)で、複数のライバルが目標としている1セント未満という水準を大幅に下回る。
- 同氏は、分散型取引所などのような取引高の多いアプリケーションに期待するような、大きな取引手数料収入をポリマーケットに期待していないと述べた。
初のオーガニックな大成功
レイヤー2ブロックチェーンのポリゴン(Polygon)にとって、今年の大きな成功はポリマーケット(Polymarket)だ。米大統領選挙からHBOドキュメンタリーの結末まで、あらゆるものに賭けることができる分散型予測市場で、今年、多くのユーザーを集めている。
ポリゴンのパフォーマンスを分析している暗号資産(仮想通貨)アナリストにとって不明瞭なことは、トークン保有者にとって、この出来事が救いとなるかどうかだ。今年、暗号資産ポリゴン(POL)は65%下落している。
ポリマーケットは、米大統領選にまつわる賭けで、一般ユーザーの間で人気が急上昇している。11月の選挙でどちらが勝つかには約24億ドル(3648億円、1ドル=152円換算)が賭けられている。また、先日のHBOのドキュメンタリー番組で、誰がビットコインの生みの親サトシ・ナカモトとして特定されるかという賭けも行われた。
ポリマーケットはポリゴンのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーン上に構築され、ポリゴンにとって、初の大きなオーガニックでの(=広告やプロモーションを行わずに達成した)成功となっている。ポリゴンは、スターバックスなどのパートナーに対価を支払ってネットワークを使用してもらうという過去のマーケティング戦略で知られている。
取引手数料はわずか
では、アプリケーションの使用が急増しているにもかかわらず、なぜポリゴンにわずかな手数料しかもたらさず、ネイティブ暗号資産ポリゴン(POL)の価格はほとんど上昇してないのだろうか。
トークンターミナル(Token Terminal)のデータによると、10月23日時点、ポリマーケットは今年、ポリゴンに取引手数料として約2万7000ドル(約410万円)しかもたらしていない。
この疑問に対する答えの一つとしては、手数料がマーケットに基づいていることがあげられる。ポリゴンPoSチェーンでの取引は非常に安価だ。
同日のポリゴンPoSチェーンの平均取引手数料は0.007ドル(約1円)だった。
ポリマーケットのユーザーが賭けを行うたびに、ポリゴンPoSチェーンでトランザクションが作成され、ユーザーはポリゴンPoSチェーンに取引手数料を支払う。
取引手数料は基本手数料と優先手数料に分けられ、基本手数料はバリデーターに支払われず、バーン(焼却)される。つまり、無効アドレスに送られ供給量を減らすことで、理論的にはトークン保有者にメリットをもたらす。
「基本手数料は調整可能で、ネットワークの混雑度が基準となっている」と、ポリゴンラボ(Polygon Labs)CEO、マーク・ボイロン(Marc Boiron)氏はCoinDeskに語った。
「そのため、ネットワークが混雑するほど、基本手数料は上昇する」
優先手数料はバリデーターに支払われる。
「バリデーターに支払うことで、ブロックに自分(の取引)を加えてほしいと依頼している」と同氏は補足した。
「支払う手数料が高ければ高いほど、混雑が激しい場合、バリデーターがブロックにあなた(の取引)を含めることが早くなる(=決済が早くなる)」
ブロックにスペースが十分にある場合(=混雑していない場合)、支払う必要性は低くなる。
もう1つの視点は、全体的に見るとポリマーケットで賭けを行うユーザーは非常にアクティブだが、取引高はDEX(分散型取引所)のようなアプリケーションに遠く及ばないことだ。
ポリゴンの調査チームによると、今月現時点までで、ポリゴンPoSチェーンのトランザクションの5.2%はポリマーケットからだった。10.38%はチェーンリンク(Chainlink)によるもので、ステーブルコインのテザー(USDT)の取引は4.89%を占めている。
直近のある1日のアクティビティを例にあげてみよう。
ポリゴンスキャン(PolygonScan)のデータによれば、10月23日、ポリマーケットはポリゴンPoSチェーンで使われる「ガス」の約8%を占め、単体のアプリケーションでは最大だった。「ガス」はブロックチェーン用語では、あるトランザクションに必要な計算負荷を表す。
「ポリマーケットに多くの手数料収入を期待していない。ユニスワップ(Uniswap)のような大規模なコンポーザビリティ(構成可能性)がないためだ。ある程度はあるが、多くない。集まっているのは、本当にユーザーだけ。取引を実行し、それで終わり。ユーザー数が大幅に増えない限り、本質的に(手数料収入は)それほど多くはならないだろう」とボイロン氏は語る。
注目(アテンション)が報酬
ポリゴンは長く、メインストリームとしてブレイクする瞬間を探し求めている。スターバックスやメタ(Meta)とのパートナーシップに何百万ドルも費やし、Web3のマスアダプションを試みてきたが、うまくいかなかった。
だがポリゴンは、ポリマーケットが大きな注目を集めていることに勇気づけられ、この注目がポリゴンの広範なエコシステムでの、より大きな数字につながることを期待している。
「ポリマーケットは2万ドルしかもたらしていないのに、なぜ我々がこれほど興味を持っているか? 理由は明らかに、まさに注目を集めているからだ」とボイロン氏。
この成功は、「ポリゴンPoSチェーンでは、ユーザーにブロックチェーンを使っていることをほとんど意識させずに、きわめて大きな成功を収めるアプリが開発できる」ことを示していると同氏は述べた。
プラス面を見れば、「取引手数料が2万ドルのみということは、率直に言って、ポリゴンPoSチェーンの使用がいかに安価であるかを反映している」。
ポリマーケットのオーガニックな急成長はポリゴンの成功に貢献した、なぜならエコシステムに注目を集めたからだ、と同氏は語った。
「アプリケーションはそれぞれ異なる役割を持っている。私にとって、ポリマーケットの役割はインクルード、つまり非常に安価な取引を提供して、取引を非常に簡単にすること。そして、注目を集めることこそが付加価値であり、ポリマーケットが私たちにもたらしているものだ」
「例えば、ポリゴンPoSチェーンにDEXを構築するようなこととはまったく異なる。もし彼らが数か月にわたって2万ドルの手数料をもたらさないとすれば、それは大失敗だ。つまり、ここで重要なことは、アプリケーションはそれぞれ意図する目的が違っているということだ」
|翻訳:T.Minamoto
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:PolygonScan
|原文:Polymarket Is Huge Success for Polygon Blockchain – Everywhere But the Bottom Line