トークン化は有望、だが中央集権的コントロールが必要か:米財務省借入諮問委員会

米財務省の債務(国債)管理を監督するウォール街のリーダーによる外部グループ、財務省借入諮問委員会(TBAC:Treasury Borrowing Advisory Committee)は、トークン化国債に関する見解を公表し、テザー(Tether)社について警告した。

  • 米財務省の債務(国債)管理を支えるウォール街のブレーンたちは、トークン化を詳しく調べ、多くの点で好意的な見解を示した。
  • 同委員会はまた、ステーブルコインも調査し、テザー社のUSDTのようなトークンは重大な取り付け騒ぎのリスクをもたらす可能性があると述べた。
  • さらに、トークン化においてステーブルコインは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に道を譲る必要があるかもしれないと示唆した。

米財務省借入諮問委員会は、米国債やその他の資産のトークン化には大きな可能性があると考えている。また、同グループは新たなレポートで、暗号資産業界をネガティブな影響をもたらす可能性がある中央集権的な管理が不可避と見ている。

同委員会が10月30日に発表したレポートは、暗号資産と米国債のトークン化を中心的に扱った。シティグループやゴールドマン・サックス・グループなどの大手金融機関から集まった幹部たちで構成される同委員会は、財務省の債務(国債)管理の指針となる役割が与えられており、トークン化とステーブルコインに関する見解を公表、そこにはTether(テザー)社がもたらすリスクについての警告も含まれていた。

「トークン化は、プログラミング可能で相互運用可能な台帳のメリットを、より広範なレガシー金融資産に解放する可能性がある」とレポートは述べ、特に「決済失敗のリスクを削減」するための即時かつ透明性の高い決済および清算の可能性を強調した。

「米国債市場のようなきわめて大きな市場では、わずかな改善であっても、大きな影響を与え得る」とレポートは指摘した。だが同時に注意が必要であり、「1つまたは複数の信頼できる民間あるいは公共機関によって管理される、民間が管理するパーミッションド(許可型)ブロックチェーンの開発」が必要となる可能性が高いと示唆した。

「今後の進展は、信頼できる中央当局が主導する慎重なアプローチであり、民間部門の参加者の幅広い支持を得るべき」と結論づけている。

また、レポートは、ステーブルコインの台頭についても調査。ステーブルコインは「短期米国債を担保としてますます保有するようになっており」、この状況は、おそらく今後の規制によってさらに促進されると見ている。また、テザー社のUSDTのようなトークンによる安定性リスクにも言及している。

「テザーのような大規模なステーブルコインが崩壊した場合、彼らが保有する米国債の『投げ売り』につながる可能性がある。歴史が指針となるのであれば、ステーブルコイン市場のストレスがより広範な金融市場や米国債市場に伝播することを防ぐために、狭義の銀行やMMF(マネー・マーケット・ファンド)と同様の規制が必要となるだろう」

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トークン化された取引を支えるステーブルコインに関しては、アドバイザーたちは「中央銀行デジタル通貨(CBDC)が、デジタル通貨の主要形態としてステーブルコインに取って代わる必要があるだろう」と示唆した。

FRB(米連邦準備制度理事会)が発行する可能性のあるCBDCは、民間銀行によって管理されるとFRB関係者は述べている。民間銀行とは、諮問委員会のメンバーが所属するような金融機関だ。しかし、共和党議員が強く反対している米国のCBDCの政治的な可能性は、短期的には依然として不透明だ。

全般的に、レポートに記される伝統的金融業界の声は、あらゆるRWA(現実資産)市場におけるトークン化は「新たな経済的仕組みを生み出す可能性がある」と見ている。だが、短期国債のトークン化は、銀行預金と競合する可能性があるため、「銀行システムを混乱させる可能性がある」と同委員会は指摘している。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Jesse Hamilton/CoinDesk
|原文:U.S. Treasury Advisory Panel Says Tokenization Could Be Big, But May Need Central Control