正直に言うと、新しいトークンの立ち上げに関しては、状況はかなり厳しい。今年、同類の悲しいストーリーが何度も繰り返されるのを見てきた。各プロジェクトは、基本的な有用性が限られているか全くないトークンを宣伝し、少数を高値で一般に配布し、その後、市場価格がゼロに向かって暴落するのをただ見ているだけだ。
多くの者が、こうした問題のあるパターンの原因を「規制の不確実性」に求め、ミームコインだけが米証券取引委員会(SEC)の敵意に耐えることができ、暗号資産(仮想通貨)の創業者が連邦証券法に違反することなく、エキサイティングなプロジェクト、およびそのプロジェクトに必要または支えとなる可能性のあるトークンを立ち上げる方法はないと主張している。
しかし、我々は同意しない。
我々は、新しくトークンをローンチする際に、規制遵守の戦略を策定し、SECの精査に備える方法について創業者と話し合うことに多くの時間を費やしている。弁護士が、ハウィーテストを深く掘り下げて、1970年代のアパートに関する裁判所の意見がトークンが証券ではないことを意味する理由を説明したり、理解するために図表が必要な複雑な企業構造を考案したりして、こうした問題に対処すると思うだろうか。
焦点となるのは何か。もっと重要なことだ。良い行動で、人々が望むツールを構築することだ。
創業者に対しては、法律の詳細から一歩離れて、2つの質問に答えることから始めることをお勧めする。トークンをどのように役立つものにするか、そしてどのように公平なものにするかだ。
トークンを役立つものにする
トークンが役立つとはどういう意味か。最も直感的には、人々が投資以外の理由でトークンを保持したいかどうかだ。
たとえば、一部のトークンは、野球のチケットとなり、試合へのアクセスが許可されるのと同様に、ブロックチェーンをベースとしたプロダクトまたはサービスへのアクセスを許可する。他のトークンは、ガバナンストークンのように人々の意思決定を調整したり、ベースレイヤー・インフラストラクチャー・トークンのように人間による行動を奨励したりする。また、他のトークンは、データやその他の価値あるもの(ただし投資ではない)など、システムへの貢献を記録する。
暗号資産(仮想通貨)には多くの便利なトークンがあるが、その原型はオリジナルのビットコイン(BTC)だ。ビットコインは、世界中のピア・ツー・ピアでの決済を可能にする分散型マネーとして役立つ。また、ビットコイン・ブロックチェーンに分散型セキュリティを提供している。
資産としてのビットコインがなければ、ネットワークとしてのビットコイン・ブロックチェーンは存在できない。ビットコインのユーティリティは、ビットコイン・プロトコルに直接プログラミングされており、マイニングという形で人々が価値ある作業に貢献するよう奨励している。
同様に、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)トークンは特に有用なことが証明されている。DePINプロジェクトは、パブリック・ブロックチェーンを使用して、データストレージやワイヤレス接続などのリソースを提供するハードウェア・オペレーターの分散型ネットワークを形成する。
DePINプロジェクトの成功は、世界中のオペレーターにネットワークへの参加を促すことにかかっており、トークンはその目標を達成するのに特に適している。従来の決済手段(低速、高コスト、オフチェーン、地理的制限)とは異なり、トークンを使用すると、オペレーターは世界中のどこにいても、効率的かつ効果的にオンチェーンに参加できる。
トークンを公平なものに
暗号資産の主な目標は、誰にとっても安全でアクセスしやすく、公平、透明なシステムを構築することだ。しかし、多くのトークンは「流通量が少なく、完全希薄化時価総額(FDV)が高い」というメカニズムや、内部関係者が一般の人々よりも不公平な優位性を持つなどの問題によって価値が損なわれてきた。個人投資家を内部関係者や機関投資家よりも不利に扱うことほど、新しいトークンの勢いを鈍らせるものはないだろう。
トークンが公平であるとはどういう意味だろうか。 最良の尺度となるのは「フロント・ページ・テスト」だ。つまり、プロジェクトが大成功し、舞台裏のすべてが大新聞の一面を飾ったとしたら、それを誇りに思えるだろうか。そうでない場合は、改善すべき点がある。
新しいトークンの最大の落とし穴の1つは、「分散化の演技」だ。つまり、トークン開発者が誰でも参加できるパーミッションレス、あるいはコミュニティ・ガバナンス型のプロジェクトを構築しているふりをして、実際には秘密裏にプロジェクトのコントロールを維持することだ。そして、不釣り合いな量のトークンを内部関係者(投資家だけでなく)に与えてしまう。
「分散化の演技」に関与することは、トークン保有者にとって不公平で、所有する資産の性質について誤解を与える可能性があるだけでなく、規制当局や裁判で詐欺と判断される可能性もある。プロジェクトのあらゆる側面について、誠実であることが最も重要だ。達成し得る最も重要な規制上の進展の1つは、プロジェクトとその関連トークンについての開示の業界標準であり、私たちはプロジェクトがコミュニティに対して徹底的に透明性を保つ方法を考えることを推奨している。
この業界における「事業を行うコスト」とは、規制当局が成功したプロジェクトに注目し、遅かれ早かれ質問してくることだ。創業者は、誠意を持って事業を構築し、正しいことを行うために懸命に努力することで、創業初日から来るべき会話に備えるべきだ。公平性と透明性に焦点を当てることは簡単ではないだろう。だが、長期的にはきわめて大きな成果をもたらす。
こうした考え方は、技術的および実用的な観点から業界全体に利益をもたらすだろう。しかし、これは業界が考える「規制コンプライアンス」を実現する鍵ではない。グローバルに包括的な規制が整うまでは、創業者は法律に違反しないよう弁護士を雇う必要があり、それを早い段階ほど望ましい。優秀な弁護士はトークン設計プロセスにおける優れた相談相手となり、将来、さらに時間と費用が必要となるようなミスを回避する手助けをしてくれる。
しかし、トークンを有用かつ公正なものにする観点からスタートすることは、業界が長期的な成功を収めることにつながる。
|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Making Crypto Tokens Useful and Fair