Progmat、NTTデータ、SBI R3 Japanが連携、デジタルアセット発行・管理基盤をSaaS化──ST事業への参入ハードル下げ、市場拡大を狙う

Progmat(プログマ)は11月1日、NTTデータ、SBI R3 Japanと連携して、デジタルアセット発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」のSaaS版「Progmat SaaS」をリリースし、同時に「導入支援サービス」を提供すると発表した。

「Progmat SaaS」の導入によって、金融機関はブロックチェーンまわりのシステム開発やサーバー構築を必要とせずに、セキュリティ・トークン(ST、デジタル証券)などのデジタルアセット関連事業を開始できるという。また顧客(投資家)の秘密鍵管理等も第三者のカストディ事業者に委託することなく自社で完結できるとしている。

つまり、金融機関にとってはST事業への参入ハードルが下がる。また、不動産会社などにとってはST発行の、投資家にとってはST投資の選択肢が広がり、結果的に一層の市場拡大・商品バリエーションの充実が期待できるという。

システム開発・運用コストを低減

リリースによると、国内ではすでに2700億円規模のST案件が組成され、案件取扱数、利用する仲介者(証券会社)数などでProgmatは国内トップの実績を誇っているという。だが従来、金融機関がST事業を展開するには、自社サーバー、ブロックチェーン・ノード、ST関連システムの構築・開発が必要となった。

「Progmat SaaS」では、PrgmatがST事業に必要なソフトウェアをインターネット経由で提供、金融機関は自社でサーバーやシステムなどを保有することなく、ST事業を展開できるようになる。「SaaS」は「Software as a Service:ソフトウェア・アズ・ア・サービス」の略で、クラウドサービスの一種だ。

[Progmat Inc. 代表取締役 Founder and CEO 齊藤達哉氏のnoteより]

SaaS、あるいはクラウドサービスの利用は一般消費者や企業の間でもはや当たり前のものとなっている。金融機関は従来、顧客資産を預かり、厳重に管理・運用するための基幹システムを自社で構築・運用し、サーバーも自社で保有してきた。厳重なセキュリティ・停電対策など、堅牢かつ安全性の高いシステムの構築には多大なコストが必要だった。また、時代やニーズの変化に応じた更新には、さらに莫大な手間とコストを要した。

特に地方銀行などでは、そうした基幹システムの開発・更新・運用コストを下げるとともに、サービス提供の柔軟性を高める目的で基幹システムの共同利用、さらにはクラウドサービスの導入が検討されている。

地場証券の参入、地方不動産のST化も可能に

STに関してProgmatが定期的に公開している資料によると、例えば、現在ST案件を取り扱っている仲介者(証券会社)は、大手数社に限られている。国内には250社を超える証券会社があり、大手・準大手の他にも中堅証券、あるいは地場証券と呼ばれる証券会社が存在する。もちろんネット系の証券会社も存在感を増している。

ST、特に不動産STは、優良な不動産物件がなければ話にならない。大手のみならず、中堅あるいは地場証券がST事業に参入すれば、日本各地に存在する優良案件をST化することが可能になる。

また従来、投資家にとっては、遠方の物件に投資することには心理的ハードルもあったが、ST化は、そうしたハードルを下げることも期待できる。

先日の自民党総裁選、そして衆院選では、デジタル技術を活用した地方創生・地方活性化が公約のひとつに上げられていたが、大きな視点から見れば、今回の取り組みは、そうしたトレンドを後押しするものとも言える。

三菱UFJ信託銀行が2025年2月に導入予定

「Progmat SaaS」の提供にあたって、その基盤(クラウド運用など)は、前述した銀行のクラウドサービスなど、数多くの共同化システム構築実績を持つNTTデータと連携。金融サービスに求められる高い品質・安全性・柔軟性を確保する。

またブロックチェーンには、SBI R3 Japanと連携し、アジアで初めて最新の「Corda5」を採用している。Corda5は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のようなミッションクリティカルなシステムに対応できる能力を備えているという。

「Progmat SaaS」は、金融機関が現在使っている既存システムとのAPI連携から、「Progmat SaaS」が提供するUIでの利用まで、利用者の状況に合わせた導入が可能。さらに導入から既存システムとの連携までを「導入支援サービス」として提供していく。

現在、パッケージ版を利用している三菱UFJ信託銀行は、2025年2月に「Progmat SaaS」への移行を予定している。

|文:CoinDesk JAPAN編集部
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