米時間6日早朝、ドナルド・トランプ氏は大統領選で2回目の勝利を果たし、驚くべき政治的復活を遂げた。同氏の勝利は暗号資産(仮想通貨)の勝利でもあった。
業界はトランプ氏の立候補を支持し、その選挙キャンペーンや多数の下院選に数百万ドルを寄付した。アナリストはその結果として、暗号資産のイノベーションと規制に対して、より寛容な環境が生まれると予想している。
今回の選挙により、共和党は合衆国政府を完全に掌握した。ホワイトハウスは共和党が確保し、上院は共和党が過半数を占め、下院も共和党が過半数を維持する可能性が高い(ただし、確実ではない)。バイデン政権、特にSEC(証券取引委員会)による暗号資産への反対姿勢と4年間戦い続けてきた暗号資産業界は、今回の結果に有頂天になっている。
米CoinDeskのアナリストや業界関係者に、新しい政治情勢が規制、資産、主要プロジェクトにどのような影響を与え得るかを聞いた。
ビットコインは10万ドル超へ
ビットコイン(BTC)はすでに選挙の恩恵を受けており、投票終了直後に価格は史上最高値を更新した。米CoinDeskのシニア・アナリスト、ジェームズ・ヴァン・ストラテン(James Van Straten)は、さらに上昇すると予想している。
「ビットコインは消費者物価指数(CPI)で調整した価格である7万7000ドルを下回っており、まだ比較的割安です」とヴァン・ストラテンは述べた。
「ビットコインのGoogle検索トラフィックもこの1年の最低水準に近付いており、市場に熱狂や強欲が蔓延しているわけではないことを示している。1年で最も強気な時期である第4四半期(10-12月期)」に入ったが、11月14日の13-F(SECへの提出書類)提出期限までまだ2週間あるため、どの機関投資家がビットコインETFを購入したのかはわからない。さらに、マイクロストラテジー(MicroStrategy)はビットコイン購入のための、資本市場過去最大のアット・ザ・マーケット(ATM)エクイティ・オファリング(随時株式売出)を発表しており、他の機関投資家がFOMO(機会を逃すことへの恐怖:Fear of Missing Out)による買いに向かう可能性もある」
ただし、注意点もある。
「トランプ氏が中国への関税を提案すれば、消費者物価は上昇し、債券利回りは現在のように上昇し、金利は高止まりするだろう。金利引き上げが再び検討される可能性さえある」とヴァン・ストラテンは警告する。
「こうしたことは、リスク・オン資産に悪影響を及ぼす可能性がある」、そして、ビットコインはそのカテゴリーに属している。
テザー(USDT)には朗報、USDコイン(USDC)にはそうでもない
トランプ氏の勝利は、時価総額最大のステーブルコインであるテザー(USDT)を発行するテザー社にとっても勝利だ。同社と債券取引大手キャンターフィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)の関係を考慮すると、そう言える。同社は、テザー社のために1000億ドルを超える米国債を運用しており、同社CEOのハワード・ルトニック(Howard Lutnick)氏は大統領選キャンペーン中、トランプ氏を熱心に支援し、次期大統領移行チームの共同議長でもある。
テザー社は、制裁措置やマネーロンダリング防止規則違反の疑いで捜査されていると繰り返し報じられている。「トランプ氏の当選は、必ずしも捜査がなくなることを意味するわけではないが、バイデン政権下ほど熱心に捜査が続けられることはないだろう」と米CoinDeskのマーケットレポーター、トム・カレラス(Tom Carreras)は述べた。
「テザー(USDT)は成長を続け、ステーブルコイン分野でのリードを固める余地があるだろう」
時価総額1200億ドルにのぼるUSDTは、一番のライバル、米サークル(Circle)社のUSDコイン(USDC)の3倍以上の規模を誇る。
「トランプ氏の勝利は、テザー社にとって可能性は無限であることを意味する。その結果、サークル社が追いつくことはさらに難しくなるかもしれない」
だが、サークルにとって悪いニュースばかりではないとカレラスは続けた。同社は「株式公開に向けて、より現実的な道筋を手に入れた可能性が高い」。
ソラナ(SOL)には朗報、イーサリアム(ETH)にはそうでもない
暗号資産で3番目の時価総額を誇るソラナ(SOL)も、恩恵を受けるだろう。
「SECは指導者の交代を控えており、ゲーリー・ゲンスラー氏のように暗号資産に敵対的な人物が新委員長に就任するとは考えにくい」とカレラスは述べた。その結果として、「金融各社がソラナの現物ETFを申請する可能性は高く、ソラナの不透明な規制状況が解消される可能性も十分にある。そうなれば、金融機関がソラナ・ネットワークとより大きな規模でやりとりできるようになる」。
SECがより寛容になることは「イーサリアムが、米国上場の現物ETFを持つ、あるいは、コモディティとしての地位に関する規制上の確実性を持つ、唯一のスマート・コントラクト・プラットフォームであり続ける可能性は低い」ことを意味するとカレラスは続けた。
「つまり、競争の場は平準化される可能性が高く、イーサリアムとソラナの競争はさらに激化すると予想できる」
広範な市場への影響
今年現時点まで、暗号資産価格の上昇は主にビットコインとわずかな人気トークンによるものだった。CoinDesk 20 Indexの20銘柄のうち、11月1日時点でプラスになっていたのは6銘柄だけだった(ビットコイン・キャッシュ、レンダートークン、ニア、ビットコイン、イーサリアム、ソラナ)。
選挙が終わり、CoinDesk Indicesのマネージングディレクターであるアンディ・ベア(Andy Baehr)は、幅広い上昇を予想している。
「昨年の今頃は、ビットコインETFへの期待が市場とセンチメントを押し上げ、ビットコインが主導していた」とベア氏。
「今年は、より幅広い暗号資産の普及につながる、より優れた規制フレームワークへの期待が高まっている。高速なレイヤー1およびレイヤー2ブロックチェーン、そしてDeFi(分散型金融)は、市場が成長機会を促進する、より優れた市場構造を理解するなかで利益を得ることが期待される」
ユニスワップを筆頭にDeFiにメリット
DeFi(分散型金融)トークンの価格は、今サイクルでは比較的落ち着いている。しかし、それはすぐに変わる可能性がある。
「トランプ氏は選挙キャンペーンで、米国を暗号資産の主要ハブにすると公約しており、DeFiにとってより有利な規制につながる可能性がある」と、米CoinDeskのデータおよびトークン担当副編集長シャウリャ・マルワ(Shaurya Malwa)は述べた。
「同氏のキャンペーンは、暗号資産に対する規制負担を軽減する方向性を示しており、DeFiプラットフォームが米国で運営しやすくなる可能性がある。これは、トークン・オファリングに関するより明確なガイドラインを意味し、SEC監督下で特定のトークンを証券ではなくコモディティとして認める可能性もある」
「トレーダーはすでにトランプ氏の大統領就任を好意的に受け止めている」とマルワは指摘。
「ユニスワップ(UNI)は24時間で15%上昇し、同プロトコルの開発者が米国で証券を販売したとしてSECが提訴したことに関する懸念は沈静化している」
グッバイ、ゲンスラー委員長?
トランプ氏は勝利宣言で「私はシンプルなモットーで政権を運営する。約束をしたら、約束を守る」と述べた。もしそうであれば、暗号資産は数々の激変となる可能性がある。WU Blockchainは、以下のように指摘している。
SEC委員長はほとんどの場合、新大統領が選出された後に退任する。暗号資産企業に対する強硬姿勢で業界から不評を買っているゲーリー・ゲンスラーSEC委員長は、CoinDeskのジェシー・ハミルトン(Jesse Hamilton)の記事によると、後任者の任命には時間がかかるものの、年内には退任する見通しという。だがゲンスラー委員長の5年任期は2026年1月5日までであり、すぐに退任すると決まったわけではない。
「ドナルド・トランプ大統領の2期目が決まったとしても、それが直ちにゲンスラー氏の任期の終了を意味するわけではない」とハミルトン。
「もしゲンスラー氏が抵抗する決意を固めた場合、委員長としての任期を最後まで貫くことで、新大統領が任命を行い、上院が承認するまでの間、SECにおける民主党優位を維持することができる」
5月には、終身刑で服役中の闇サイト(ダークウェブ)シルクロード(Silk Road)の創設者ロス・ウルブリヒト(Ross Ulbricht)の刑期を短縮すると述べた。1月には「デジタルドル(または米国の中央銀行デジタル通貨)」に反対する意向を表明している。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
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|原文:How Trump Could Change Crypto