韓国の中央銀行にあたる韓国銀行はまたしても、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の採用というアイディアに水を差した。同銀行職員がそのような趣旨の発言を行った。
2019年10月30日付のCoinDesk韓国の報道と、ソウルで10月29日に開かれた決済に関するカンファレンスでの覚書によれば、韓国銀行の金融決済ディレクター、ホン・キュンシク(Hong Kyung-sik)氏は、韓国では、他の大半の先進諸国同様、CBDCの必要性はほとんどない、と主張した。
韓国銀行のウェブサイトに発表された覚書によればホン氏は、「韓国にはすでに、進んだ支払い・決済インフラが存在しています。さらに、開放性の度合いも国際的に見て高いです」と述べた。
アプリベースのソリューションを活用した国においては、銀行送金によってお金は素早く、安く、安全に移動することができ、支払いはクレジットカードによって効率的に決済することが可能である、とホン氏は付け加えた。APIが金融機関間のシームレスな接続を可能にする、オープンバンキングも韓国では開発されている。
「主要国でCBDC発行が実現する可能性はいまだに小さいです」とホン氏は指摘した。
それでもホン氏は、独占を防ぎ、関連インフラのレジリエンスを維持するためにスカンジナビアで構築されているシステムのように、少数の特定の目標を達成するためならば、先進国でもCBDCに意義はあるかもしれない、と認めた。
一方で、インフラの整っていない発展途上国では、インクルージョン(金融包摂)の改善や、現金の取り扱いに関わるコスト削減のためにCBDCが役に立つかもしれない、とホン氏は述べた。中国にとって中央銀行デジタル通貨は、金融政策を支え、人民元の国際化の促進に役立つ可能性もある、とホン氏は付け加えた。
韓国銀行はブロックチェーン関連技術の検討を続け、国際的なCBDC開発を監視し続けていくとホン氏は述べたが、新しいソリューションの採用には慎重を期していく、とも付け加えた。
「韓国銀行は支払いと決済においてイノベーションを促進、支援していくべきです。効率性と安全性のバランスを達成するためにあらゆる努力を尽くすべきです」と、ホン氏は締めくくった。
韓国銀行は長年にわたって、CBDCに懐疑的な態度をとっており、過去にはその開発に懸念を示したこともある。2019年2月に同行が発表したレポートには、CBDCが商業銀行を締め出し、その資金を枯渇させ、銀行システムを不安定化させる可能性があると示唆されていた。
翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真:Bank of Korea image via Shutterstock
原文:Developed Countries Have Little Need for CBDCs, Says Bank of Korea Official