ビットコインがデジタルゴールドになるには「真のユースケース」が必要:ICEトップ

ビットコインは「デジタルゴールド」になる可能性があるが、まずは日常のビジネスにもっと利用される必要がある。インターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange:ICE)のCEOはそう語った。

スターバックスでのビットコイン決済

ICEのジェフリー・スプレッチャー(Jeffrey Sprecher)CEOは2019年10月31日(現地時間)の四半期決算報告において、取引に利用されることがビットコインが長期的な価値の保管手段となる前提条件と考えていると述べた。

ビットコイン先物市場を運営するICEの子会社バックト(Bakkt)は先日、商品購入用の消費者向けアプリを開発中と発表した。まずはスターバックス(Starbukcs)が対象となる。

バックトの従業員の多くは、すでにビットコインをデジタルゴールドと考えているとスプレッチャー氏は述べた(そして、現在のビットコインコミュニティーの大半の人たちも同様であることは注目に値する)。だがスプレッチャー氏にとっては時期尚早だ。

「私は年齢を重ねているので、ある時点では通貨であったために、ゴールドは価値の保管手段になったということに考えがおよぶ」とスプレッチャー氏は述べた。

「金貨が流通していて、時間とともに(中略)価値の保管手段となった。現在、危機の際には我々は皆、ゴールドを支払い手段として受け入れている」

ビットコインも同様の道をたどるかもしれないとスプレッチャー氏は述べた。

「真のユースケースがない限り、業界全体が有意義なものとなり、成長していくとは思わない。(中略)ユースケースとは、支払いを通じた価値のデジタルな移動を実現することと考えている」

そしてビットコインに批判的な人たちとは異なり、スプレッチャー氏はそれは現実的なことと考えている。

「ビットコインを法定通貨と交換し、その法定通貨をモノやサービスの購入に使うのではなく、おそらく業者やユーザーはビットコインを直接受け入れることになる」とスプレッチャー氏。

ビットコインで直接取引きすれば、法定通貨との交換に関わる為替コストを回避することができる。バックトはそのような取引を促進するデジタルプラットフォームを構築することで、そうした市場に応えようとしている。

ニューヨーク証券取引所の親会社でもあるICEは、バックトの支払いインフラに取り組む約50人の人員を抱えている。消費者向けアプリのローンチは2020年はじめを目指している。

ビットコイン先物オプション

スプレッチャー氏はまた、バックトが12月にローンチを予定しているビットコイン先物のオプション契約を推進する理由を詳細に語った。

金融機関はまだ、この業界への参入に慎重で、その多くはまずは規制当局がどのように仮想通貨にアプローチするかを見極めようとしていると同氏は述べた。

バックトはこの問題に、ビットコイン・エコシステムの中に、より規制を受けた環境を提供することによって取り組もうとしている。

「グローバルな個人顧客は、自らを取引所と呼ぶ未認可のプラットフォームで初期の利用者となることに理由は何であれ、非常に満足していた。しかし、実際には規制当局による特別な監督はなかった」とスプレッチャー氏は述べた。

「バックトとともに開発しているものは、すべてをより透明性のある規制を満たすものにし、我々の専門知識を投入できるチャンスになる考えている」

バックトは2019年9月、その主力商品であるビットコイン先物をローンチした。規制当局の承認とプラットフォーム構築に1年以上を費やした。当初、ビットコイン先物契約の取引量は少なかったが、取引量は最近、増加してきている。

「ビットコイン先物契約をローンチした方法が現物引き渡し型であったため、我々が価格発見のソースとなっただけのこと」とスプレッチャー氏は述べた。

「我々は、未規制の現金取引市場の価格に依存していない」と市場を独占するスポット取引所に言及しながらスプレッチャー氏は述べた。

「我々は独自の決済価格を開発しているため、オプション市場に非常に適している。そこでオプション取引を行い、原資産でヘッジする人々は、透明性があると分かっているプラットフォームで完璧にヘッジできる」

「これがオプション取引を素早くローンチすることへのプレッシャーになっている」とスプレッチャー氏は語った。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Jeffrey Sprecher image via CoinDesk archives
原文:Bitcoin Needs ‘Real Use Cases’ to Become Digital Gold, Says ICE Chief