暗号資産ヘッジファンド、トランプ相場で成功を収めた方法
  • ドナルド・トランプ氏が大統領選で圧勝した。
  • 世論調査が接戦を示していたが、暗号資産ヘッジファンド「Lekker Capital」はトランプ氏の勝利に賭けた。
  • 創業者のクイン・トンプソン氏が、世論調査とは異なる見解に至った経緯をCoinDeskに語った。

前大統領で、次期大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏の圧勝は、多くの人に驚きをもって迎えられた。だが、クイン・トンプソン(Quinn Thompson)氏は別だ。暗号資産ヘッジファンド「Lekker Capital」の創業者である同氏は、少なくとも3月中旬以降、トランプ氏に対する強気姿勢を公にしており、市場が揺れ動く中でもそのスタンスを崩さなかった。

そして投票日に向けて、ファンドのポジションを調整し、ソラナ(SOL)とAI関連のビットコイン・マイニング企業に投資した。多数の世論調査が「接戦」や「ハリス副大統領がリード」と報じる中での決断だった。

その結果、今回の取引はファンドが6カ月前に立ち上げられて以来、最も成功した取引となったとトンプソン氏はCoindeskに語った。具体的な数字は控えたが、ソラナSOLは当記事執筆時点、24時間で13%急騰し、数年来の高値に迫っていた。コア・サイエンティフィック(Core Scientific)、ハット8(Hut 8)、ハイブ(HIVE)といったAI関連のビットコイン・マイニング企業は6日、約10%上昇し、ビットコインも8.7%上昇して史上最高値の7万5600ドルを記録した。

「政治は意見が分かれる話題であり、初対面の相手とは話しにくいのと同様に、投資家にとっても公然と立場を示すのは難しい」とトンプソン氏は語り、「マクロ経済に焦点を当てたヘッジファンドに投資する魅力はここにある」と付け加えた。

「人々がマクロ主導の戦略に投資するのは、コンセンサスを必要としないからだ」

また、同氏は投資家向けの6日のメールで「マクロで正しいことで報酬を得るためには、長い間、世の中の流れに逆らい、ときには一般的な意見に強く反する考え方に確信を持つ必要がある」と述べた。

一夜で状況が変わった

トランプ氏は選挙人投票と一般投票の両方で勝利し、さらに共和党が上院・下院とも過半数を占める可能性が高まっている。つまり、共和党が大統領職と議会全体を制する形が整った。トンプソン氏にとっては「社会的にはリベラルで、財政的には保守的な政府」の誕生を意味する。こうした政府は、バイデン政権と1期目のトランプ政権で暗号資産業界に課された障害を取り除き、業界には追い風となる。

トランプ氏は暗号資産政策を転換し、米国を暗号資産のリーダーにすると述べている。

「暗号資産の歴史にとって、最も記念すべき1日。過去4年間、世界で最も強力な組織、つまり米国政府から強く反対され、その結果、多くの政治的議題の標的とされてきた」とトンプソン氏。

「即座に中立的なものに変わっただけでなく、一夜にして我々は支持を受け、受け入れられる側に転じた。この政権は業界とその潜在力を理解しており、それを十分に活かそうとしている。一夜で起きたこのポジティブな波及効果をすぐに価格に織り込むことは不可能だ」

その秘策とは?

トンプソン氏がトランプ氏に賭けた理由はいくつかある。

その1つは、有権者の関心事項だ。今回、有権者が最も重視したのは経済、移民、外交であり、2020年に重要視されていたパンデミック対策や人種的不平等とは対照的だった。ハリス氏は、ウクライナや中東での戦争、バイデン政権初期のインフレ、 不法移民政策などで不利な立場に置かれた。

また、バイデン氏が7月に撤退した後に出馬したハリス氏には支持があまり集まらず、民主党は投票率の低下が予想される一方で、共和党は候補者に対して楽観的だろうとトンプソン氏は予測していた。

とはいえ、すべてが完璧に進んだわけではない。トンプソン氏は、10月末の価格後退局面で一部の取引で利益確定に失敗したと述べた。当時、ブロックチェーン・ベースの予測市場ポリマーケット(Polymarket)でトランプ氏の勝率が65%から55%に下落した後、ビットコインも7万2000ドルから6万7000ドルまで下落した。

「最後の外れ値的で、誤った世論調査が人々に再考を促し、大きな不安と不確実性をもたらした」とトンプソン氏は振り返った。

|翻訳:Ryohei Umeta
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:How This Crypto Hedge Fund Nailed the Trump Trade