クラーケンとテザーが支援する蘭企業、MiCA準拠のユーロと米ドルのステーブルコイン公表

ステーブルコインの普及が進む中、オランダを拠点とするフィンテック企業クアントズ(Quantoz)は、欧州市場でのシェア獲得を目指している。

同社は18日、イーサリアムブロックチェーン上で、ユーロペッグのEURQと米ドルペッグのUSDQという規制に準拠したステーブルコインを発行すると発表した。これらのトークンは法定通貨準備金と国債などの高流動性金融商品によって完全に裏付けられるという。

オランダでライセンスを取得

クアントズは、オランダ中央銀行から電子マネー機関(EMI)ライセンスを取得した。これは欧州連合(EU)内でステーブルコイン発行主体が事業を行うのに必要な要件だ。同社はベンチャーキャピタルのファブリック・ベンチャーズ(Fabric Ventures)、暗号資産(仮想通貨)取引所のクラーケン(Kraken)、ステーブルコイン大手のテザー(Tether)からの投資を確保したが、資金調達ラウンドの規模は明らかにしていない。

EURQとUSDQは、まずビットフィネックス(Bitfinex)とクラーケンに上場し、21日から適格ユーザーによる取引が可能となる。

法定通貨にペッグされたトークンであるステーブルコインは、暗号資産業界の中で1800億ドル(約27兆9000億円)規模の資産クラスに成長し、デジタル資産市場の重要なインフラとなっている。取引所で暗号資産売買を行う際の流動性として機能しており、伝統的な銀行のルートと比べてブロックチェーン上での決済が安価かつ迅速であることから日常的な支払いや送金でも人気が高まっている。

クアントズの発表は、EU域内の暗号資産企業が危機的状況にある時期に行われた。この後、EUで営業するための全域規則である暗号資産市場(MiCA)規則が今年末までに発効される見通しだ。MiCAはステーブルコイン発行主体に準拠を求めており、従わない場合は消費者4億5000万人の市場から撤退を余儀なくされる可能性がある。取引所などの規制を受ける組織が未承認のトークンを上場廃止するためだ。時価総額360億ドル(約5兆5800億円)のUSDコイン(USDC)を発行するサークル(Circle)社は域内で営業する要件を満たしたと表明している。一方、テザー(Tether)社は新規制を声高に批判しており、必要なライセンス取得はまだだ。

欧州で機会を狙う

クアントズの決済特化子会社クアントズ・ペイメンツ(Quantoz Payments)のアーノウド・スター・ブスマン(Arnoud Star Busmann)CEOはCoinDeskとのインタビューで、「ここ欧州のステーブルコイン市場には隙間があり、それを機会だと捉えている」とし、「当社の技術と規制準拠により、当社はその隙間を埋めるのに良い立場にあると確信している。特にクラーケンやテザーのような強力なパートナーを得た今はなおさらだ」と述べた。

ブスマン氏は、ステーブルコインは伝統的な銀行インフラが不十分な分野、例えば高取引量・低価値のトランザクション(取引)で影響力を持つ可能性があると指摘。「マネーマーケットファンドへの資金の出し入れが、従来のT+1(取引日に加えて1日)やT+2(取引日に加えて2日)の伝統的な遅延なしに行えることを想像してほしい」と述べた。

クアントズは、トークン化事業も展開している。これは債券などの伝統的な金融商品のデジタル版を作成する、暗号資産業界で注目を集めているトレンドだ。トークン化された資産とステーブルコインを組み合わせることで、1〜2日の遅延は発生せずほぼ瞬時に決済できるため、企業や機関が資金をより効率的に管理する方法を提供できるとブスマン氏は説明した。

同氏は、「日常的な支払いからより複雑な金融取引まで、幅広いユースケースをサポートできるエコシステムを構築している」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Flickr
|原文:Kraken, Tether-Backed Dutch Firm Rolls Out MiCA-Compliant Euro, U.S. Dollar Stablecoins