暗号資産(仮想通貨)取引所Zaifを運営するクシム(Kushim)は11月25日、取締役の田原弘貴氏に対する辞任勧告を決議し、併せて社内調査委員会を設置したことを発表した。未公表の重要事実の漏洩が判明したほか、子会社Zaifへの中国本土からのビットコイン(BTC)持ち込みに関する提案があったことも明らかになった。
同日、同社は「本日付当社公表資料に関する当社見解について」と題して事案の詳細な経緯と見解を公表。発表によると、田原氏は2024年11月上旬、東証スタンダード市場上場企業の代表取締役社長(A氏)との意見交換会の場で、取締役会の承諾なく未公表の重要事実に言及。A氏の発言から、それ以前にも田原氏から重要事実が共有されていたことが判明した。
中国本土からビットコインを
さらにA氏は、直接・間接的にクシム株式を保有していることを明かした上で、Zaifに対して中国本土からビットコインを持ち込む提案を行った。同社は、この提案が暗号資産交換業者が遵守すべきFATF(金融活動作業部会)の基準に違反し、マネーロンダリングのリスクを伴うものと指摘。国家の経済安全保障上の問題にもつながる可能性があると懸念を示している。
外部弁護士による事前調査では、2024年7月から10月にかけて、田原氏が複数の顧客および株主に対し、取締役会等を通じて入手した重要事実を含む会社情報を漏洩していた形跡が確認された。また、情報受領者がその情報に基づいて株式売買を行っている疑いも浮上しているという。
クシムは本件について、金融商品取引法で禁止されているインサイダー取引規制違反につながる可能性があると指摘。取締役としての善管注意義務および忠実義務違反にあたるとして、田原氏を除く全取締役の一致で辞任勧告を決議した。
田原氏はXで反論
これに対し田原氏は26日、Xの投稿で「事実について重大な誤りがある」と反論。インサイダー取引や乗っ取りの疑惑は「株主提案を握りつぶすための、事実に反する言いがかり」と主張し、近日中に詳細な事実経緯と正式なコメントを表明する意向を示した。
田原氏はWeb3分野のコンサルティングを行う子会社チューリンガム(Turingum)の創業者でもあり、「会社・事業を成長させることを一番に考えており、コミットし続けていることは今も昔も変わりません」とした上で、今回の株主提案もクシムの事業成長のために最善と考えて行ったものだと説明している。
|文:栃山直樹
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