- ビットコインの上昇は、11月22日以降、いくつかの理由により失速している。その理由には、記録的な価格に対する需要の減退が含まれる。
- 豪ドルと円のペアは下落に転じ、12月の日銀の利上げ観測を背景に、広範囲にわたるリスク回避の兆候を示している。
- 今年7月下旬から8月上旬にかけて、同様の状況が円相場で発生し、暗号資産を含む世界市場を揺るがした。
ビットコイン(BTC)の強気な勢いは、アメリカでの需要の低迷など、いくつかの理由により今週つまずいた。今、オーストラリアドルと日本円の為替レート(AUD/JPYペア)は、古典的なリスク指標として再び下落に転じ、リスク資産の強気派に警戒を促している。
コモディティ通貨(天然資源や一次産品の輸出に依存している国の通貨)である豪ドルは、世界経済の健全性の代理指標であり、特に新興市場や中国にとってそうだ。一方、日本円は、投資家がストレスを感じた時に頼る安全通貨と見なされている。そのため、AUD/JPYの下落はリスク回避のシグナルと見なされる。
シティ・インデックス(City Index)のアナリスト、マット・シンプソン(Matt Simpson)氏は、次のように分析している。「AUD/JPYは典型的なリスクのバロメーターであるため、現在の水準の周辺では、すべてが順調であるわけではないことに注意すべきだ。AUD/JPYが急落すれば、リスク資産全般がそれに続く可能性が高い」。
暗号資産(仮想通貨)の強気派は、特に10万ドルに迫る勢いで上昇しているBTCを背景に、FXのドラマを取るに足らない出来事として片付けるかもしれないが、歴史はそうではないことを示唆している。
7月下旬と8月上旬のことを覚えているだろうか。日本銀行がまもなく金利を引き上げるのではないかという噂から円高が始まり、月末には実際に金利が引き上げられた。7月にはAUD/JPYが8%以上下落して98円台となり、8月第1週にはリスク回避の波が押し寄せる兆しを見せた。
円高により、安価な円建てローンで調達した資金でリスク資産に投機的に投資していたトレーダーたちがポジションを清算したため、BTCはおよそ7万ドルから5万ドルに下落した。AUD/JPYは最終的に90円で底を打ち、他のリスク資産とともに反発した。
そして現在、AUD/JPYはトレンドラインを下回り、8月初旬の安値90円からの回復を続けている。この下落は、来月の日銀の利上げの可能性についての憶測が高まる中、円高傾向が再び強まっていることを示している。
さらに追い打ちをかけるように、市場では、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が来月さらに25ベーシスポイントの利下げを行う可能性を再考しており、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領がインフレを引き起こすと思われるメキシコ、カナダ、中国への関税を課す計画を立てていることから、貿易戦争の懸念が再び浮上している。
「日銀が12月に再び金利を引き上げるのではないかという期待が高まっている。これは、FRBが12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で金利を据え置くのではないかという見方が優勢である中でのことだ」と、INGは今週顧客向けのメモで述べ、日銀が12月に金利を引き上げるだろうと付け加えた。
「11月21日、日銀の植田和男総裁はさらなる引き締め策の可能性を残し、『各会合で決定する』と述べ、12月の利上げ観測を煽った」とINGは説明した。
BTCの強気派は、円高を主因とするリスク回避のシナリオ第2弾に目を光らせるべきだろう。このシナリオが実現すれば、価格は9万ドルを大きく下回る可能性がある。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Bitcoin Bulls Lose Steam, Aussie-Yen Dips, Hinting at Broad-Based Risk Aversion Ahead