マイクロストラテジー株 vs ビットコイン──株価下落は投資チャンスか

米大統領選後、ビットコイン価格は上昇し、日本時間5日、ついに10万ドルを超えた。一方、マイクロストラテジーの株価も500ドル以上に上昇したが、最近では空売りへの懸念から大幅に下落。ビットコイン保有とマイクロストラテジー株保有の間に可能性があるのかを改めて考える契機になったとグレン・ローゼンバーグ氏は述べた。

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米大統領選後、誰もが知っているようにビットコイン価格は上昇、ついに10万ドル超えの史上最高値を記録した。そこで興味深い疑問が浮かぶ。同時期、マイケル・セイラー氏率いるマイクロストラテジー(MicroStrategy)に何が起こったのだろう?

マイクロストラテジー株は、ビットコイン価格と同様に、予想通り、選挙後に最高値を更新し、500ドルを超えた。

だが先週、同社のバリュエーション(企業価値評価)に関する懸念を示したレポートを受けた空売り懸念から22%近く下落した。そこで私は、これはチャンスの可能性があるのか、あるいは少なくともマイクロストラテジー株とビットコインの価格を比較してみたいと考えた。

[オレンジ:マイクロストラテジーの株価とビットコイン価格の推移(倍率)]

このグラフはやや誤解を招きやすい。マイクロストラテジー株がビットコインに対して、非常にレバレッジの効いた上昇となっている。きわめて高いレバレッジだ。

同社は約220億ドルで、38万6700ビットコインを取得しており、バランスシート(貸借対照表)の99.5%を占めている。取得のために同社は90億ドルを調達しており、一部は無利子。仮に保有するビットコインがこの負債の担保となっているなら、ビットコイン価格が大幅に下落した場合には返済が困難になる可能性がある。また、ビットコイン購入のために46億ドルの株式を発行している。ビットコインの平均取得価格は約5万6500ドルであり、価格は同社の時価総額に大きく影響する。

マイクロストラテジー株とビットコインの相関関係は比較的高く、12カ月間の終値データを使用した場合、約65%となる。レバレッジを排除すると、相関関係はほぼ直線的になる。つまり、ビットコイン価格にマイクロストラテジー株は追随する。

相関関係は強いものの、複数の理由により、きわめて強いとは言えない。マイクロストラテジー株は、年間約5億ドルの収益を生み出す非常に収益性の高いビジネスインテリジェンス(BI)事業を運営している。同社はBI分野における最大手企業の1社だ。BI事業はリアルビジネスであり、株価はそのビジネスにも依存している。だがビットコインのレバレッジが鍵であり、ビットコインに対して2.5倍のボラティリティとなっている。

[ビットコインの日次リターンに対するマイクロストラテジー株の日次リターン分布]

おそらく、マイクロストラテジー株はビットコインの代替手段として適切ではなく、レバレッジやボラティリティを許容できない限り、適切な投資チャンスとは言えない。ビットコインETFを買うだけで良い。ビットコインの無期限先物やビットコインETFを活用すれば、マイクロストラテジー株と同様のリスクプロファイルを得ることができる。だが、レバレッジを求めるのであれば、マイケル・セイラー氏にリスクを負わせ、投資家としては価格リスクだけを負う方が良いだろう。だがそれは代替策とは言えない。

相関関係とマイクロストラテジーのビットコインへの過剰なエクスポージャーを考慮すると、取引のチャンスはあるだろうか?

平均回帰を見てみよう。先週の大幅な下落前のマイクロストラテジー株の劇的な上昇により、zスコアはほぼ4標準偏差(4σ)に達した。しかし、グラフを見ると、これまでに平均回帰の機会は多くなかった。その大きな要因は、最近ポジションを増やすためにレバレッジが使われていることにある。そのため、2つの資産の関係は以前とは大きく異なっている。

[マイクロストラテジー株とビットコインの価格比率とそのZスコア]

マイクロストラテジーはさらに最大1300万株を売却することができ、偏差はさらに拡大する可能性がある。つまり、マイクロストラテジー株はビットコインに対してきわめて過大評価されており、今後、その差はさらに縮小する可能性がある。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:CoinDesk
|原文:MSTR vs. BTC