ミームコインの時価総額が1400億ドル(21兆円)超え、暗号資産エコノミーの中で大きな存在感
  • ドージコイン(DOGE)や柴犬コイン(SHIB)のような「ミームコイン」は、CEX.IOの調査報告書によると、広範な暗号資産(仮想通貨)エコノミーの中でシェアを拡大している。
  • ミームコインの取引高は2024年1月1日から12月1日までの間に979%増加し、暗号資産市場の取引高の5.27%を占めている。
  • 政治的なミームコインは米大統領選挙以降、人気を失っている。

ミームコインは、誰もがファンとまでは行かなくても、暗号資産関係者の大きな注目を集めていることは間違いない。データは、暗号資産エコノミーにおいても、そのシェアが拡大していることを示している。

ドージコインや柴犬コインなどに代表されるミームコインは、暗号資産取引所CEX.IOの新しいレポートによると、12月1日時点で、暗号資産の時価総額の3.16%を占め、年初の1.3%から増加している。巨大銘柄のビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を除くと、そのシェアは4.2%から11.21%に跳ね上がる。

これは大きな金額だ。ユーティリティをほぼ持たない暗号資産が1400億ドル(約21兆円、1ドル150円換算)以上(CoinGeckoのデータ)の市場価値を持っている。本質的にきわめてボラティリティの大きなミームコインは、動物やインターネット上で広がったジョーク、政治的な人物や出来事にちなんで名付けられる傾向がある。

ビットコインが初めて10万ドルの壁を突破したように、ミームコインも急騰している。ドージコインは、トランプ氏の当選が暗号資産市場を後押しするなかで、168%も急騰。CoinDeskのデータによると、ドージコインは現在、時価総額640億ドル、第7位の暗号資産となっている。

問題は、これが最近の強気相場の初期段階におけるただの値動きなのか、それとも過熱の前兆なのかだ。

「過去のサイクルでは通常、ミームコインは半減期後の強気相場の終盤に、最大の資本ローテーションを経験することが多かった」とCEX.IOのプロダクト管理担当バイスプレジデントのアレクサンダー・ケルヤ(Alexandr Kerya)氏は、CoinDeskにメールで述べた。

半減期とは、ビットコインのマイニング報酬が50%削減されるイベントを言う。4年に1度起こり(直近では2024年初頭)、暗号資産市場の上昇としばしば相関関係がある。

「しかし、今回のサイクルは、半減期よりもかなり前に起きたミームコインの影響力の大幅な上昇と、ビットコインの今年中盤の調整期間にも持続したことで際立っている」とケルヤ氏は続けた。

代表的なミームコインであるドージコインは、2013年にジョークとして作られ、2021年に終わった強気相場において、テスラCEOのイーロン・マスク氏が繰り返しSNSに投稿したことで大きな注目を集めた。柴犬コインなど、同じように犬をモチーフにしたミームコインは、ドージコインの人気にあやかるうちに時価総額が数十億ドルに達した。時が経つにつれてミームコインは、独自の暗号資産投資カテゴリーとして考えられるようになり、DeFi(分散型金融)トークン、AI(人工知能)トークン、プライバシーコインなどと同じ位置づけとなった。

「ミームコインはいずれ、DeFiトークンと同様に頭打ちになる可能性はあるが、市場はまだ均衡がどこに確立されるかを決定するプロセスにある」(ケルヤ氏)

市場シェアを奪う

さらにレポートの内容を見てみよう。ミームコインは今年初め、爆発的な成長を遂げた。Pump.fun(ユーザーが簡単にミームコインを発行できるソラナベースの暗号資産プロジェクト)で発行されたミームコインは、2月の1日あたり数十件から3月には数千件に増加した。現在では、1日に6万枚以上のミームコインが誕生しており、その半数はPump.funで作成されている。

1月1日から12月1日までに、ミームコインの時価総額は330%増加。ちなみに、ビットコインは140%上昇、イーサリアムは71%上昇している。ミームコインの取引高は同期間に979%増加し、現在では暗号市場の取引高の5.27%を占めている。さらに、暗号資産エコノミーの他の分野が低下傾向にあるなか、ミームコインは6月、高い取引高を維持した。

「新規投資家の入口として、ミームコインの成長は、暗号資産市場における個人投資家が作り出すストーリーの影響力が拡大していることを示している。感情に基づく投資として、市場の楽観主義と半減期後の上昇の継続を予想していることを反映している」とケルヤ氏は書いている。

「しかし、ミームコインのシェアが拡大するにつれ、投機的なバブルがより早く出現する可能性も浮き彫りにしている。これは強気相場の激しさを増幅させる可能性があるが、その期間を短くする可能性もある」

ミームコイン分野は変化を続けている。2021年、ドージコインと柴犬コインが取引高と時価総額で圧倒的なシェアを占めていた。それに対し、2024年にはドッグウィフハット(dogwifhat:WIF)、ブレット(Brett:BRETT)、ピーナッツ・ザ・スクイレル(Peanut the Squirrel:PNUT)、ポップキャット(Popcat:POPCAT)など、さまざまな新しいミームコインが時価総額トップ100にランクインした(またはそれに迫った)。

また、3月までは多くのミームコインは「犬」をモチーフにしたものだったが、その後は「猫」や「AI」をモチーフにしたミームコインが犬からシェアを奪っている。政治をテーマにしたミームコインも11月の米大統領選までは好調だったが、その後、取引高は80%減少した。

[カテゴリー別のミームコインのパフォーマンス:CEX.IO]

取引が行われるチェーンも変化している。ドージコインは独自のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)ブロックチェーンを持っている。ビットコインブロックチェーンを模倣したものだ。また、ペペ(pepe:PEPE)やMAGA(TRUMP)といったイーサリアムブロックチェーンベースのミームコインも人気を集めている。しかし、Pump.funにより、2024年のミームコインブームの大きな勝者はソラナ(Solana)ブロックチェーンとなった。ソラナは、この分野の取引高の30%、時価総額の15%を占めている。

一方、テレグラム(Telegram)のTONブロックチェーンのミームコインの取引高は、この6カ月で750倍に増加した。ただし時価総額は、ミームコイン全体のまだ1%しか占めていない。

「ミームコインが個人投資家の関与とDeFiプラットフォームの収益創出を後押しする能力を考慮すると、2025年にはこのトレンドを活用するために、ローンチパッド(発行プラットフォーム)と分散型取引所のより強固なインテグレーションが起こる可能性がある」とケルや氏。

「しかし、ソラナのようなエコシステムでは、ミームコインへの過度な依存が懸念材料となっており、最終的には逆効果となり、広範な発展に悪影響を及ぼす可能性がある」

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:柴犬(Shutterstock)
|原文:Memecoins Reach $140B Market Cap and Gain Ground in Crypto Economy