ステーブルコインの時価総額、約30兆円の大台を突破──普及加速により来年は倍増の可能性も
  • CCDataとDefiLlamaによると、ステーブルコインの時価総額は史上初めて2000億ドル(約30兆円、1ドル=152円換算)の大台を超えた。
  • 暗号資産(仮想通貨)取引に資金が流入し、決済のような実用的な用途のための利用も増加したことが上昇の原動力となり、利回りを生み出すさまざまな新しい商品も成長を後押しした。
  • ステーブルコインは来年、米国議会が法案を可決することが重要なきっかけとなり、市場規模が2倍の4000億ドルに拡大する可能性があると、資産運用会社のビットワイズ(Bitwise)は予測している。

急成長するステーブルコイン市場は12月11日に新たな節目を迎えた。需要が加速し、普及が拡大するに伴って、時価総額が史上初めて2000億ドルを超えたのだ。

CCDataとDefiLlamaによると、資産クラス全体としては、2022年の強気サイクル時の記録を超えて1900億ドルを突破して以来、わずか2週間で100億ドルの時価総額を加えた。

ステーブルコインは、主に米ドルにペッグされ、安定した価格を維持するように設計された暗号資産。取引所での暗号資産取引やブロックチェーン上での価値移動のための流動性の主要供給源となり、デジタル資産分野で重要なインフラのひとつとなっている。

暗号資産市場が厳しい弱気相場から脱却したここ1年、ステーブルコインの需要は着実に伸びた。先月のトランプ氏の米大統領選勝利後、成長はさらに著しく加速し、投資家が熱狂的に暗号資産に資金を投入したため、300億ドルの供給が追加された。

DefiLlamaのデータによると、最も人気のステーブルコイン、テザー(Tether)社のUSDTは、1カ月で12%増加し、1390億ドルの最高供給高を記録した。

USDTは今週、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)で受け入れられる暗号資産として承認され、テザー社は中東地域全体にサービスを拡大することを目指している。

ステーブルコインで2番目に時価総額の大きいサークル(Circle)社のUSDコイン(USDC)も、同期間に9%成長し、時価総額は約410億ドルとなった。サークル社はつい先日、USDCの世界的な普及を推進するために、取引高で世界最大の暗号資産取引所バイナンス(Binance)と提携した。

しかし、成長を牽引するのは、活況を呈する暗号資産市場だけではない。

特に、自国通貨の価値が急速に下落し、金融システムが脆弱な発展途上国では、決済、送金、貯蓄のためのステーブルコインの利用が増加していることを示すデータがある。

ベンチャーキャピタル会社フィンテック・ファンド(Fintech Fund)のパートナーであるニック・ミラノヴィック(Nik Milanovic)氏は、Xの投稿で、暗号資産界隈以外でのユースケースにおけるステーブルコイン普及のひとつの兆候として、ピアツーピアの決済プラットフォームを含む送金アプリケーションにおけるステーブルコインの取引数が急速に増加していることを指摘している。

投資家に利回りを提供する安定した価格のトークン化商品も流行している。エセナ(Ethena)のドル連動型トークン「USDe」は、ビットコインとイーサリアムの無期限先物をショートし、ファンディングレートの差から利回りを得るもので、DefiLlamaのデータによると、1カ月で90%増の50億ドル超まで急成長した。新進気鋭の分散型金融(DeFi)プロトコルであるUsualのステーブルコインの時価総額も7億ドルまで急上昇し、同期間に倍増した。

ステーブルコインの時価総額(DefiLlama)

市場規模は2025年に倍増の可能性

このような成長は来年にかけても続く可能性が高い。デジタル資産運用会社のビットワイズは、ステーブルコイン市場は2025年に4000億ドルに達すると予測している。

12月10日発表の同社レポートによると、重要な起爆剤のひとつとなる可能性があるのは、企業や金融機関がトークンを発行し、利用するためのルールを定義することになる、待望のステーブルコイン法案を米国議会が通過させることだ。

「大きな疑問に対する明確な答え、例えば、誰が規制するのか?適切な準備資産要件は何か?といったものが、発行者、消費者、企業の間で大規模な新しい関心を呼び起こすだろう」と、ビットワイズのアナリストは指摘。

「そうなれば、J.P.モルガンなどの伝統的な大手銀行がこの分野に参入してくるだろう」

その他の成長促進要因としては、ペイパル(Paypal)のステーブルコイン「PYUSD」の例に倣い、人気のフィンテックアプリケーションがステーブルコインをサービスに統合することや、世界的な決済や送金におけるステーブルコインの役割の増大が挙げられる、と同レポートは付け加えた。

ステーブルコインに対して強気の予測を発表したのはビットワイズだけではない。スタンダード・チャータード(Standard Chartered)とゾディア・マーケッツ(Zodia Markets)は先月のレポートで、ステーブルコインは米国の通貨供給と外国為替取引において、現在の1%から、10%に相当する規模に達する可能性があると予測した。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:ステーブルコインの時価総額合計(CCData)
|原文:Stablecoin Market Cap Hits $200B Milestone, Could Double in 2025 as Adoption Accelerates