自民党政調審議会で19日、「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」が正式に承認されたと、自民党デジタル社会推進本部 web3主査の塩崎彰久議員がXに投稿した。
同議員は18日、「web3ワーキンググループ」の始動とともに、緊急提言案を「近日中に公表予定」と投稿していた。
緊急提言は冒頭で、これまでの自民党web3プロジェクトチーム(web3PT)の取り組みを振り返り、合同会社型DAO設立・運営のための環境整備、LPS(投資事業有限責任組合)によるトークン投資の実現、ステーブルコイン仲介業の創設などを成果としてあげた。そして、「これら一連の改革を主導してきたのは、まぎれもなく自由民主党である」と記している。
緊急提言では触れられていないが、自社発行、他社発行と2年連続で実現した期末時価評価課税の見直しも、web3PTの大きな成果と言えるだろう。
「国民経済に資する資産」
さらに、今回の緊急提言で印象的な部分は、成果の振り返りに続いた以下の文章だ。
「2024年10月末時点において、暗号資産口座の開設数は1,100万口座を超え、利用者預託金は2.9兆円に達している。2005年にFX取引が旧金融先物取引法(2007年に金融商品取引法へ統合)の対象とされた当時の状況(2007年当時約80万口座)と比べても、多くの国民が暗号資産を投資対象として取引していることが伺える。
こうした流れを更に推進し、暗号資産を国民経済に資する資産とするためには、現時点において以下の施策を推進する事が必要である」
自民党が、暗号資産を「国民経済に資する資産」と明確に打ち出したことはきわめて大きい。申告分離課税の議論では、しばしば「暗号資産は国民の資産形成に資するものとはいえない」などと言われるが、そうした主張を真っ向から打ち破るものだ。
緊急提言は、さらに具体的な施策として、以下の3つをあげている。
1.暗号資産取引による損益を申告分離課税の対象へ
2.暗号資産に関する規制の枠組み等について
3.国民経済に資する資産となるためのサイバーセキュリティへの取り組み
「1.暗号資産取引による損益を申告分離課税の対象へ」については、2023年、2024年のweb3ホワイトペーパーにすでに「ただちに対処すべき論点」として盛り込まれていたが、暗号資産を「国民経済に資する資産」と位置づけたうえで、第1の取り組みにあげている。
米国政府はビットコイン、イーサリアムを「米国民の資産形成に資する資産」と認め、それぞれ現物ETFの上場を認可している。暗号資産、少なくともビットコインとイーサリアムは、資産として大きな存在感を獲得していることは間違いない。
「2.暗号資産に関する規制の枠組み等について」については、現在、金融庁で、現行の資金決済法での規制から金融商品取引法(金商法)での規制とすることが検討されている。金商法での規制となれば、ETFの実現、申告分離課税の問題はクリアになる。1.と2.は表裏一体の課題だ。
イノベーションを阻害しない規制の枠組みを
ただし、Web3ビジネスすべてが金商法での規制となれば、その要求は現状よりもハードルが上がり、対応できない事業者も出てくる。この点は、これまでweb3PTの座長を務めた平将明デジタル大臣や、ビットバンクの代表取締役社長CEOで、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)理事、JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)会長の廣末紀之氏もCoinDesk JAPANのインタビューで指摘している。
もちろん緊急提言も「web3ビジネスが金融事業のみならず多様な非金融事業をも含むことから、イノベーションを阻害することのないよう、多様な意見を尊重しつつ、最適な規制法の枠組みはどうあるべきかについて検討を進めるべきである」と記している。
事情に詳しい関係者によると、規制の見直しは、2025年春頃には金融庁から方向性が示される見通しだ。2025年に新たな規制の枠組みが決まり、併せて申告分離課税の問題もクリアになる可能性は高まる。
2024年、米国のビットコインETF承認、トランプ氏の大統領選勝利で暗号資産 / Web3は特に年末に向けて盛り上がりを見せた。2025年はステージがもう一段上がる1年となりそうだ。
|文:増田隆幸
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※編集部より:本文を一部修正して、更新しました。