エルサルバドル、IMFからの融資条件の一環として「チボ」ウォレットを廃止または売却へ
  • 国際通貨基金(IMF)から35億ドル(約5530億円、1ドル=158円換算)の融資を受けようとしているエルサルバドルは、条件の一環としてビットコイン(BTC)関連でいくつかの譲歩に合意した。
  • 同国は、独自ウォレット「チボ(Chivo)」を廃止または売却し、民間セクターでのビットコイン受け入れを任意とし、税金の支払いは米ドルのみにしなければならない。
  • チボにサインアップしたエルサルバドル国民は30ドルをもらえたにもかかわらず、同ウォレットは国家レベルで普及はしなかった。

エルサルバドルはIMFから35億ドルの融資を受けるための合意を締結しようとしているが、そのためにビットコインに関していくつかの譲歩をしている。

エルサルバドルのビットコイン・オフィスのディレクターであるステイシー・ハーバート(Stacey Herbert)氏は12月19日、政府発行のチボウォレット(ビットコインの普及を目指して2021年に立ち上げられた)は、合意の一環として「売却または廃止」されると、Xに投稿した。なお、民間企業が運営する他のビットコインウォレットは「エルサルバドルでサービスを提供し続ける」とハーバート氏は述べた。

IMFは18日、エルサルバドルは合意の下、民間セクターによるビットコインの受け入れも任意とし、税金は(ビットコインではなく)米ドルのみで支払われると、プレスリリースで述べた。

「公共セクターについては、ビットコイン関連の経済活動への関与、ビットコインの取引と購入は制限される」とも記されているが、プレスリリースではそれ以上の詳細には触れていない。

しかしハーバート氏は、エルサルバドルは今後もビットコインを、もしかしたら「加速したペース」で、準備資産に追加していくだろう、とXに投稿した。

エルサルバドルは現在、1日に1ビットコインを購入しており、当記事執筆時点では5968.77ビットコイン(約5億9600万ドル相当)を保有している。

ハーバート氏は、ビットコイン資本市場の開発やビットコイン教育プログラムの提供など、エルサルバドルのビットコイン関連プロジェクトの多くは今後も継続すると述べた。ビットコインの法定通貨としての地位も同様に、影響を受けない。

IMFは、ブケレ大統領が2021年9月にビットコインを法定通貨とし、国の公式通貨である米ドルと同じ地位を与えて以来、エルサルバドルのビットコイン構想に懸念を抱いてきた。

IMFは2022年、「特にビットコイン価格のボラティリティの高さを考えると」、エルサルバドルが「法定通貨としてビットコインを使用することに伴う大きなリスク」を負っていると警告していた。

「ビットコインプロジェクトの潜在的なリスクは、IMFの方針に沿って大幅に減少するだろう」と、IMFは18日に述べた。

エルサルバドルの人々は、チボにサインアップすると30ドルのビットコインをもらえることになっていたが、全国的な普及は進まなかった。全米経済研究所によると、2022年半ばまでに、30ドルを受け取った人の60%以上がまだ取引を行なっていなかった。

中米大学の1月の調査では、調査対象のエルサルバドル国民の88%が、2023年にビットコインを使用していなかった。

IMFがエルサルバドルとの合意の一環として提供するのは、14億ドルのみである。世界銀行、米州開発銀行、地域開発銀行からの資金によって、融資の総額は35億ドルになる見込みだ。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:El Salvador to Shut or Sell Chivo Crypto Wallet as Part of $3.5B IMF Deal