あるアメリカ企業は、規制当局からビットコインETF(上場投資信託)の承認を得る方法は分かっていると考えている。
ウィルシャー・フェニックス(Wilshire Phoenix)は、ニューヨークにある比較的新しい金融企業。2019年5月に「United States Bitcoin & Treasury Investment Trust ETF」のNYSEアーカ取引所(NYSE Arca)への上場を申請した。当時、すでに1ダースものビットコインETFの申請がSEC(証券取引委員会)によって却下されていた──1日に9件にのぼることもあった。しかし他のETF申請とは異なり、ウィルシャー・フェニックスのETFはビットコインと、一般的に「T-bills」と呼ばれる米国財務省短期証券の双方に投資する。
SECは現在、申請を審査中だ。
「我々が申請したビットコイン関連ETFは、これまでに承認を求めてSECに提出されてきたものとはまったく違う」とウィルシャー・フェニックスの創業者でマネージング・パートナーのウィリアム・ヘルマン(William Herrmann)氏は電話インタビューで語った。
「例えば、信託の構成がまったく異なる。我々の信託はマルチアセット信託(ビットコインとT-bills)で、ビットコインだけのものとは対照的」
SECは長い間、市場が比較的若く、投資家への潜在的なリスクがあるとして、リスクを伴うデジタル資産で構成されたETFの承認を躊躇し、多くの申請を却下してきた。一方で自ら申請を取り下げたものもいる。
ヘルマン氏によると、ウィルシャーETFはこれらの懸念に対処するためのメカニズムを備えている。この信託はビットコイン価格のボラティリティに関する潜在的な懸念に対処するため、毎月、自動的にリバランスするとヘルマン氏は述べた。
基本的に仮にビットコイン価格のボラティリティが増大すると、インデックスは仮想通貨への投資比率を減らし、米国財務省短期証券(T-Bills)の比率を増やす。ビットコインのボラティリティが低下すれば、その逆を行う。
ヘルマン氏によると、組み入れには透明性があり、インデックスはブルームバーグ(Bloomberg)やトムソン・ロイター(Thomson Reuters)のポータルに表示される。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン・レファレンス・レートが信託のビットコイン価格のデータを提供する。社内の価格決定方式もしくは「他の関連団体からのデータ」を使うわけではないと同氏は付け加えた。
またウィルシャー・フェニックスは、監視協定を使って、市場操作に関するSECの懸念に対処しようとしている。監視協定は直近のビットコインETF申請が却下された際に規制当局がその必要性を強調したものだ。
「CMEはCME先物市場と、信託のビットコイン価値の基礎を形成する現物市場の関係部分の双方に監視協定を有している。これは関係する現物市場との監視協定が欠けているというSECの懸念に対処できる。ここが、これまでの申請者が対処できなかった問題」
最近では、SECはビットワイズ・アセット・マネジメント・ファンド(Bitwise Asset Management’s fund)の申請を認めなかった。2019年10月9日に公開された112ページにもおよぶ要求事項においてSECは、監視協定は必須であり、市場操作は依然として現実の懸念のままと述べた。
9月にもSECのジェイ・クレイトン(Jay Clayton)委員長は、この分野に進展はあったが、市場操作への疑問は解決されていないと語った。
ウィルシャー・フェニックスの申請について、SECは6月に申請に関するパブリックコメントを受け付け始めたが、最終決定はまだ数か月先。SECは11月12日までこの申請へのパブリックコメントを受け付けている。
ヘルマン氏はETF申請の可能性について楽観的だ。
「我々はETFを投資家保護、また公平で秩序ある効率的な市場と合致するように開発した」
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:SEC image via Shutterstock
原文:The SEC Has Rejected Every Bitcoin ETF. This Firm Thinks It Has a Solution