ビットコインやDePINのような分散型テクノロジーは、2025年に真価を発揮するとUnstoppable Domainsの最高執行責任者(COO)、サンディ・カーター(Sandy Carter)氏は予測している。
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時間はかかったが、2024年はビットコイン(BTC)が数多くの年末の予測を実現し、ついに10万ドル(約1570万円、1ドル=157円換算)に到達した年だった。シャンパンの栓を開けたくなるだろうか。しかし、私はビットコインがこの歴史的な壁を突破したのは、さらに大きな出来事の前兆であり、2025年は待望の「分散化の年」になると信じている。
その理由は、ビットコインの急騰する価値とはほとんど関係ない。過去1年間、分散型テクノロジーの状況を少しでも見てきた者ならば、新しいユースケースの爆増を目の当たりにしてきただろう。その多くは風変わりなもので、中にはクールなものもあり、そしていくつかは人類が現在直面する最大級の課題のいくつかを解決すると期待を寄せられている。これらが合わさって、単なる投機でなく測定可能な影響を通じて、分散化の有用性は現実的となる域にまで達している。さらに重要なことに、これらユースケースが、2025年に分散化を活用することに向けた説得力ある理由を、多数提供している。
では、気を引き締めて、私の考える2025年の5つの予想を紹介しよう。
1. ビットコインの壮大な未来
ビットコイン価格に関する大胆な予測が年末年始の風物詩だが、他で予想されている25万ドル、50万ドルといった数字をなぞるのではなく、より過激な可能性を探ってみよう。ビットコインがグローバルな戦略的準備金の基盤となる可能性だ。
ファンダメンタルズはこの可能性を裏付けている。世界の大国(または思いもよらぬ国)がビットコインを財政上の準備金の一部として正式に採用した場合、現在の価格予測は打ち砕かれる可能性がある。50万ドルでは済まず100万ドル、あるいはそれ以上の金額が、世界で最も希少なデジタル資産を確保しようと各国が争う中で、新たな相場となる余地がある。
地政学的な要素を考慮せず、その希少性だけに着目しても、ビットコインはユニークな資産である。ビットコインは2100万BTCしか存在せず、世界中の6000万の億万長者に比べてはるかに数字として少ない。機関投資家や、今や政府までもがビットコインを大量に買い求めているため、1 BTCでも所有できる望みのある者はまもなくごく少数になるだろう。ただし、賢明にも早期に投資していればその限りではない。
分散型ネットワークとしてのビットコインの実用性が継続的に成長し、法定通貨が孕む不安定性への代替手段としての役割も加味すれば、指数関数的な成長が見込まれる。
しかし、ここで特筆すべきことがある。もはや市場だけでなく、デジタル支配をめぐる競争で各国が互いにヘッジし合うことによってビットコインの価格が左右されることになったらどうなるか。ここが本当に緊張感の高まるところだ。すでにいくつかの国がビットコインの財務プログラムを試験運用しており、50万ドルという数字は出発点に過ぎなくなるかもしれない。
2. DePINは稼げる、すぐに
誰かが認めるべきだろう。暗号資産(仮想通貨)業界は、そのビジョンを世界に売り込むのに時々失敗していると。「金融における自己主権」などのフレーズは、一般の人々にはほとんど意味をなさない。もちろん、銀行口座が凍結されない限りにおいてだが。
では、セールストークとして、こういうのはどうだろうか。分散化により、全く何もせずにお金を稼ぐことができる。いや、信じられない話ではない。なぜなら、それは分散型物理インフラネットワーク(DePIN)に携わる者がすでにやっていることだからだ。 携帯電話のプロセッサなどのコンピューターリソースを活用して「ファーミング」することにより、誰もがDePINという新しいパラダイムに貢献することで受動的に収入を得ることができる。
分散化が所有権の概念をどのように変え、(稼ぐ)力を人々の手にもたらすかを示す例として、DePIN革命は素晴らしい。同様に重要なのは、騒音公害からエネルギーグリッドの管理、自然災害の警報まで、すでにさまざまな問題を解決している驚くべき新たなユースケースを生み出していることだ。まだ初期段階ではあるが、DePIN アプリケーションの持つほぼ無限の可能性により、2025 年にはアーリーアダプターが平均収入の5%までをも稼ぐようになる可能性がある。しかも、指一本動かすことなくだ。
3. ミームコインが本格化
2025 年に起こらないこと、を予測してみよう。「真面目な」金融評論家は、ミームコインに何らかの有用性があること、またはミームコインが行き過ぎたインターネット上のジョーク以外の何物かになることを依然として認めないだろう。そして、彼らはますます、滑稽なほどに間違っていることだろう。
ある意味では、彼らを責めることはできない。表面的には、ほとんどのミームコイン、特に典型的などこにでもあるドージコイン(DOGE)は、ジョークのように見える。しかし、無視するのは危険だ。ミームコインは急速に成長しており、その出自を超えて進化を遂げている。これらのトークンの価値は、投機よりも、遊びから政治までさまざまなプロジェクトにおいて人々を結びつける能力によって決定される。
実際、ミームコインは、分散型の世界におけるコミュニティおよび参加することの本質について多くのことを教えてくれる。2025 年には、ブランドが、新しいオーディエンスにリーチし、新しいコミュニティを育て、企業と消費者の関係を再考するミームコインの並外れた可能性に気づくだろう。確かに、ミームコインで幾許か儲かる可能性はあるが、長期的には、先見性のあるブランドにとって、その価値はトークンの価格よりもはるかに重要なものになる。
4. タイム誌がアンドロイド・オブ・ザ・イヤーを選出
2025 年、タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」は、人間ではないだろうと予測している。98年間の歴史で初めて、2025年は、私が「ミセス・ヒューマノイド」と呼んでいる存在に対して賞が贈られるだろう。これは、AI(人工知能)とロボットの台頭、および両者の人間社会への統合を象徴する複合キャラクターだ。
このヒューマノイドロボット(または「ガイノイド」と呼ばれることもある)は、医療から教育まで、さまざまな分野でこの2つの技術がもたらす驚くべきインパクトを体現し、人間と機械の労働の境界を曖昧にする能力を実証するだろう。タイム誌は過去にも物議を醸す人物を選んだことがあるが(1938年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」を参照されたい)、ロボットを選ぶことに少しも奇妙なことはないと思う。さらに言えば、ロボットを表紙に載せないのは無責任であろう。
ロボットの急速な台頭は、AIの倫理、そして労働、プライバシー、人間のアイデンティティがどのように再定義されるかについて世界的な議論を巻き起こすはずだ。こうした変化の多くは非常に前向きなものだが、倫理的に怪しいものやまだ不明瞭なものもあり、そのいくつかは非常に憂慮すべきものになる可能性がある。したがって、この議論は、今世紀を特徴づける問題の1つである気候変動と並行して行われるべきである。タイム誌の表紙をミセス・ヒューマノイドが飾ることは、特に規制当局や立法者の意識を、このような高度な AI システムがもたらす課題に対処し、機会をつかむための新しい規制枠組みをどのように築くかに集中させる重要なステップとなるだろう。
5. 従来型の検索はAIに淘汰される
2024 年は、知らないことを「グーグル検索」する最後の年になるだろうか。生成AI アプリケーションの登場により、そう考える理由は十分にある。
チャットGPT(ChatGPT)や、パープレキシティ(Perplexity)などのツールは、25 年前に グーグル(Google)が登場して以来、検索に最も大きな変化をもたらした。AI の力を活用すると、セマンティクスを理解する能力のおかげでより正確な結果が得られるだけでなく、検索のダイナミクスも変わる。
これらの新しいアプリケーションはチューリングテストを見事に乗り越え、そして料理から哲学まであらゆることについて人々が有意義な会話を行えるようにする。そのため、これらは我々のテクノロジーに対する感情への根本的な変化を体現し、Google の長期にわたるほぼ完全な独占に代表される「従来の」検索は、まさに先史時代のものに見えてくる。
インターネットの出現が、何よりも大事なGoogleの検索結果1ページ目をめぐって争うブランド間の「SEO競争」を引き起こしたように、2025 年には、AIを活用した検索の時代において関連性を維持する方法を企業が考え始めるだろう。
私たちが目にするだろう最大の変化の1つは、Webサイトの進化だ。Web サイトは、人間ではなくAIエージェントに対応するように益々なっていく。2025 年には、Webドメインが新たな重要性を帯び、最も成功するブランドは、オンチェーンドメインを活用して消費者データを保護し、AI機能を統合し、オーディエンスに対して革新的なオンライン体験を提供するブランドとなる。
これらの予測がすべて実現するか、一部が実現するか、まったく実現しないかは別として、疑いの余地が無いことが1つある。2020 年代後半に入ると、分散化はもはや未来ではない。誰にとっても逃れられない、切り離せない現実の一部となる。
|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:2025 Will Be the Year of Decentralization: 5 Predictions