- マイクロストラテジーの株価は、ナスダック(Nasdaq)100 指数への組み入れが発表されて以来、大幅に下落しており、数週間前のピークから 45% 近く値下がりしている。
- 値下がりを見せたものの、同社が2020 年にビットコイン購入開始以来、今年も含めて、株価は大幅に上昇している。
- ジョージ・ソロス氏の再帰性理論が、同社の過去と将来の価格動向についての指針となるかもしれない。
マイクロストラテジーの株価は現地時間12月30日には 8% 以上値を下げ、300 ドル(約4.7万円、1ドル=157円換算)をわずかに上回る水準で推移した。同社株は、Nasdaq-100 指数への組み入れが発表された直後から約 30% 下落し、11 月下旬に記録した過去最高値から 50% 近く下げている。振り返れば、不可避な現象だったと言えよう。
かつてはほとんど無名だったエンタープライズソフトウェア会社が巨大なビットコインの開発企業に変貌し、少なくとも短期では極めて高値に届くという兆候は随所に見られていた。
そうしたシグナルの第一は、株価の急騰だ。11月下旬に最高値543ドルをつけて、同社は2024年で8倍近く、そして同社が2020年8月にビットコイン(BTC)の購入を開始して以来からだと50倍以上、値上がりした。
続いて、創業者で取締役会長のマイケル・セイラー(Michael Saylor)氏だ。同氏は会社の見通しについて喧伝し、ビットコインを広めることに一切の躊躇なく、そして、2024年終盤には金融ニュース、ポッドキャスト、ソーシャルメディアでさらによく見かけるようになった。
セイラー氏に関して言えば、頻繁に目にするようになっただけではない。アメリカンフットボールで選手がタッチダウン後に行うパフォーマンスに米国のスポーツファンであればなぞらえかねない同氏の態度に、微妙な変化があった。たとえば、マイクロストラテジーが考案した「ビットコイン利回り」という主要業績指標を定期的に宣伝することであり、これは1990年代後半のインターネットバブル期の「ページビュー」などといった指標を想起させる。同社は、株式や転換社債の売却で現金を潤沢に蓄えていたが、理由は不明なものの、2024年終盤にはセイラー氏が月曜日の午前に規制当局への正式な報告を行う前の日曜日、多額の新規ビットコイン購入に関する発表を予告するという恒例もできた。
そして、追従者が出現した。セイラー氏によるビットコイン財務戦略が何年にもわたって明らかな成功を収めていたにもかかわらず、他の上場企業が同じ戦略を採用することはそうそう見られなかった。確かに、イーロン・マスク(Elon Musk)氏率いるテスラ(Tesla)やジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏率いるスクエア(Square)のような大企業でさえ、ビットコインの取得に手を出した企業はいくつかあった。しかし、ビットコインを主要な財務資産として採用するにとどまらず、意欲ある市場を利用してトークンを蓄えるために資金調達を重ねる姿勢は他の注目企業には見られなかった。
しかし、今年は状況が大きく変わり、企業としては小規模の医療機器メーカーであるセムラー・サイエンティフィック(Semler Scientific)、日本のホテル運営会社メタプラネット、そして数多のビットコインマイナーがセイラー氏のビジョンを受け入れており、資金調達やビットコイン購入を発表するたびに、ソーシャルメディアでセイラー氏から称賛を浴びている。
永続できないものは、やがて止まる
史上最高のトレーダーであり、何十億ドルもの資産を蓄えるだけでは満足せず、ジョージ・ソロス(George Soros)氏は偉大な思想家として名を馳せることを望んだ。同氏のトレーディングに関する最高傑作「再帰性理論」が、アインシュタインの有名な理論に疑わしいほど似た響きを持つのは偶然ではない。
ソロス氏は、投資家の認識とそれが価格に与える影響は常に双方向的であると説明した。このように、認識(しばしば間違っている。人間は間違いを犯すからである)は価格に影響するだけでなく、文字通り自らの現実を作り出すことができる。つまり、1)収益が大幅に増加しようとしているため、投資家は株価が上昇すると信じる、2)株価が上昇する、3)株価が高いため、経営陣は他の方法よりも低コストで資金調達できる、4)これにより収益が改善する、5)株価がさらに上昇する、6)強気派は自らの聡明さを自画自賛し、追従する者が出現する、といったことである。
ソロス氏の哲学の多くを削ぎ落として見れば、これは好循環としても知られており、マイクロストラテジーは2024年に間違いなくその渦中に身を置いていただろう。ソロス氏のトレーディングにおける天才性の片鱗は、これらの循環が起こっている際にそれを認識し、飛び乗ったことだ。また、他に同氏の天才性が現れているところとしては、循環が崩れようとしているときを見極め、そこから抜け出すか、さらには逆張りをすることさえあったことだ。
「永続できないものは、やがて止まる」と、政府予算/貿易赤字について論陣を張っていた経済学者のハーブ・スタイン(Herb Stein)は述べている。スタインの法則は、結局、マイクロストラテジーの株にも同様に当てはまることが判明した。
依然、値上がり幅としては目覚ましい
現地時間12月14日にナスダック100指数への組み入れが発表された直後、マイクロストラテジーの株価は430ドル前後(約6.7万円)で取引されていたが、本記事執筆時点では300ドル(約4.7万円)強で取引されており、わずか2週間で約30%下落している。
振り返ってみると、マイクロストラテジーのバブルには3週間前に亀裂が入っていたようだ。株価は11月21日に約543ドル(約8.5万円)でピークに達した。ビットコインは11月下旬から12月上旬にかけて上昇を続け、最終的に10万8000ドル(約1700万円)を超える高値を付けたが、マイクロストラテジーは値下がりした。これは、テクニカル指標のマイナス乖離と呼ばれるものだ。本記事執筆時に300ドルというのは、マイクロストラテジーが約5週間でピークから底値まで45%の下落に見舞われているということだ。
マイクロストラテジーの株価は、非常に短いこの期間を除けば、依然として目覚ましいパフォーマンスを見せている。年初来で400%以上、セイラー氏が2020年8月にビットコイン購入を開始した時点からだと約20倍も上昇している。
弱気派は急落はまだ続くと言うかもしれないが、強気派は、2020年8月以降に同社株は今回と似た恐ろしい短期または中期の値下がりを何度も経験したが、常に上昇して解決してきたと指摘するのが目に見えている。
ソロス氏ならば何と言うだろうか。おそらく、自身の再帰性理論によれば、価格というのは、ほとんどの人の予想を超えて(上昇と下降の両方で)動く可能性があるというのを思い起こさせるのだろう。
|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:Sell the News: MicroStrategy Plunge Deepens in Days Following Nasdaq-100 Inclusion