国家安全保障をブロックチェーンとデジタル資産は強化できるか──CIA、FBI、シークレットサービス出身者が語る

規制の明確性があれば、国家安全保障におけるデジタル資産とブロックチェーン技術のメリットは飛躍的に拡大すると4人の国家安全保障の専門家は語る。

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国家安全保障の専門家として、我々は常に、リスク、緩和方法、安全に焦点をあてた視点で新興テクノロジーを捉えている。我々は米国政府において数多くの国家安全保障に関する役職で数十年にわたる経験を積んでいる。FBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、シークレットサービス、司法省、財務省などだ。我々の経験は、初のデジタル資産に関する違法金融捜査ユニットの設立から、CIAのサイバーインテリジェンスセンターにおける幹部職、国際組織犯罪グループの解体まで多岐にわたる。

米国の国家安全保障における優位性は、新しい技術を開発したり活用する能力に立脚しており、我々はブロックチェーンイノベーションプロジェクトに参加して、米国の国家安全保障がブロックチェーン技術の実装からどのように恩恵を受けることができるかについて経験を共有してきた。

ブロックチェーン技術が社会実装への未だ初期段階にあることから、政治家や一般市民に不正確な情報が大量にもたらされることがよくある。多くの場合は、この技術を理解できていない情報源や、時には不完全な事実や誤った分析によって話を進めようとする意図的な動きがそうした情報を発信している。

最も平たく言えば、ブロックチェーンは暗号化を利用した技術である。他の技術と同様に、どのような用途かは問わない。法定通貨であれデジタル通貨であれ、通貨は合法な活動と違法な活動の両方に資金を提供することに用いられている。

政策面について

政策の焦点を市場構造に集めることが、米国の戦略的な国家安全保障上の利益に繋がる。市場およびそこでブロックチェーンが果たす役割に関した多くの政策的アプローチは、市場の健全性やシステムリスクの軽減など複数の問題へ同時に対処しようとするあまり、広範に過ぎる。こうした幅広いアプローチを採ることによる課題は、ブロックチェーン技術、暗号資産、トークノミクスに対する理解不足が続くことによって悪化の一途を辿る。

米国が積極的にこの技術を国内で普及させるための仕組みを構築すれば、たびたびブロックチェーンとデジタル資産が色眼鏡で見られているように犯罪者や悪質な国際的プレイヤーの道具としてのみ機能するのではなく、強さと民主化の道具として活用できることに、政治家はすぐに気づくだろうと我々は心から信じている。

さらに、米ドルの強さは、米国のソフトパワーの中で最も強力なツールの1つであり続けている。民間部門が発行する、規制下で米ドルベースで完全に裏付けられたステーブルコインに人々がアクセスできるようにする規制枠組みを確立することは、経済成長の機会であるだけでなく、世界経済の大部分を米国の規制システムへと導き、米国の意のままに使える通貨および規制ツールを増やすための道でもある。

また、敵対国や同盟国の別なく世界の他の国々が金融システムにおけるデジタル資産の開発と採用を進めていることを認識するのも重要だ。一部ではこれを加速的に進めている中、米国の多くの銀行は1950年代のコードを使用して1980年代に導入されたソフトウェアプラットフォームに依存している。最近のインタビューで、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は、「私たちはデジタルユーロを、あらゆるデジタル決済に使用できるデジタル形式の現金として構想している」と述べている。2023年には、国家安全保障に資する意義ある規制枠組みが20か国以上で確立された。反対に、敵対的な国々は取り締まりのギャップを悪用し、つぎはぎの規則や市場構造の欠如によって生じる脆弱性を利用し続けている。

米商品先物取引委員会(CFTC)技術諮問委員会が強調したように、上記は国家の影響力と世界の準備通貨および取引通貨の提供者としての地位を弱め、違法な金融活動に対抗する能力を弱める一因となる可能性がある。

デジタルに追跡できる

規制の確実性があれば、デジタル資産とブロックチェーン技術の国家安全保障上における利点は飛躍的に増大する。これらの利点には、敵対的な影響に対抗するための継続的な取り組みの強化、国際貿易における要件のより効果的な監視、制裁の執行などが挙げられる。具体的には、ブロックチェーンとトークン化プロセスの使用により、サプライチェーンの追跡可能性が大幅に向上し、重要なリソースが悪意のある影響を受けないようにすることができる。この機能は、経済安全保障だけでなく、技術と防衛能力を外国の手から保護するためにも不可欠だ。

暗号資産の取引は、その設計上、公開された台帳に不変の形で記録される。これにより、従来の金融取引では存在しない識別と追跡の機会が捜査官や諜報機関にもたらされる。これは、資産の移転に直接関与する個人にとどまらず、サプライチェーン、マネーミュール、これらの関連会社、インフラサービスプロバイダー、マネーロンダラー、法定通貨と暗号資産の両替を含む犯罪ネットワーク全体における混乱を整理し、法的措置を促進させる。

よくある誤解は、ブロックチェーンは本質的に匿名性を保証するというものだ。取引は仮名にできるものの、完全に匿名というわけではない。取引は公開された台帳に記録され、それを分析することでパターンや個人または団体への繋がりを明らかにすることができる。幸いなことに、ブロックチェーンの透明性により、法執行機関は従来の金融犯罪では利用できなかった不正取引の流れを特定するための追跡機能とトレース機能を手に入れることができる。ほとんど痕跡を残さない現金取引とは異なり、ブロックチェーン取引ではネットワーク全体の資産を追跡できる。取引パターンを分析し、ブロックチェーンのフォレンジック分析を採ることで、当局は従来の現金を用いた方法では不可能な手で不正行為を追跡できる。この機能により、金融犯罪と闘い、悪質なプレイヤーに責任を負わせる手立てに変化が起こり始めている。

最後に、デジタル資産は凍結や差し押さえに関しても現金に対して分がある。2023年だけでも、盗難、ハッキング、マネーロンダリングに関連した数十億ドル相当の暗号資産が、法の適正な手続きに従ってブロックまたは凍結された。多くの暗号資産発行者は、米国司法省、米国シークレットサービス、FBI など、数百の法執行機関や規制機関と連携して政府当局をサポートしている。

技術発展の最前線に立ち続け、強固な国家安全保障を維持する責任が米国にはある。ブロックチェーンとデジタル資産の明確な市場構造と規制枠組みの構築に向けて手を携えることで、指導者たちは今後数十年にわたって米国民と国内外の経済を守る歩みを後押しすることになるだろう。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Opportunities for Blockchains and Digital Assets to Support and Enhance U.S. National Security