USDTの時価総額、FTX崩壊以来の急激な下落──EUでのMiCA施行の影響
  • 今週、テザー社のステーブルコインUSDTの時価総額はほぼ1.1%下落した。
  • 欧州の複数の暗号資産取引所と米大手のコインベース(Coinbase)は、MiCA(暗号資産市場規則)のコンプライアンスにおける懸念から、USDTの上場を廃止した。
  • だがUSDTのドミナンスと市場への影響は限定的だ。

時価総額最大のドル連動型ステーブルコイン、テザー(Tether)社のUSDTは、2年間で最も急激な週次における時価総額の下落を経験し、市場ボラティリティへの懸念を引き起こしている。

USDTの時価総額は今週、1%以上下落して1372.4億ドル(約21兆5470億円、1ドル157円換算)となり、2022年11月第2週のFTX破綻以来、最大の減少となったことがTradingViewのデータから明らかになった。2024年12月中旬には過去最高の1407.2億ドルを記録していた。

下落は、12月30日に本格的に施行されたEUの「MiCA(暗号資産市場規則)」におけるコンプライアンス上の問題により、EU(欧州連合)に拠点を置く複数の暗号資産(仮想通貨)取引所と米大手のコインベース(Coinbase))がUSDTの取り扱いを中止したことによるものだ。とはいえ、ステーブルコインに関する規則は6カ月前に発効していた。

MiCAでは、EU内で資産参照トークン(ART)または電子マネートークン(EMT)を公に提供または取引する発行者はMiCAライセンスの取得が義務付けられている。ARTは、金(ゴールド)や暗号資産、またはその両方の組み合わせ(1つ以上の法定通貨を含む)を参照することで安定した価値を維持しようとする暗号資産。ERTは、USDTと同様に単一の法定通貨を参照するものだ。

EUを拠点とするトレーダーは、引き続き、ノンカストディアル・ウォレットでUSDTを保有できるが、MiCA準拠の中央集権型取引所(CEX)では取引できない。

USDTは暗号資産市場へのゲートウェイ的存在であり、投資家は暗号資産の購入やデリバティブ取引での資金調達などに幅広く利用している。そのため、上場廃止と時価総額の下落は、暗号資産市場全体の低迷につながるのではないかとの憶測がソーシャルメディア上で広がった。

だがこうした懸念は杞憂に終わり、影響はせいぜいユーロ圏に限定される可能性があると、パーミッションレスなWeb3流動性レイヤーであるOrderly Networkのアジア太平洋地域パートナーシップ責任者、カレン・タン(Karen Tang)氏はXに投稿した。

「MiCAによりEU内で@Tether_toへのアクセスが制限されても、USDTのドミナンスは損なわれない」とタン氏は記した。

「EUは最大の暗号資産市場ではない。暗号資産取引の大部分はアジアと米国で行われている。EUのデジタル資産イノベーションが停滞するで、すでにオーバーな規制による遅れが見られる。EUをショートできたら、そうするのだが…」

暗号資産アナリストのBitblazeは、USDTの取引高の大半はアジアが占めており、MiCAによる欧州での上場廃止の影響は軽微だと述べた。

「USDTは時価総額1385億ドル、1日あたりの取引高440億ドルを誇る最大のステーブルコイン。またUSDTの取引高の80%はアジアからであり、EUでの上場廃止は深刻な影響を及ぼさないだろう」とBitblazeはXに投稿している。

テザー社は、規制への整合性を確保するために、MiCA準拠企業であるStablRとQuantoz Paymentsに投資している。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:TradingView/CoinDesk
|原文:Tether’s Market Value Sees Sharpest Decline Since FTX Crash as MiCA Kicks In