2024年、ブロックチェーン技術は画期的な進展を見せた。2025年はどのような展開を見せるのか。昨年を振り返りつつ、暗号資産(仮想通貨)の次代を形作るマイルストーンはトレンドを見てみよう。
2024年の主なマイルストーン
イーサリアムのダンカン・アップグレード
2024年は、イーサリアムブロックチェーンにとって最も重要なネットワークアップグレードの年となった。イーサリアムは、スケーラビリティの向上と取引手数料の削減を目的とした画期的な改善策「カンクン・デネブ(Cancun-Deneb)」、あるいわ「デンクン(Dencun)」アップグレードを実施し、ネットワークの進化における重要なステップとなった。
デンクンは、データ可用性を簡素化し、トランザクションのスループットを向上させることで、レイヤー2ロールアップのコスト削減を目指す「プロト・ダンクシャーディング」というメカニズムを導入した。このアップグレードは、大きな議論を呼んだが、開発者の利益につながり、イーサリアムブロックチェーンのさらなるイノベーションを切り開き、スマートコントラクト・プラットフォームにおけるトップの座を強化する。
ソラナのTVL拡大
ソラナ(Solana)ブロックチェーン上のDeFi(分散型金融)のTVL(Total Value Locked)は過去3年で初めて90億ドル(約1兆4100万ドル、1ドル157円換算)に達し、DeFiエコシステムはさらに成長した。この成果は、ユーザー・エンゲージメントの増加と、プラットフォーム上の分散型アプリケーションの拡大を反映している。成長は、機関投資家による採用とインテグレーションが大きく促進した。
例えば、フランクリン・テンプルトンやソシエテ・ジェネラルといった金融大手は、トークン化資産プロジェクトにソラナブロックチェーンを活用した。また、米取引大手のロビンフッド(Robinhood)は取引プラットフォームにソラナ(SOL)を追加し、Cboe Global Marketsがソラナと連動するETF(上場投資信託)を申請したことで、ソラナブロックチェーンの普及が拡大し、信頼が高まっていることが示された。
量子コンピューターがもたらす危機
グーグル(Google)の量子コンピューティング、特にその画期的な量子チップの発展により、暗号資産コミュニティではブロックチェーンのセキュリティに対する潜在的な脅威に対する危機感が広がった。従来のコンピューターをはるかに超える解決能力を持つ量子チップは、ビットコインが伝統的な暗号化方式に依存していること、および暗号化エコシステム全体への影響についての議論を再燃させた。
専門家は、暗号資産を将来的な脆弱性から守るために、量子耐性暗号への移行の緊急性を強調した。現在の量子コンピューターはブロックチェーンネットワークを侵害する能力はまだないが、グーグルの量子チップの進展は、デジタル資産の長期的なセキュリティとレジリエンス(回復力)を確保するための積極的な対策の必要性を浮き彫りにした。
レイヤー2の普及が拡大
アービトラム(Arbitrum)、オプティミズム(Optimism)、ベース(Base)などのプロジェクトが、イーサリアムブロックチェーンのスケーラビリティ問題への対応で重要な役割を果たしたことによって、レイヤー2の普及が拡大した。
アービトラムは、強力な開発者サポートとDeFiインテグレーションによって、トランザクション件数が10億件を超え、引き続きレイヤー2エコシステムをリードした。
オプティミズムは、モジュール方式によるレイヤー2ソリューションを可能にする「OP Stack」技術によって、その影響力を拡大し、OP Stackを使ったさまざまなレイヤー2をSuperchain構想に統合することで、エコシステム全体のコラボレーションを促進した。
米暗号資産取引所コインベース(Coinbase)が手がけるレイヤー2のベースは、コインベースの広範なユーザー層を活用して大きな注目を集めた。フランクリン・テンプルトンは、ベース上でトークン化MMFを立ち上げた最初の資産運用会社となった。
DeFi大手のイノベーション
DeFiレンディングプラットフォームのアーベ(Aave)のガバナンストークン、アーベ(AAVE)を対象とするファンドが登場した。2024年10月、グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)は、新たなファンドを立ち上げ、機関投資家および認定投資家に伝統的な投資手段を通じて、アーベ(AAVE)に対するエクスポージャーを提供した。
ユニスワップ・ラボ(Uniswap Labs)は、オプティミズム(Optimism)のOP Stackで使ってレイヤー2ブロックチェーン、ユニチェーン(Unichain)を構築すると発表。取引速度の向上、コストの削減、クロスチェーンの相互運用性の改善を目的として、2025年のメインネットの立ち上げを計画している。
MakerDAOは「エンドゲーム・プラン(Endgame Plan)」の一環として、ブランド名を「Sky」に変更し、新しいガバナンストークン「SKY」とステーブルコイン「USDS」、分散型自律組織「Sky Stars」、デフレ型のトークンエコノミクス、MKRトークンからSKYトークンへの移行ロードマップを導入した。
2025年の新たなトレンド
AI x ブロックチェーン
AI(人工知能)とブロックチェーンのインテグレーションによって、本人確認、予測分析、スマートコントラクトの自動化が革命的に進展するだろう。また、AIのネガティブな側面が解消されることも期待される。
規制された暗号資産ハブ
香港、ドバイ、シンガポールなどの地域は、自らを暗号資産フレンドリーなイノベーションセンターと位置づけ、スタートアップや機関投資家を惹きつけている。
相互運用性が主役に
クロスチェーンプロトコルが開発シーンを牽引し、ブロックチェーンエコシステム間のシームレスな資産移転とコラボレーションを実現する。
開発者に注目:2024年の数字
「Electric Capital Developer Report」
「Electric Capital Developer Report」は、アクティブな開発者が35%増加し、ブロックチェーン開発の持続的な成長を強調している。イーサリアム、ソラナ、ポルカドット(Polkadot)、ベース、ポリゴン(Polygon)が強力な開発者コミュニティでリードした。
ソラナは、2024年に7,625人の新規開発者を獲得し、イーサリアムを上回るなど、新規開発者に大きな魅力を提供している。取引手数料の低さ、高速な取引、多数のミームコインによって、スマートコントラクト分野におけるイーサリアムの強力なライバルとしてのポジションを確立している。
2025年に注目すべきこと
イーサリアムのペクトラ(Pectra)アップグレード
イーサリアムの次期アップグレード「ペクトラ(Pectra)」は、コンセンサスレイヤーと実行レイヤーの改善をより円滑に行うために、プラハ(Prague)とエレクトラ(Electra)の2フェーズに分かれている。エレクトラでは、バリデーターの効率性向上、ネットワークセキュリティの強化などの導入が予定されている。
スケーリングソリューション
ZK(ゼロ知識)ロールアップとモジュール型ブロックチェーンがスケーラビリティの次の進展を牽引し、よりスムーズなユーザー体験を実現する。ZK(ゼロ知識)証明は、プライバシーと効率性を向上させ、ブロックチェーンネットワークが分散性を損なうことなく、シームレスにスケールできる未来への道筋をつける画期的な技術として台頭している。
分散型ID
分散型IDソリューションの台頭により、ユーザーのWeb3プラットフォームとの関わり方が再定義され、プライバシーと所有権が重視される可能性がある。分散型IDは、ブロックチェーン技術を活用してユーザーに個人データの管理権限を与え、中央集権的な権威に頼らずに本人確認を行うことを可能にする。
まとめ
2024年は、暗号資産の次のステージを整えた。2025年は、スケーラビリティ、DeFi、セキュリティにおける画期的な変革の1年となるだろう。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Luca Bravo/Unsplash
|原文:A Year of Crypto Tech In Review