FRB、バー金融監督担当副議長が退任へ──トランプ政権との対立回避か

米連邦準備制度理事会(FRB)は6日、マイケル・バー(Michael Barr)金融監督担当副議長が2月28日付けで辞任すると発表した。後任者が承認されれば、それ以前に辞任する。

バー氏は引き続きFRBの理事を務める予定だ。

FRBの発表に含まれる声明で、バー氏はドナルド・トランプ(Donald Trump)次期政権との対立の可能性を避けるために自発的に辞任を決めたことを示唆した。

「金融監督担当副議長というポストは、世界金融危機後に、FRBによる金融システムの監督と規制に対する責任、透明性、説明責任を高めるために設けられた」とバー氏は述べ、「このポストをめぐる争いのリスクは、我々の使命の妨げになる可能性がある。現在の環境では、理事として米国民に奉仕するほうが効果的だと判断した」と付け加えた。

銀行規制の政治化

TDコーウェン(TD Cowen)の金融政策アナリスト、ジャレット・サイバーグ(Jaret Seiberg)氏によると、バー氏の辞任決定は、銀行規制の政治化が続いていることを示す潜在的な懸念材料だという。サイバーグ氏は7日の顧客向けアナリストノートで、「かつてはホワイトハウスが政権交代しても、政府機関の長は留任していた。今はそうではない。つまり、ホワイトハウスが政権交代するたびに、銀行は政策の大きな変動を予想しなければならないということだ」と書いている。

FRBの金融監督担当副議長は、銀行の最高監視人として機能し、米国で最も重要な規制の任務の1つと考えられている。バー氏はそのポストにおいて、伝統的な金融システムと暗号資産(仮想通貨)の相互作用について大きな影響力を持っていた。

バー氏は就任前に、エックス・アール・ピー(XRP)トークンの発行元であるリップル(Ripple)社の顧問を務めるなど、暗号資産に関する実績はあったが、同氏の在任期間は暗号資産業界にとって良い面と悪い面が入り混じったものだった。バー氏は、米国内のステーブルコイン発行者を規制し、法律を施行する権限をFRBに与えるよう求めてきたが、多くの共和党議員がこれに異議を唱えている。

バー氏の後任者

ティム・スコット(Tim Scott)上院議員は7日の声明で、2023年の銀行破綻時のバー氏の「監督上の失敗」と、同年に発表された「悲惨なバーゼルIII最終化案」を激しく非難した。

スコット氏は「マイケル・バー氏はその職責を果たせていない」としたうえで、「私はトランプ大統領と協力し、責任ある金融規制当局による舵取りを確実なものにする準備ができている」と述べた。

だが、サイバーグ氏によれば、民主党は2026年初めまでFRBで多数派を維持する見通しのため、バー氏の辞任が短期的に大きな変化をもたらす可能性は低いという。トランプ大統領がバー氏を早急に交代させたいのであれば、理事会内から後任者を指名せざるを得ないだろうとサイバーグ氏は言う。

「理にかなった候補者はミシェル・ボウマン(Michelle Bowman)氏だ」とサイバーグ氏は述べたうえで、「ボウマン氏は元カンザス州銀行監督官で、コミュニティバンクにも勤務していた。そして同氏は、2018年後半からFRBに在籍している。銀行政策についても頻繁に論じており、バー氏のバーゼルIII最終化へのアプローチに批判的だ」と語った。

ボウマン氏は昨年、「DCブロックチェーンサミット(D.C. Blockchain Summit)」で講演し、イノベーションと新技術に対する「規制の開放性」の重要性を強調した。

|翻訳・編集:廣瀬優香
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|原文:U.S. Fed’s Michael Barr to Step Down as Vice Chair for Supervision