アービトラム、韓国ロッテグループとの関係強化へ

イーサリアム上で最大のレイヤー2ネットワークであるアービトラム(Arbitrum)は、韓国のコングロマリットであるロッテグループとの関係を深めようとしている。同グループは、ショッピングモール、メディア、エンターテイメント施設など、広大なポートフォリオで知られる。

アービトラムの開発元であるオフチェーン・ラボ(Offchain Labs)とアービトラム財団(Arbitrum Foundation)によると、金融取引が計画され、アービトラムは、ロッテのメタバースゲームプラットフォーム「Caliverse」の主要ブロックチェーン・インフラ・プロバイダーとなるという。

アービトラム財団の関係者は14日、ネバダ州ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES 2025」でロッテは「過去最大」の助成金を受け取ったとCoinDeskに語った。だが同日中に財団とオフチェーン・ラボは、この発言を撤回し、そうした取引はまだ決まっていないと述べた。

ロッテのアービトラムとの統合は、ブロックチェーンをベースとした仮想世界の構築に対して、伝統的な企業からの関心が再燃していることを示唆している可能性がある。仮想世界、つまり「メタバース」のコンセプトは、数年前に主流の話題となったが、その後は多くの技術者や投資家にとって重要度が下がった。ロッテは2022年に初めてメタバース関連製品のリリースに関心を示し、昨年にはアービトラムと「戦略的パートナーシップ」を締結すると発表した。

Caliverseでできること

Caliverseは主に、韓国の巨大企業が人工知能(AI)、仮想現実、暗号資産(仮想通貨)のような新たな技術トレンドを実験する場だ。Caliverseのユーザーは、さまざまな種類のメディアコンテンツや未来的なショッピング体験を備えた仮想世界を探索できる。このアプリは現在、セブン-イレブンから音楽フェスのトゥモローランドまで、大手ブランドのコンテンツを取り揃えている。Caliverseのコンテンツの多くは、ジバンシー(Givenchy)、エムシーエム(MCM)、ロクシタン(L’Occitane)のようなファッションや美容企業から提供されている。

ユーザーは現在、Caliverseアプリ内で、これらのブランドのショッピング、コンサートやその他のメディア体験ができる。アービトラムとの新たな統合により、ブロックチェーンユーザーが暗号資産を使って特定のサービスに対して支払えるようになり、ゲーム内取引などのシステムがオンチェーンで実行され始める可能性がある。

ゲーム分野におけるアービトラム

アービトラムブロックチェーンはゲームプラットフォームの間で人気の選択肢となっており、オフチェーンラボによると、2024年にはゲーム分野で前年比72%の成長を遂げた。同社がCoinDeskと共有したプレスリリースによれば、アービトラムは現在、Arbitrum Orbitスタックを通じて、119のゲームタイトルと23のゲームに特化したブロックチェーンをホストしている。Arbitrum Orbitスタックは、アービトラムの技術に基づいて開発者が独自のブロックチェーンを作成できるカスタマイズ可能なツールキットだ。

「アービトラムのブロックチェーンはロッテのCaliverseにとって理想的な本拠地であり、業界トップの250ミリ秒のブロックタイムを実現することで、仮想世界やゲーム体験内での高品質なパフォーマンスを保証する」とオフチェーンラボの共同創設者兼CEO、スティーブン・ゴールドフェダー(Steven Goldfeder)氏は述べたうえで、「アービトラムがロッテのCaliverseを支えることで、ゲーム内取引はオンチェーンでシームレスに統合され、トランザクションの遅延がなくなり、スムーズでコンシューマー・フレンドリーな体験をユーザーに提供できるようになる。これは、仮想世界におけるアービトラムベースのインタラクションの新たな基準となる」と付け加えた。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:CoinDeskより
|原文:Arbitrum Awards Biggest-Ever Foundation Grant to Lotte, the South Korean Megacorp
※編集部より:元記事の修正を反映して、更新しました。
CoinDeskによる訂正の説明:アービトラム財団の関係者は当初、CoinDeskにロッテに『過去最大』の助成金を授与したと述べた。本記事公開後、財団は誤りだったと述べ、取引はまだ最終決定されていないと説明した。