- ビット・マイニング(BIT Mining)は2024年12月初旬、エチオピアで51メガワットの施設と1万8000台のビットコインマイニング機器を手に入れた。
- エチオピアの電力コストは非常に安価なため、型落ちの機器を再利用できる。
- エチオピアは、ビットコインのハッシュレートの1.5%を占めている。
エチオピアは、アフリカの角(ツノ)に位置し、6つの国と接している。人口は約1億2000万人、アフリカ大陸で2番目に多く、GDPは1630億ドル(約25兆3500憶円、1ドル155円換算)、ウクライナ、モロッコ、スロバキア、クウェートと同規模だ。
一方で、内戦が続いており、いくつかの地域は依然として反政府勢力、例えば、民族主義的なアムハラ民兵組織ファノなどの支配下にある。
こうした状況にもかかわらず、中国のビットコイン(BTC)マイニング企業ビット・マイニングは、これまでオハイオ州アクロンで展開していた事業をエチオピアに拡大する。1400万ドル(約21億8000万円)の取引で、51メガワット(MW)相当の施設と約1万8000台のマイニング機器を取得する。
実際、同社チーフエコノミストのユーウェイ・ヤン(Youwei Yang)博士によれば、エチオピアのきわめて安価な電力コストは、マイニング機器の寿命を延ばすというユニークな機会となる。同氏は、激しい競争のためアメリカではマイニング機器は通常、約2年〜2年半で使い物にならなくなると述べた。
「オハイオ州の電力価格はエチオピアよりも70%ほど高く、ときには2倍近くになる。そのため、最新世代やその直前の世代など、最新鋭のASIC(特定用途向け集積回路)しか稼働させることができない」と同氏は語った。
「今は、旧世代のマシンをエチオピアに移すことができる」
これは重要なことだ。というのも、ライトコイン(LTC)やドージコイン(DOGE)のマイニングに加えて、同社はホスティング事業を行っており、さまざまな顧客向けにマイニング施設を運営しているからだ。最新鋭のマイニング機器は高価で、小売価格で1台あたり5000ドル(約77万円)〜1万ドル(約155万円)になる。投資家は当然、こうした高価な機器を内戦が続く地域に送ることを躊躇する。
そこで、同社の戦略は、新しいマイニングマシンをアメリカに設置し、古いマシンをエチオピアに送るというものだ。これは好循環を生み出す。同社がアメリカでのみ事業を展開していた場合よりも、投資家は大きなリターンを得られるようになる。そしてそれがさらなる資本を呼び寄せるとヤン氏は述べた。
「マイニングマシンをエチオピアに移動させることで、少なくともあと2年間は使えるようになる。その後はたぶん、完全に使えなくなるだろう」
エチオピアでのビットコインマイニング
では、なぜエチオピアなのか? ひとつには、同国の電力規格は中国と似ているため、ビット・マイニングはエンジニアリングチームの専門知識を活用し、中国でビットコインマイニングが禁止される前に使用していた一部の電気設備を再利用できることがある。
加えてエチオピアは水力発電が盛んだ。その一部は中国からの投資によるもので、近年、中国は3000を超えるプロジェクトに85億ドル(約1兆3200億円)を投資している。例えば、中国は大エチオピア・ルネサンスダム(Grand Ethiopian Renaissance Dam:GERD)の建設資金を支援している。完成すればアフリカ最大のダムとなり、5000MW以上の発電能力を持つ。
しかし、エチオピアの発電量のすべてが活用されているわけではまだなく、これがビットコインマイニングにとって好機となっている。さらに政府がマイニング産業を支援していることが状況を後押ししている。実際、ハッシュレート・インデックス(Hashrate Index)によれば、エチオピアはビットコインのハッシュレート全体の1.5%を担っており、ノルウェーと同規模の貢献をネットワークに果たしている。
とはいえ、エチオピア連邦政府は国内全域をコントロールできていない。2020〜2022年にかけて、政府とティグレ人民解放戦線との内戦で数十万人が死亡した。また1970年代から紛争が継続しているオロモ解放軍と2024年12月に和平条約を結んだばかりだ。
エチオピアの不安定な情勢に対する懸念について、ヤン氏は「調査やリサーチを行い、また数回現地を訪問して、エチオピアが安定した場所であることを確認した」と答えた。また不測の事態を避けるため、新たに施設を建設するのではなく、既存施設を購入する決定を行ったと述べた。
それでも、アメリカや中国からエチオピアに移住するよう、従業員を説得することは難しかったと同氏は述べた。
「誰もが当然、より豊かで安全な国に住み、働きたいと思うものだ」
現在、施設の運営チームの3分の1は外国人だが、将来的にはチームの大部分が地元の人々で構成されることになると同氏は語った。
その一方で同社は、エチオピアでの新たな投資を探している。エネルギー・インフラ・プロジェクトや人工知能(AI)用のデータセンター、さらなるビットコインマイニング施設などだ。
「エチオピアにはチャンスがたくさんある」とヤン氏。
「AIについては、ここ6〜9カ月研究を続けている。我々には電力があり、人材もあり、実行する能力がある。しかし、(プロセス全体は)大きな資本を必要とする。アメリカでの建設は非常に高価で、試験的な取り組みは非常に難しい。だが、エチオピアでははるかに簡単だ」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Ethiopian flag (Wesley Tingey, Unsplash)
|原文:How Ethiopia’s Low Energy Costs Allow BIT Mining to Recycle its Bitcoin Machines