イーサリアムは2025年、ビットコインを上回る可能性がある

2025年、イーサリアムはビットコインをリードする兆しが強まっていると、CMEグループのパヤル・シャー(Payal Shah)氏は語る。

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イーサリアム(ETH)は2024年の大半、他の暗号資産(仮想通貨)に後れを取っていたが、現在はビットコイン(BTC)の記録的な高騰に端を発した市場の上昇に加わり、12月には4000ドル(約63万円、1ドル158円換算)の大台を超えた。しかし、過去最高値の4900ドル(約77万円)にはまだ届いていない。

2024年、イーサリアムの上昇率は約53%で、ビットコインの113%には及ばなかった。だが米大統領選以降、39%上昇し、ビットコインの35%を上回っている。トランプ次期大統領が掲げる暗号資産推進政策に対する市場の楽観的な見方によって復活の兆しを見せている。

[2024年のイーサリアム価格推移:CME Group]

この楽観的な見方を後押ししている他の主な要因には、堅調なステーキング、安定した取引手数料、特にETF(上場投資信託)を通じた機関投資家の関心の高まりなどがある。

イーサリアムの未来

2024年、年初の取引高は低調だったが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のイーサリアム先物はリスク管理の主要な手段として利用された。年央にイーサリアム現物ETFの取引が始まり、年末に向けて市場にボラティリティが戻ったことがその背景にあった。

2024年、イーサリアムとマイクロイーサリアム先物の間で約1200万件、2560億ドルが取引された。名目取引高の39%は第4四半期に集中し、大統領選の結果に反応した暗号資産市場は、楽観的な市場心理を示している。

[CME Group]

大口の建玉保有者──CFTC(米商品先物取引委員会)によって25枚以上の先物を保有すると認定された事業者──は12月、毎週の記録を更新した。これは、イーサリアムのリスクを管理するために規制されたソリューションへの顧客の関心が高まっていることを示している。

イーサリアム/ビットコイン・レシオ

ETH/BTCレシオ(イーサリアムのビットコインに対する価格比率)は、1イーサリアムを購入するために必要なビットコインの数を示す。11月20日に過去最小レベルの0.032857を記録したが、規制環境の改善と機関投資家による採用の増加が見込まれるなかで、底を打った可能性がある。

[2024年のETH/BTCレシオ:CME Group]

イーサリアム反発の背景

1. イーサリアムETFがビットコインETFを上回る

アメリカ上場のイーサリアム現物ETFは、2024年7月のスタート以来、累計5億7700万ドルの純流入を記録し、さまざまなETFの中で成功を収めている。11月25〜29日、イーサリアムETFはビットコインETFの日次流入額を上回り、4億6700万ドルの純流入(うち1日だけで純流入額4億2800万ドル)を記録し、投資家心理の変化を表した。

ビットコインETFとイーサリアムETFの承認は、デジタル資産のメインストリームへの普及における大きな節目となる。今後、イーサリアムのステーキング報酬をETFに組み込むことを規制当局が承認すれば、機関投資家の関心はさらに高まる可能性がある。

2.アルトシーズン

イーサリアムがビットコインに対して低調なパフォーマンスを続けた数カ月を経て、トレーダーはETH/BTCレシオの低い水準を、ビットコインからイーサリアムや他のアルトコインへの段階的なローテーションの機会と捉えているかもしれない。

通常、ビットコインが市場の上昇を牽引し、その後、イーサリアムや他のアルトコインが追随すると、ビットコインは調整局面を迎える。今回のサイクルでもこの傾向は当てはまり、ビットコインドミナンスは10月の61.7%から11月には57.4%、12月には56.5%に低下した。アルトコインは勢いを増し、アルトシーズンの可能性を示している。

[2024年のビットコインドミナンス:CME Group]

3.ステーキング報酬

イーサリアム投資家は、イーサリアムをブロックチェーンにステーキングして報酬を獲得することで、追加のリターンを得ることができる。記事執筆時点では、イーサリアム供給量の28%がステーキングされ、年間報酬率は平均3%となっている。トランプ新政権のもと、金利の利下げが予想され、ブロックチェーンのアップグレードにより、ステーキング報酬が増加する可能性がある。

4.DeFi、スマートコントラクト、Dapps、NFT

イーサリアムの価値はデジタル通貨にとどまらず、分散型金融(DeFi)、分散型アプリ(Dapps)、スマートコントラクト、NFT、トークン化資産、Web3アプリを構築するための主要ブロックチェーンとなっていることにある。

DefiLlamaによると、イーサリアムベースのDeFiプロジェクトのTVL(預かり資産)はここ数週間で増加し、694億ドルに達した。この増加は、金融イノベーションプラットフォームとして、イーサリアムに対する信頼が高まっていることを示している。

5.イーサリアムのアップグレード

2024年3月24日、イーサリアムブロックチェーンはデンクン(Dencun)アップグレードを実施し、レイヤー2の取引コストを削減し、レイヤー1に送信できる1秒あたりのトランザクション数(TPS)を増加させた。レイヤー2の普及は、この1年で顕著に変化した。さらに、2025年第1四半期に予定されているペクトラ(Pectra)アップグレードは、イーサリアム改善提案(EIP)の数において過去最大級のハードフォークとなる。プロトコルの効率性向上、ユーザー体験の向上、データ容量の拡大を目指すとともに、将来のスケーラビリティ強化への道を開く。

結論

トランプ政権が何をもたらすのか、暗号資産市場にどのような影響を与えるのかに注目が集まっている。イーサリアムETFに対する機関投資家の関心の高まりは、かつてはビットコインに集中していた機関投資家のポートフォリオが多様化しつつあることを示しているのかもしれない。2025年、ステーキング報酬の可能性とDeFiやNFTのイノベーションにおけるイーサリアムの中心的な役割が需要をさらに高めるかもしれない。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstoc
|原文:Why Ether Could Outperform Bitcoin in 2025