- アジアの小国ブータンは11億ドル(約1740億円、1ドル158円換算)以上のビットコイン(BTC)を保有し、8日には同国のある都市が暗号資産準備金戦略を採用したと発表した。
- これにより、ブータンは外国資本を誘致し、経済を強化できる可能性がある。同国は財政赤字の拡大が予想されている。
- ブータンの取り組みは、再生可能エネルギーをビットコインマイニングに利用し、暗号資産準備金戦略を採用できる他の国々にとって、先例となり得る。
南アジアの小国ブータンが暗号資産(仮想通貨)で大きな波紋を呼んでいる。
ブータンは人口約77万人、インド、中国、ネパールに囲まれた同国のある都市が暗号資産準備金戦略を採用したことで話題を呼んでいる。ビットコインのほか、イーサリアム(ETH)、バイナンスのBNBを準備金として備蓄するという。
エルサルバドルはすでに、ビットコインを国の準備金に組み入れており、アメリカをはじめ複数の国も、堅調な自国経済をさらに強化するために同様の取り組みを検討している。
だがブータンは、暗号資産を国の準備金戦略の一部とすることで、経済に大きな影響を与え得る小国にとって、先例となる可能性がある。
「彼ら(ブータン)は、暗号資産に対するグローバルな関心の高まりを活用するために外国企業を誘致することで、デジタル資産で何が可能かを世界に示すために準備を整えている」と、非営利団体Identity.comのエグゼクティブ・ディレクター、フィリップ・シューメーカー(Phillip Shoemaker)氏は述べた。同団体は、分散型ID認証サービスを提供している。
「この動きは、世界中の政府、特に為替レートの変動や地政学上の不透明さに左右されやすい小国に同様の取り組むを生む可能性があると考えている」
外国投資を誘致
2024年5月の世界銀行のレポートによると、ブータンは堅固な経済基盤を持っているものの、財政赤字の拡大が予想され、依然として下振れリスクが存在する。経済成長を確実なものにするには、多くの外国投資を誘致する必要があるとレポートは述べている。
ブータンはこれを実行した。「マインドフルネス、サステナビリティ、革イノベーション」という目標の一環として暗号資産を受け入れるエリア、Gelephu Mindfulness City(ゲレフー・マインドフルネス・シティ)を建設した。
「この経済特区は外国投資を誘致することをサポートするため、デジタル資産の蓄積は国際レベルで非常に魅力的なものとなるだろう」とシューメーカー氏は述べた。
ブータンはこうした動きに適していた。同国には技術的に実現可能な水力発電の潜在能力が2万4000メガワット相当存在すると推定されているが、そのうち開発されているのはわずか7%に過ぎない。
「水力発電から大量の電力を得ているので、結局のところ、マイニングに注力することは理にかなっています」
先例となるブータン
ビットコインマイニングには膨大なエネルギーが必要で、環境への悪影響が懸念されている。しかし、水力発電の利用は、こうした課題を解決する。コスト効率がはるかに高く、マイニングによる二酸化炭素排出量も削減できるためだ。
Forbes(フォーブス)の記事によると、2019年4月、ブータンは大量の水力発電を利用してビットコインマイニングを開始した。現在、同国は約11億ドル相当の1万1000BTC以上を保有しているとArkham(アーカム)のデータは示している。つまり、ブータンはBitcoinTreasuriesのデータによると、ビットコインを準備金として保有する国の中で世界トップ5に入っている。
「特にビットコインマイニングは、さまざまな再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用するための優れた手段だ」とSyscoinのコア開発者でSyscoin財団の理事長を務めるジャグディープ・シドゥ(Jagdeep Sidhu)氏は語る。
「他の政府、特にエネルギー資源が豊富で、無駄にしてしまうような国では、ビットコイン準備金を保有する方法としてブータンを先例とするケースが増えていくだろう」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN
|画像:Mayukh Karmakar/Unsplash
|原文:Bhutan’s Crypto Reserve Could Pave Way for Economic Growth in Other Countries