2024年は、11月のトランプ氏の大統領選挙勝利を受け、仮想通貨の価格が急騰。代表的な仮想通貨のひとつであるビットコインが11月10日に初めての8万ドル(約1200万円)を上回った仮想通貨市場は、その後も勢いを保ち、昨年ついに10万ドル(約1500万円)を突破するなど、大きな変化のあった1年となった。
過去2年ほどは、大手暗号資産業者FTXの破綻等もあり、市場が活発でなかったため取引を止めていたものの、ここに来て取引を再開した人も多いかもしれない。そこで注意したいのが税金の問題だ。
仮想通貨取引で一定の所得(利益)を得た場合、3月中旬(2025年は、3/17日まで)までに確定申告書の提出および追加で納付が必要となった額の納税が必要となる。「年末調整を行っている会社員等であっても」である。
この記事では、「いくら以上、仮想通貨の取引による所得があった場合、確定申告が必要となるのか」その判定の基準を説明したうえで、税金の基礎知識、確定申告の具体的な手順とスケジュールについて紹介する。
ぜひ確定申告・納税の期限前にご自身が対象なのかの確認、および必要な場合の準備に活用してほしい。
仮想通貨(暗号資産)取引でいくらの所得がある場合、確定申告が必要となるのか。
仮想通貨の所得は、税務上「雑所得」に分類され、会社員や公務員の場合、仮想通貨所得を含む雑所得の合計所得が20万円を超える場合、確定申告が必要となる。
また、学生など給与所得がない人は、すべての所得の合計が48万円を超えた段階で確定申告が必要となる。
このように税法上の区分によって必要となる金額が異なる点には注意が必要だ。
さらに、次の条件に該当する場合は、仮想通貨所得に関係なく確定申告が必要となり、その金額を申告する必要がある。
- 給与収入が年間2,000万円を超える人
- 給与所得や退職所得以外の所得金額(仮想通貨による所得を含む)の合計額が20万円を超えている人
- 給与を2か所以上からもらっている人
- 住宅ローン控除の適用を受ける人(初年度のみ)
- 雑損控除、医療費控除、寄付控除の適用を受ける人
- 配当控除の適用を受ける人
- 同族会社の役員で、給与以外に貸付金の利子や資産の賃貸料を受けている人
なお、未申告や申告漏れが発覚した場合、追徴課税(延滞税や過少申告加算税、無申告加算税など)を支払う事となる。
仮想通貨所得の分類:雑所得とは?
確定申告の方法について説明する前に、基本的な仮想通貨の税金の仕組みについて説明する。
まず、上述のとおり仮想通貨による所得は原則として「雑所得」に分類され、総合課税の対象となる。
総合課税とは、対象となる所得と合算し、控除を差いた額に対して税率が決まる仕組みである。そして総合課税では所得に応じて税率が決まる累進課税制(具体的には超過累進課税制度)が採用されており、5%~45%の間で税率が変動する。
これに「住民税」や「復興特別所得税」が加わって、最大55%までになる。
所得税の税率
なお、仮想通貨取引で損失が発生した場合、この損失は事業所得の給与所得などの他の所得区分の所得と相殺することはできない。
また、たとえば上場株式の売買によって生じた損失は3年繰り越すことができ、翌年以降に発生した利益から控除することができるが、仮想通貨の雑所得では、このような赤字繰り越し制度はないため注意が必要だ。
仮想通貨(暗号資産)取引の所得・税金の計算方法
仮想通貨取引の税金の算出には、まずは仮想通貨の実現損益(所得)を計算する必要がある。
仮想通貨の所得は、通貨ごとに期間内全体の購入金額合計を購入数量合計で割って算出する「総平均法」もしくは通貨ごとに仮想通貨の購入する度、取得価額を算出する「移動平均法」のいずれかの計算方法で算出する。
※国税庁に届けを出さない限り、個人の場合は「総平均法」が適用される。
計算方法について詳しく知りたい方は「総平均法・移動平均法どちらがお得?自分に合う仮想通貨の損益計算法」も併せてご覧いただきたい
所得が算出できたら、上述のとおり、その他所得と合算し、税率のテーブルと照らし合わせることで概算の総支払税額が算出できる。
なお、クリプタクトの仮想通貨の税金シミュレーションツールを使えば、仮想通貨の所得に対して払った税額の概算も知ることも可能だ。
なお、仮想通貨取引によって損益が発生するのは売却して日本円を得たときだけではない。その他の仮想通貨との交換やステーキングやレンディングで仮想通貨を無償で得た場合、無料のエアドロップで得た通貨を売却したときなども対象となる。
所得が発生するタイミングに誤認がないか確認することをお勧めしたい。
仮想通貨の確定申告のやり方
確定申告の手順は、以下の3つのステップで完了する
- 仮想通貨の所得の算出
- 確定申告書の作成・提出
- 税金の納付
それぞれ詳しく見て行こう
- 仮想通貨の所得の算出
上述のとおりまずは仮想通貨の所得の算出が必要だ。
ひとつの取引所でのみ取引している場合や、通貨の種類や取引量が少ない場合、国税庁から配布されているエクセル計算書を使って自分で計算することも可能だが、一定数の取引がある場合、自身で行う手間が非常に大きいというのがデメリットだ。
その点、クリプタクトのような仮想通貨の損益計算ツールを使えば、ファイルのアップロードやAPI連携、ウォレット接続をするだけで取引履歴を反映し自動で計算してくれるのでこうした手間やミスを最小化できるのでおすすめだ。
- 確定申告書の作成・提出
確定申告は紙での申告とオンライン申告(e-Tax)2つの方法がある。
紙での申告の場合、郵送に手間や時間がかかることもあり昨今では多くの人がオンライン申告(e-Tax)を選択している。
いずれにおいても仮想通貨の所得を雑所得の欄に記入し、その他の項目を追加して提出する。
具体的な申請手順についてはこちらの記事でも紹介しているため参考にしていただきたい。
- 税金の納付
納付期限は申告期限と同じで2024年分については、2025年3月17日までとなっている。
納税方法はいくつか方法があり、口座振替やe-Taxでの電子納税、クレジットカード決済などが可能だ。
納付額が30万円以下であれば、コンビニ払いやPayPay・メルペイ・楽天ペイなどのスマホ決済アプリからでも支払いも可能である。
なお、実質的な支払い期限をどうしても延ばしたい場合、振替納税を選択すれば、4月中旬から下旬に口座から引き落とされるので、約1ヶ月延長できる。
実際に仮想通貨の所得以外特に申告するものがなければ、e-Taxでの申請自体はそこまで難しいものではない。
実際に手間と時間がかかり、とくに初めての確定申告となる人にとって不安になるが仮想通貨の所得の計算であろう。
クリプタクトのような仮想通貨の損益計算ツールの使用や税理士への依頼は多少なりともコストがかかるものの、作業の手間を減らし、また誤りが生じにくい方法としてもおすすめなので、ぜひ活用しながら確定申告の作業を進めていただきたい。
|文:伊藤里香/pafin編集
|監修:村上裕一
村上裕一公認会計士事務所・代表税理士。大手監査法人・税理士法人での豊富な経験を積んだ後、Web3(ブロックチェーン、暗号資産・仮想通貨、NFT、ブロックチェーンなど)の専門税理士として、多くのクライアント(個人及び企業)を支援。株式会社pafinの仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のブログも監修。監修した記事は、「仮想通貨(暗号資産)の税金基礎と計算方法、対策も解説」など。
クリプタクト:https://www.cryptact.com/
defitact:https://www.defitact.com/
※編集部注:CoinDesk JAPANは「暗号資産」を表記として使っていますが、ここでは原文を尊重しています。