ステーブルコインの流動性が枯渇──米CPI発表を前にビットコイン強気回復に疑問符
  • 上位4つのステーブルコインの供給量は、30日間にわたってほとんど変化がなく安定している。
  • これは、11月から12月のラリー中に観察された流動性の急増とは対照的だ。
  • 新たなステーブルコインの流動性が枯渇しているため、アメリカの消費者物価指数(CPI)の発表後に再びボラティリティが上昇するリスクが高まっている。

ビットコイン(BTC)が1月13日以降、9万ドルを下回る水準から急速に回復していることは、強気な見通しを示唆している。しかし、これらの利益の持続可能性に疑問を投げかける要因がひとつあり、15日に発表されるアメリカのインフレデータが予想よりも高い数値となった場合、大幅な下落の可能性を示唆している。

その要因は、足踏み状態にある主要なステーブルコインの供給であり、これは市場への新たな資本流入の欠如を示唆している。Glassnodeが追跡しているデータによると、市場価値で上位4つのステーブルコイン(USDTUSDCBUSDDAI)の供給量は1890億ドル(約29兆2950億円、1ドル=155円換算)前後で安定しており、30日間の変動はわずか0.37%である。

ステーブルコインとは、米ドルなどの資産に価値を連動させた暗号資産(仮想通貨)だ。これらのトークンは暗号資産の購入資金として広く利用されており、2022年の弱気相場では安全な避難先として機能した。

ステーブルコインの最近の新たな流動性の減速は、アメリカの消費者物価指数(CPI)の発表を控え、買い環境が弱まっていることを示唆しており、昨年11月から12月のラリーと年初に観察されたステーブルコインの流動性の拡大とは対照的だ。

「2024年後半のラリーでは、より小さな価格上昇のためにほぼ2倍の資本流入が必要だったという事実は、投機的な需要と流動性主導のモメンタムがそれ以来冷え込んでいることを裏付けている」と、Glassnodeはテレグラムで述べた。

協定世界時(UTC)1月15日午後1時半(日本時間午後10時半)に発表されるデータでは、12月の生活費が前月比で0.3%上昇し、11月のペースとほぼ同じであることが示される見通しだ。前年同月比では11月の2.75%から2.9%に上昇すると見られている。変動の激しい食料品とエネルギーの要素を除外したコアCPIは、前月比で0.2%、前年同月比で3.3%上昇すると予測されている。

予想を上回るコアCPIは、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が予想よりも積極的な金利引き下げを行わないのではないかという最近の懸念を強める可能性が高い。こうした懸念は、10日の雇用統計の大幅な改善によって強まり、13日にBTCが9万ドルを下回る原因となった。

上位4つのステーブルコイン、USDT、USDC、BUSD、DAIの30日間の供給量推移。:Glassnode]

ステーブルコインの流動性が枯渇したことは、暗号資産の購入に投入される待機資金としてしばしば喧伝されてきたが、11月と12月に記録された273億ドルの流入額とは対照的であり、この流入額が7万ドルから10万8000ドル超へのBTCの強気相場を部分的に後押しした。

一方、価格が7万ドル近くまで上昇し、7万ドルを超えた2024年第1四半期には、146.8億ドルのステーブルコインへの流入が確認された。

暗号資産の購入に投入される待機資金としてしばしば喧伝されてきたステーブルコインの流動性が枯渇したことは、11月と12月に記録された273億ドル(約4兆2315億円)の流入とは対照的だ。この流入は、7万ドルから10万8000ドル超へのBTCの強気相場を部分的に後押しした。

一方、価格が70%近く上昇し、7万ドルを超えた2024年第1四半期には、146億8000万ドル(約2兆2754億円)のステーブルコインへの流入が確認された。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Stalled Stablecoin Supply Casts Doubt on BTC’s Bullish Recovery as U.S. Inflation Report Looms