企業が採用すべきブロックチェーンを徹底討論!【N.Avenue club 2期7回ラウンドテーブル・レポート】

2025年は、ブロックチェーンを基盤としたWeb3事業の発展が一層注目される年になるだろう。

だが次世代ビジネスを支えるブロックチェーン技術には、さまざまな種類があり、企業にとって、どのチェーンを採用すべきかはきわめて難しい問題だ。

たとえば「高頻度の取引に対応できるか?」「パブリックチェーンとプライベートチェーンを組み合わせたハイブリッド設計は可能か?」「開発者コミュニティの規模やサポート体制は十分か?」……企業はこうした点を踏まえた上で、「ビジネスニーズに合ったチェーン選び」をする必要がある。

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N.Avenue clubは、毎月開催しているラウンドテーブルのテーマに、この問題を採用。1月16に開催した2期7回ラウンドテーブルで、「企業が採用すべきブロックチェーンを徹底討論!」として、企業にとっての最適な選択肢を考察した。N.Avenue clubは、Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、法人会員制の国内最大Web3ビジネスコミュニティだ。

登壇したのは、KPMGコンサルティングの山本将道氏、Pheasant Networkの田上智裕CEO、Superteam Japanの大木悠氏(Country Lead)、アバラボの平田路依氏(Head of Japan)、Aptos LabsのThomas Chou氏(Head of Marketing)、Japan Open Chainの近藤秀和氏(Founder)。

ラウンドテーブルは、会員限定のクローズドな開催のため、ここでは当日のプレゼンテーションや議論の様子について、概要を紹介する。

企業が採用すべきブロックチェーンを徹底討論!

冒頭、イントロセッションに登壇したのは、KPMGコンサルティング Senior Manager、Edge Incubation & Innovation Web3 Labの山本将道氏。

山本氏は、ブロックチェーンの特徴を紹介した上で、ブロックチェーンのトリレンマ(安全性、性能・拡張性、分散性の3つを同時に実現するのは難しい状態・事象のこと)に言及。「ブロックチェーンの変遷を踏まえつつ、トリレンマをどう解消するか、自社で使うには、どのブロックチェーンが適しているのか考えることになる」と述べるなど、この後続く議論を前に論点を整理した。

「レイヤー2は早くて安いイーサリアム」Pheasant Network 田上氏

続くセッションでは、レイヤー2間の相互接続サービスを提供するPheasant Networkの田上智裕CEOが登壇。主にレイヤー2の概要や特徴、誕生の経緯などを説明した。

田上氏は、イーサリアムが直面した課題として、コストが高いことと決済スピードが遅いことがあったとして、「レイヤー2は早くて安いイーサリアム」と述べるなどわかりやすく解説。代表的なレイヤー2ソリューションの特徴についても話した。

「ステーブルコインのユースケースが日本でも生まれる」Superteam Japan 大木氏

次に登壇したのは、日本のソラナコミュニティをサポートするSuperteam Japanの大木悠氏。ソラナを「マスアダプションのために構築されたレイヤー1ブロックチェーン」と説明し、その特徴や強みを紹介した。ソラナといえば、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)に欠かせない存在で、地図制作のハイブマッパー(Hivemapper)から通信インフラのヘリウム(Helium)まで、有名なDePINプロジェクトの多くはソラナ上に構築されている。

大木氏は2025年に注目している領域、注力したい領域として、「ステーブルコインのユースケースが日本でも生まれるのではないか」「日本に来たがっているソラナの優秀な人材を日本に呼び寄せ、地方創生にもつなげたい」などとの構想を明かした。

カリフォルニアの自動車登録、PontaのMUGEN Chainなどで活用:アバラボ 平田氏

アバラボの平田路依氏(Head of Japan)はアバランチについて、マルチチェーンを謳ったブロックチェーンの中ではコスモス(Cosmos)、ポルカドット(Polkadot)に続くチェーンと述べ、その特徴として、最初から複数のチェーンを内包できること、分散性が高いこと、記録の巻き戻り(Re-org)が発生しないことなどをあげた。

またゲームや金融など、さまざまな業界でのユースケースにも触れ、例として、米カリフォルニア州の自動車登録証、Ponta(ポンタ)のMUGEN Chainなどを紹介した。

ハッシュパレットを買収、今後の連携について解説:Aptos Labs・Chou氏

Aptos LabsのThomas Chou(トーマス・チョウ)氏(Head of Marketing)は、アプトスの成り立ちを説明。アプトスは、メタ(旧フェイスブック)のグローバルステーブルコイン構想「Libra(リブラ)」(のちに「Diem(ディエム)」と改名)の流れを組むレイヤー1ブロックチェーンだ。

Aptos Labsは昨年、ハッシュポート(HashPort)の子会社で、パレットチェーンの開発元であるハッシュパレットを買収している。チョウ氏は、アプトスのグローバルでのパートナーシップやエコシステムについて話したほか、ハッシュポートとの今後の連携についても説明した。

12月にトークンを上場、スピードと信頼性が特徴:Japan Open Chain 近藤氏

最後に登壇したのは、Japan Open Chainの近藤秀和氏(Founder)。近藤氏は、イーサリアム完全互換の日本発レイヤー1チェーンであるJapan Open Chainを立ち上げる以前に、自身が代表を務めるG.U.Groupで、ブロックチェーンが簡単に構築できるサービスを作ったものの、時期尚早で広がらなかったというエピソードを披露した。

近藤氏は、Japan Open Chainは処理速度が速いことが特徴だと説明。1秒あたりの処理トランザクション数(TPS)はイーサリアムの10TPSに対し、Japan Open Chainは2000TPSにのぼり、今後1万TPSまで上げる考えを示した。またコンソーシアム型であり、バリデーターの信頼性の高さがチェーンのそれに直結することをあげた。

ブロックチェーン活用で可能性を広げる企業や業界は?

プレゼン終了後、参加者は7つのテーブルに分かれて、ディスカッションを行った。テーマは「最適なブロックチェーンを選定するための重要要素と課題」と「ブロックチェーン活用で可能性を広げる企業や業界は?」。数人ずつのグループを作り、いずれかのテーマを選んでディスカッションを行い、その内容を発表した。

たとえば、ブロックチェーンの活用法として、マイナンバーカードのシステム、ふるさと納税との連携、ツーリズム・インバウンドでの活用などがあげられた。

「N.Avenue club」は毎月、ラウンドテーブルをクローズドな環境で開催している。海外の識者がオンライン登壇する回もあり、国内外の先進的な取り組みが紹介されているほか、プレゼンの後には、Web3に携わる会員企業の参加者らが、最新の情報や議論を盛んに交わしている。

今後も毎月開催の予定で、事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンに参加を呼び掛けている。

|文:瑞澤 圭
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:多田圭佑