- 暗号資産(仮想通貨)会社サークル(Circle)は、利回り付き担保を推進するための動きとして、13億ドル(約2028億円、1ドル=156円換算)規模のトークン化されたマネー・マーケット・ファンド「USYC」の発行元であるハッシュノート(Hashnote)を買収した。
- この買収は、暗号資産界の2つの最も人気のトレンドであるステーブルコインとトークン化の密接な関係を浮き彫りにしている。
- サークル社はまた、自社のステーブルコインUSDコイン(USDC)とUSYCの流動性と決済を促進するためにカンバーランドDRW(Cumberland DRW)と契約を結び、USDCを機関投資家に特化したカントン・ネットワーク(Canton Network)に導入すると述べた。
時価総額480億ドルのステーブルコインUSDCを手がけるサークル社は1月21日、トークン化された現実資産(RWA)発行会社のハッシュノートを買収したと発表した。
サークル社の広報担当者がCoinDeskに語ったところによると、両社は21日午前に契約を締結し、スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会で発表された。両社は買収価格について詳細を明らかにはしなかった。
プレスリリースによると、サークル社はUSYCを同社の旗艦ステーブルコインであるUSDCと統合し、ブロックチェーン上で現金と利回り付き担保の交換を可能にすることを目指している。
ハッシュノートは時価総額13億ドルのUSYCトークンを発行している。rwa.xyzのデータによると、同トークンは昨年、市場で最大のトークン化された米国債商品となるほどの大成長を遂げた。
サークル社のCEOであるジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は、今回の買収は伝統的な金融構造をブロックチェーンベースの市場のスピードと透明性に合わせるための重要な一歩であると述べ、次のように続けた。
「これは、機関投資家への普及にますます動かされ、参加者がTradFi(伝統的金融)で一般的な市場構造をますます期待するようになっている市場にとって、大きな価値を解き放つものである」
サークル社は昨年、株式公開の計画を発表し、暗号資産業界は株式公開が今年中に行われることを広く期待している。
トークン化とステーブルコイン
この買収は、暗号資産界で最も人気のトレンドの2つ、ステーブルコインとトークン化の相乗効果を浮き彫りにするものだ。サークル社にとって主要な競合であるテザー(Tether)社は昨年、トークン化プラットフォームを立ち上げた。
ステーブルコインは、価格が主に米ドルにペッグされた暗号資産であり、資産クラスとしては2000億ドル規模。トークン化の取り組みにおいて重要なインフラの一部である。法定通貨とデジタル資産の橋渡し役として使用され、ブロックチェーン上の取引決済に広く利用されている。
国債やマネー・マーケット・ファンドのようなトークン化されたRWAは、取引の担保として巧みな投資家や資産運用会社の間で急速に人気を集めている。
伝統的市場とは異なり、ブロックチェーンベースの資産は透明性、アクセス性、24時間体制での決済を約束する。また、国債が裏付けするトークンは、投資家が取引の担保や証拠金とし使いながら利回りを得ることを可能にし、法定通貨やステーブルコインを担保とする取引に比べてリターンを高める。
例えば、シンガポールを拠点とするヘッジファンドのQCPキャピタル(QCP Capital)は1月、ブラックロック(BlackRock)とセキュリタイズ(Securitize)が発行したマネー・マーケット・ファンド・トークンであるBUIDLを使って、ビットコイン(BTC)のベーシストレードを実行した。
USDCをカントン・ネットワークへ
サークル社はまた、流動性を提供し、USDCとUSYCの決済を促進するために、DRW系列の暗号資産取引会社でありマーケットメーカーであるカンバーランドと契約を結んだと発表した。このパートナーシップは、取引所やカストディアルプラットフォームの担保としてUSYCの利用を拡大することを目的としている。
さらにサークル社は、伝統的な金融機関が現実資産の取引に使用するブロックチェーンであるカントン・ネットワークにUSDCを展開する計画を打ち出した。カントンとの統合は、現金と担保の間の一定の流動性を可能にし、分散型市場と伝統的市場間のシームレスな移動を可能にする。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:サークル社のジェレミー・アレールCEO(CoinDesk)
|原文:Circle Enters Tokenization Race by Acquiring Hashnote, $1.3B Real-World Asset Issuer