ビットコイン、9万9000ドルを割り込む──DeepSeekとFOMCがトランプ効果を帳消しに
  • ビットコインは1月27日に10万ドルを割り込んだ。これは、トレーダーが今年最初のアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)を前に利益確定の売りに走ったためだ。
  • トレーダーらは、1月28日から29日に予定されている2日間のFOMCでは、利下げの兆候はないと予想している。
  • 一方、トレーダーらが中国を拠点とするDeepSeekのコストと能力に関する情報を消化したため、米国株の先物は下落した。DeepSeekは、OpenAIが主導する高コストの物語を脅かす存在だ。

ビットコイン(BTC)は、今週後半に予定されている今年初のアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)を前にトレーダーが利益確定の売りに走ったことや、中国を拠点とするAI(人工知能)の強豪DeepSeekがアメリカのテクノロジーセクターのセンチメントに影響を与えたことから、1月27日に9万9000ドルを下回った。

トレーダーらは、1月28日から29日(現地時間)に予定されている2日間のFOMCで利下げの兆候は見られないと予想しており、これは通常、投資家がリスク資産を好むか、またはリスク資産から離れるかのいずれかであるため、ビットコイン価格に影響を与える。

「アメリカの経済データは、FF金利の利下げの必要性は当面低いことを示している」と、ハッシュキー・グローバル(HashKey Global)のマネージングディレクターであるベン・エルバズ(Ben El-Baz)氏は、テレグラムのメッセージでCoinDeskに語った。

「貿易戦争や関税に関する懸念は依然として残っているが、マイクロストラテジー(MicroStrategy)やドナルド・トランプ(Donald Trump)氏のワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)が暗号資産(仮想通貨)の購入を続けていることから、強気な見方は依然として強い」と述べた。

BTCは、26日に付けた10万5000ドル超の高値から6%近く下落し、27日にアジア市場が開くと急落した。この下落は、24日にトランプ大統領が6カ月以内にアメリカの業界に助言し推進するための暗号資産政策グループの設立を命じたという大きな出来事があったにもかかわらず起こった。

暗号資産市場の時価総額は8%下落し、より幅広い資産を追跡するCoinDesk20指数(CD20)は8.14%以上下落した。

これはビットコインの動きと相関関係があるアメリカの株価指数の下落を追跡したもので、27日の取引開始前には、S&P 500とナスダック100の先物が最大2.15%下落した。

懸念の多くは、アメリカのテクノロジー企業が過大評価されている可能性があることに起因している。DeepSeekの最新AIモデルは、生産コストが大幅に安く、オープンソース技術を使用して構築されており、アクセスが容易だ。

27日にCoinDeskが報じたところによると、AI業界のフォーラム「Hugging Face」に投稿されたDeepSeekのデータによると、同社のモデルは、予算600万ドル(約9億3000万円、1ドル=155円換算)、OpenAIが使用するGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)に比べてほんのわずかで構築されているにもかかわらず、OpenAIを上回る性能を示している。OpenAIは最近、評価額1570億ドル(約24兆3350億円)超で66億ドル(約1兆230億円)の資金調達ラウンドを終了したばかりだ。

OpenAIは以前、AIシステムを大規模に構築するために数兆ドルの資金提供を求めたことがあり、また、アメリカの新しいプロジェクト「スターゲート」の一環として、トランプ政権、ソフトバンク・グループ、オラクル(Oracle)などから5000億ドル(約77兆5000億円)の投資を集め、アメリカ国内にAIデータセンターを構築している。

しかし、DeepSeekによって報告されたコストと機能は、AIイノベーションには膨大な計算資源が必要だという定説を脅かすものであり、アメリカのテクノロジー企業の競争優位性を低下させ、その高い評価の持続可能性に疑問を投げかける可能性がある。これは、より広範な市場やビットコインに短期的に影響を与えるだろう。

そのため、トレーダーたちは今週、ビットコインの下落に備えて行使価格9万5000ドルのオプションを積み増しており、市場では引き続き、下落の予想が優勢であることを示している。

「アメリカ市場でビットコインの勢いが失われた後、市場が下落リスクの回避策を模索する中で、1月限の9万5000ドルの権利行使価格に対する関心が高まっている」と、シンガポールを拠点とするQCPキャピタル(QCP Capital)のトレーダーは25日に述べた。

「FOMCの前に大きなきっかけとなる材料がないため、最近の弱い消費者物価指数(CPI)が連邦準備制度理事会(FRB)の今後の政策決定にどのような影響を与えるのかがより明確になるまでは、市場はレンジ相場が続く可能性が高い」とQCPは付け加えている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Dives to Under $99K as DeepSeek, FOMC Steal Trump Effect