ディープシーク革命の真の敗者はAIトークン
- 中国のディープシークは、その超効率的なモデルによって人工知能の世界を混乱させている。ディープシークはオープンAIと競合しているが、その構築コストはごくわずかだ。
- その結果、多くのAIトークンが下落し、セクター全体がCoinDesk 20よりも大きく下落している。
- ある意味、これは暗号資産ゲームと似ている。この分野のプロジェクトは数百億ドルの時価総額を持ちながらも、ゲーマーの興味を引くゲームを開発できなかった。
人工知能(AI)トークンは27日アジア時間午前に下落した。CoinGeckoのAIカテゴリーは9%下落し、市場全体のベンチマークであるCoinDesk 20 Index(CD20)の5%下落よりも下落幅が大きかった。
暗号資産(仮想通貨)投資家は、伝統的金融の投資家と同様に、新しいAIモデルであるディープシーク(DeepSeek)が業界に与える影響を消化している可能性が高い。AI業界のフォーラムであるハギング・フェイス(Hugging Face)に投稿されたディープシークのデータによれば、そのモデルはオープンAI(OpenAI)を上回る性能を示しており、その上構築費用は600万ドル(約9億3000万円、1ドル155円換算)で、オープンAIと比べて使用するGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)がごくわずかだ。オープンAIは最近66億ドル(約1兆230億円)の資金調達ラウンドを完了し、評価額は1570億ドル(約24兆3350億円)を超えている。
永続的なGPU強気派にとって最も懸念されるのはおそらく、ディープシークが非常に効率的であるため、そのバージョンの一つがスマートフォン上でも動作可能だという点だ。
当然ながら、最もパフォーマンスが悪いAIトークンの中にはGPUへのエクスポージャーが最も大きいものが含まれている。GPUへのアクセスを容易にする時価総額が小規模なトークン、ノードAI(Nodes.AI)は、CoinGeckoのデータでは20%近く下落している。一方、同様の機能を持つ(ただし時価総額はずっと高い)Aethirは6%の下落にとどまっており、下落率はCoinDesk 20よりもやや高い程度だ。
暗号資産ゲームから得た教訓
ディープシークによって、オープンAIやエヌビディア(Nvidia)、その他のAIへと方向転換したテクノロジー大手にとって今週はストレスフルな週になるだろうが、それ以上にこれは暗号資産プロジェクトにとって差し迫った教訓でもある。数年前に暗号資産がゲームに進出したことを知る人には馴染み深いものかもしれない。
暗号資産AIプロジェクトには利用できる資本プールが存在するにもかかわらず、ディープシークが成し遂げたような革命的であったり興味深かったりするものを作り出すことができていない。
CoinGeckoから得たデータによれば、暗号資産ゲームセクター(GameFi)の価値は190億ドル(約2兆9450億円)だ。サンドボックス(Sandbox)、ガラ(GALA)、ディセントラランド(Decentraland)などのこのセクターで最大規模のプロジェクトがゲーム企業として時価総額30位以内に入ったとすれば、認知度の高いシリーズを持つ有名企業と並ぶ立派な地位を占めることになる。
しかし、こうしたプロジェクトは、伝統的企業の競合と同じ成功を収めていない。
データソースのダップレーダー(DappRadar)によれば、昨年のブロックチェーンゲームへの投資額は2020年以降で最低になった。ブロックチェーンゲームとメタバースプロジェクトへの投資額はわずか18億ドル(約2790億円)で、2023年から38%減少した。
そして、昨年にブロックチェーンゲームにおける日次ユニークアクティブウォレット数は421%増加したが、このセクターの業界内でのドミナンス(支配率)は26%から29%の間で推移していた。なお、ドミナンスのトップは分散型金融(DeFi)だ。それでも、ウォレット数から読み取れるユーザー数はスチーム(Steam)上のゲームよりも低い。
さらに、時価総額がGameFi大手と比較してごく一部である企業が出しているスチーム上のゲームのうち、より古くより人気のないものでも、フォロワーの数は勝っているものもある。数年間にわたり、多くの暗号資産ゲームは持続可能なユーザーベースを構築することに苦戦してきた。
したがって、現時点では、暗号資産は金融以外のユースケースに対応する上で課題を抱えていると言えるだろう。
|翻訳・編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:ANALYSIS: AI Tokens Are the Real Losers of the DeepSeek Revolution