予測市場は賭博ではない:暗号資産専門弁護士
![予測市場は賭博ではない:暗号資産専門弁護士](https://www.coindeskjapan.com/wp-content/uploads/2024/08/shutterstock_1815748127-768x512.jpg)
- 世界では予測市場を賭博と見なす法域があるが、ニューヨークを拠点とする暗号資産(仮想通貨)を専門に扱う弁護士であるアーロン・ブロガン(Aaron Brogan)氏は、予測市場は全く異質だと主張する。
- シンガポール、タイ、台湾はそれぞれ、賭博に関する理由でポリマーケット(Polymarket)を禁じている。
シンガポールとタイは最近、Polymarketを禁止する動きに出た。理由は、同サイトが単なるギャンブルプラットフォームに過ぎないという主張だ。
表面的には、その議論には一理あるように見える。Polymarketのスポーツ予測市場の存在は、世界中の許認可を受けたスポーツブックと競合しているように思えるからだ。
実際、予測市場に対する批判の急先鋒でさえ、選挙のようなイベントに対するヘッジ手段としての投資メカニズムには何らかの価値があると認めているが、スポーツの試合結果が選挙や戦争と同じような実質的な影響を持つわけではないと指摘する。
しかし、ニューヨークの暗号資産を専門に扱う弁護士のアーロン・ブロガン氏は、予測市場が単にWeb3版の賭博に過ぎないという議論は浅いと反論する。
「仮にあなたが賭博商品で州の免許を受けているとしよう。あなたは賭けにおける一方の立場を取ることになる。基本的には、ユーザーと対立して賭けている」とブロガンは述べる。「あなたは賭けをブックして、ユーザーに何らかのオッズを提供し、あなたが利益を上げるかどうかは、設定したオッズに依存する。」
賭博との違い
これに対して、PolymarketやKalshiといった予測市場は、中立的な仲介者として取引をマッチングし、賭けのどちらかの立場を取ることなく、取引手数料で収益を上げている。
「市場として賭けにおける一方の立場を取らないということは、基本的には関与のインセンティブを根本的に変えることであり、それがプロダクトを全体的に異なるものにしている」と同氏は述べる。氏は、予測市場プラットフォームがカジノのようにカードカウンティングのプロを追い出さない点を指摘している。カジノにとっては、カードカウンティングが数学的な優位性を失わせることになるからだ。
「予測市場は賭博ではない、なぜならそれらは賭博としての構造を為していないからだ」と同氏は語る。「予測市場は対象に対する理解を深め、ヘッジを行い、公共の利益を創出するためのツールである。これが、根本的に異質という根拠だ。」
連邦と州
アメリカでオンライン賭博の免許を取得することは非常に困難であり、オンラインスポーツベッティングの運営を始めたDraft Kingsのような新規プレーヤーやMGMのような既存企業が、なぜ賭博を禁じている州のレベルにおいて予測市場を追随しないのかという疑問が生じるかもしれない。
ブロガン氏によると、法的に鍵となるのは規制の枠組みにあるという。アメリカでは、指定契約市場(DCM)として登録された予測市場は、商品取引法(Commodity Exchange Act)によって連邦の規制を受けており、州の賭博に関連した法を上回る。
「アメリカの連邦法は州法に優先する」とブロガン氏は説明する。「商品取引法には、連邦に登録されたデリバティブに対する州規制を排除する特定の条項がある。もしあなたが連邦に登録されていれば、州はあなたを規制することができない。」
Kalshiはこの主張に自信を持っているようで、同プラットフォームは商品先物取引委員会(CFTC)への登録を積極的に進め、選挙に関連する予測市場を阻止しようとした当初の試みに対して抗った。そして最近では、スーパーボウルのベッティング市場を立ち上げている。
ただし、これは同社の競合他社には当てはまらないことかもしれない。
「例えばPolymarketはアメリカでは登録されていないため、州はその創設者に対して『あなたはスポーツベッティングを促していた。この州では犯罪だ』と法的手段を取ることができるだろう。しかし、登録を受けた取引所は連邦レベルの地位を持つことによりこうした問題に直面しない」とブロガン氏は説明する。
新規参入
PolymarketとKalshiはこの分野で最も認知度の高い名前だが、同じ道を辿る新たな参入者も多数存在している。
その中の1つが暗号資産取引所Crypto.comであり、最近、Crypto.comスポーツを立ち上げ、CFTCに対してDCMとしての自己認証を提出した。
重要なのは、ブロガン氏が説明するように、もしCFTCが自己認証書類が提出の24時間以内に行動を起こさなければ、その申請者はそれを許可されたとして扱うことができるという点だ。
「もしこれらが普及することになり、CFTCが行動を起こさなければ(現時点では何もしていない)、スポーツベッティング市場を席巻することになるだろう。これは210億ドル(約3.2兆円、1ドル=155円換算)規模の業界であり、この新しいプロダクトははるかに優れたものとなるだろう」とブロガン氏は結論付けた。
|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Prediction Markets Don’t Have a Gambling Problem, Says Crypto Attorney