金融庁の暗号資産税制の検討は「6月末を目処に結論」──衆院予算委で塩崎議員の質問に加藤財務相が答える

1月31日に開催された衆議院予算委員会で、自民党デジタル社会推進本部web3担当(web3PT前事務局長)の塩崎彰久議員が質問に立った。

塩崎議員は、アメリカのトランプ大統領が暗号資産(仮想通貨)を経済成長とイノベーションを牽引する重要な分野と位置づけていると述べ、石破茂首相に「暗号資産の活用、デジタルエコノミーの発展に向けた考え」を質問した。

石破首相は「暗号資産を含めたWeb3の健全な発展は極めて重要だ。社会問題の解決や生産性の向上のために利用者の保護を確保しながら環境整備を行っていきたい」と答えた。

続けて塩崎議員は、暗号資産の取引による所得を雑所得とする日本の税制に対して、競争力を阻害しているのではないかという意見もあるとして、「現在行われている金融庁の制度の再点検は(「暗号資産の税制見直しの検討」が明記された)与党の税制大綱を踏まえたものか、それはいつまでに結論が出るのか」と加藤勝信財務大臣に質問。

加藤財務大臣は「与党の税制大綱を踏まえたもので、必要な法整備をする、税務当局への報告義務の整備するということを前提に暗号資産について議論を行っている」と述べた。

さらに、「暗号資産については決済手段としての利用も見られるが実際には投資目的で売買されている、また、健全な発展には利用者保護が図られ、国民から広く信頼を得られることが不可欠であるという指摘もある」とし、これらを踏まえて金融庁では2025年6月末を目処に制度の検証を行うと述べた。法令上、決算手段として位置づけられている暗号資産を投資対象として扱うのが適切であるのか否かなど、今後も幅広く、さまざまな意見を聞くとしている。

税制改正をめぐる動き

暗号資産税制改正の動きは、2022年11月の自民党Web3PTによる20%申告分離課税を目指す緊急提言から本格化した。翌2023年4月、同PTは暗号資産取引の税制に関する提言を公開。6月には国税庁が暗号資産法人税ルールの一部改正を発表した。

2023年7月以降、日本ブロックチェーン協会(JBA)をはじめとする業界団体からの要望が相次いだ。2024年7月にはJBAが申告分離課税と損失繰越控除の整備を求める要望書を提出。同月末には日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)も2025年度税制改正要望書を提出している。

2024年8月、金融庁が暗号資産取引の課税上の取り扱いを検討すると表明した。10月には取引所や法律事務所から暗号資産ETF承認を含む税制改正の提言が行われた。11月には国民民主党の玉木雄一郎代表が与党に申告分離課税20%への移行を要望した。

同年12月、2025年度税制改正大綱には「暗号資産の税制見直し検討」が明記された。同月27日、金融庁は2025年度税制改正における同庁関係の主要項目を発表し、暗号資産取引の課税上の取扱いについて、「国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要がある」との方針を示した。

|文:井上 俊彦
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
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※編集部より:読みやすさを勘案し、本文を一部修正し更新しました。