香港のOSL、日本市場参入──なぜ今なのか、その狙いは【CEOインタビュー】

香港証券取引所上場の暗号資産企業OSL Group(OSLグループ)は2月6日、「OSL Group 日本市場戦略発表会」を開いた。買収した取引所CoinBest(コインベスト)の新社名や展開するサービスなどついては、以下で伝えたとおりだ。
同グループは昨年11月、コインベストの株式81.38%を購入する契約を締結。同社を子会社にしていた。発表会終了後、同グループCEOのKevin Cui(ケビン・クイ)氏に、日本市場に期待する可能性やグローバル展開に向けた戦略などについて聞いた。
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──日本の暗号資産取引所は数が多過ぎで「2社でよい」といった発言もある。大手数社が存在するなかで、どのような戦略を取り、差別化しようとしているのか。
クイ氏:暗号資産に限らず、どの市場でも競合がいるのは良いことだ。さらに、暗号資産を規制する法整備が進めば、より多くの企業が日本市場に参入しやすくなるだろう。
同様のことが実は香港でも起きており、2カ月ほど前に新たに4つの取引所が政府からライセンス認可を受けた。香港には現在、香港証券先物委員会(SFC)から認可を受けた7つの取引所がある。
一般的に、取引所は所在地がある国でビジネスをする場合が多いが、私たちは1つの国だけでなくグローバル展開をしていきたい。日本の現地チームを作り、長期的な目線で辛抱強く取り組んでいく。そのためにコインベストの力を借りたいと思った。
現地チーム構築で顧客ニーズを確保
──なぜ今、日本なのか。どのようなチャンスを見出しているのか。
クイ氏:日本の暗号資産の口座数は1100万。今後さらに成長する可能性も秘めており、同じく規制が厳しい香港で事業をしている私たちにとっては、理想的な市場と言える。厳しい規制が長く続いたため、今の日本市場をけん引しているのは10年以上の経験を持つ企業がほとんど。海外の取引所が割って入る難しさも理解しているが、現地チームを立ち上げて忍耐強く取り組んでいきたい。
規制の厳しさは共通しているが、日本は香港より人口が多く、これからマスアダプションしていく可能性が高いと思っている。株式や証券といった従来からある金融システムとデジタル資産の領域をつなぐ架け橋の役割を担いたい。

──グローバル展開のなかで日本市場はどのような役割を担うのか。日本のユーザーに伝えたいことは。
クイ氏:その国ごとに戦略を考えているが、日本は大切な市場だ。富裕層向けのOTC(相対)取引の拡大や個人投資家向けのリテール運用を進めていきたいが、そのためにも最も重要なのは、日本の現地チームを大きくし、顧客ニーズをつかむこと。
各国にビジネス展開の輪を広げ、取引の流動性を高めることをしていきたいが、そのためにも人材投資をしっかり行っていく。出たり入ったりすることはなく、腰を据えて日本市場に参入していく。
──日本で暗号資産がより普及するためには何が必要か。マスアダプションの鍵は。
クイ氏:2つ言いたい。1つ目は、まだまだ時間がかかるということ。ビットコインでさえ、誕生から16年経ってここまで来た。香港やシンガポールでは暗号資産が決済方法の一つとして受け入れられつつあるが、日本でもそうしたユースケースの登場が重要になるだろう。
2点目は、従来の金融系プロダクトのトークン化が進むこと。例えば、株がトークン化され、24時間いつでも取引できるようになれば新たな可能性が生まれるだろう。ステーブルコインの広がりにも注目している。
|インタビュー・文・写真:橋本祐樹