金連動型トークンが急騰──貿易戦争懸念で金は最高値更新
  • 金(ゴールド)価格が急騰するなか、金を裏付けとする暗号資産(仮想通貨)は市場全体をアウトパフォームしている。
  • この上昇により、これらのトークンをめぐる活動は大幅に急増したが、その普及はまだステーブルコインに大きく遅れをとっている。

貿易戦争の緊張が高まるなか、金は今年に入ってから約9.7%値上がりし、1オンスあたり2880ドルの過去最高値を記録する歴史的な上昇を見せている。それを受けて、金を裏付けとする暗号資産もより広範な市場をアウトパフォームしている。

パックスゴールド(PAXG)とテザーゴールド(XAUT)は金の上昇から大きな恩恵を受けており、どちらも金のスポット価格と並んで約10%上昇している。これらのトークンはそれぞれ、金庫に保管されている1トロイオンスの金で裏付けされている。

驚くことでないが、伝統的な市場では金鉱株も急騰している。金鉱会社を追跡するETF(上場投資信託)であるVanEck Gold Miners ETF(GDX)は今年、20%近く上昇し、S&P500をアウトパフォームしている。

このような値動きにより、金連動型トークンの供給は増加し、トークンミント(発行)は毎週数百万ドル単位でバーン(焼却)を上回っている。RWA.xyzのデータによると、金を裏付けとする暗号資産の送金は、前月比で53.7%以上も急増している。

金価格は今年、米国と中国双方からの関税の脅威、中国の春節休暇、そして需要の拡大傾向を受けて上昇している。ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)によると、昨年の金需要は4945.9トン、約4600億ドル(約70兆円、1ドル=152円換算)相当だった。

四半期ごとの金需要(World Gold Council)

一方、ほとんどの主要暗号資産は今年に入って苦戦している。ビットコイン(BTC)は3.6%の小幅な上昇にとどまり、ビットコインと金の比率(1ビットコインのドル建て価格と金の1オンス当たりのドル建て価格の比率)は12週間ぶりの低水準となった。一方、イーサリアム(ETH)は17.6%以上下落し、広範な暗号資産市場のベンチマークであるCoinDesk 20 Indexはわずか0.5%の上昇に留まっている。

分散型データネットワークPyth Networkのコントリビューター、マイク・ケーヒル(Mike Cahill)氏によれば、ゴールドの上昇とビットコインの下落は、「デジタルゴールド」というナラティブの失敗を意味するのではない」。

「今現在、貿易戦争への懸念とドル高により、伝統的なセーフヘイブンへの逃避が起きているが、流動性が戻り、リスク選好が回復すれば、ビットコインは大きく追いつく可能性がある」とケーヒル氏は語り、次のように続けた。

「賢明な投資家は、ビットコインが金に次いで最もハード(供給が限られ希少性がある)な資産であることを知っており、トランプ米大統領の暗号資産推進の姿勢が実際の政策として具体化すれば、ビットコインは大きな恩恵を受けることになる」。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Gold-Backed Cryptocurrencies Surge as Precious Metal Hits Record Amid Trade War Worry