ガートナーが発表した2019年の「戦略的テクノロジ・トレンド」のトップ10で、「ブロックチェーン」が選ばれた。アナリストのデイヴィッド・カーリー氏は「ブロックチェーンはディスラプションをもたらす可能性が高いため、今後数年以内に積極的に導入する意向がない企業であっても、CIOおよびITリーダーは評価を開始すべき」とコメントしている。
「デジタル倫理とプライバシー」「イマーシブ・エクスペリエンス」なども
トップ10に選ばれたのは、「自律的なモノ」「拡張アナリティクス」「AI主導の開発」「デジタル・ツイン」「エッジ機能の拡張」「イマーシブ・エクスペリエンス」「ブロックチェーン」「スマート・スペース」「デジタル倫理とプライバシー」「量子コンピューティング」。
「イマーシブ・エクスペリエンス」とは、没入感を覚えさせる体験のこと。VRやAR、MRなどの技術が進み、デジタル世界を知覚する方法も変化するなど、知覚とやりとりの両方のモデルが変わることで、将来のイマーシブなユーザー・エクスペリエンスが実現するとガートナーは見ている。
また「デジタル・ツイン」とは、現実世界の実体やシステムをデジタルで表現したもののこと。ガートナーは、「2020年までにコネクテッド・センサとエンドポイントの数が200億を超え、数十億のモノに対するデジタル・ツインが存在するようになる」と予測している。
「量子コンピューティング」は、ガートナーの説明では、「亜原子粒子 (電子、イオンなど) の量子状態を基盤とする、従来とは異なるタイプのコンピューティング技術」のこと。量子ビット (キュービット) と呼ばれる素子として情報を表現するため、こう呼ばれる。
並列実行と指数関数的な拡張性を可能にするため、従来のアプローチやアルゴリズムでは解決できない・解決に時間がかかり過ぎる問題の処理をする上で能力を発揮すると期待されている。
ベンダー・ロックインを助長する恐れ──ブロックチェーンの取り組み
「ブロックチェーン」についてガートナーは、既知の実体間における情報共有を強化し、物理資産およびデジタル資産の追跡とトレースの機会を改善する可能性を秘めていると評価する一方で、「ブロックチェーンによる真のディスラプションがもたらす価値を実現できず、ベンダー・ロックインを助長する恐れも」あると指摘する。
その上で、「ブロックチェーンに取り組む企業や組織は、このような制約があることを理解し、完全なブロックチェーン・ソリューションへと移行していく態勢を整える必要」があると呼び掛ける。さらに、「ブロックチェーン以外の既存テクノロジの利用を効率化および調整することで、同様の成果を達成できる可能性があることも認識すべき」と付け加える。
カーリー氏は「今後数年以内に積極的に導入する意向がない企業であっても、CIOおよびITリーダーは評価を開始すべき」とコメントしている。
「戦略的テクノロジ・トレンド」のトップ10はガートナーが10月末に公表、同社が世界中で開催している「Gartner Symposium/ITxpo 2018」が日本でも11月12日~14日行われ、そこでも明らかにされている。
文・編集:濱田 優
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