ビットコインの主要な指標が弱気転換──トランプ氏の関税に関する発言もリスクに

- ビットコインのモメンタム指標はマイナスに転じたが、価格変動による裏付けはまだない。
- トランプ大統領の関税に関する発言やインフレ期待の高まりは、ボラティリティの低下につながる可能性がある。
ビットコイン(BTC)の大統領選挙後の価格急騰を予見していたモメンタム指標が現在、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税に関する発言と時を同じくしてマイナスに転じ、市場の不安定化を招く恐れが出てきた。だが、まだ慌てる必要はない。
その指標はMACD(マックディー:移動平均収束拡散)ヒストグラムで、トレンドの強さと変化を測るのに使われる。これは、過去26期間(この場合は週)のビットコイン平均価格水準を、過去12週間の平均から差し引いて算出される。
そしてシグナルラインは、MACDの9週間の平均として算出され、MACDとシグナルラインの差はヒストグラムとしてプロットされる。
ビットコインの週足チャート上のMACDはゼロを下回るクロスオーバーを見せており、これは弱気への転換を表していると言われている。一方、ゼロを上回って行く場合は強気の傾向を示す。この指標は10月中旬にプラスに転じ、10万ドルへの上昇を裏付けるものとなった。
そのため、最新の弱気のMACDシグナルは強気派、特にテクニカル分析ツールに頼っている個人投資家を警戒させるかもしれないが、BTCの現在の価格動向は、この指標のネガティブな読みを裏付けるものではない。
現在、BTCは9万ドルから10万ドルの広いレンジ内に留まっており、さらに最近の動きは9万5000ドルから10万ドルのレンジに収斂している。方向性のない取引は、MACDの弱気なクロスオーバーの重要性を低下させる。
指標は価格変動から導き出されるものであり、その逆ではないということを肝に銘じておくことが重要だ。MACDのシグナルは価格変動によって確認される必要がある。10月中旬の指標の強気なシグナルは、数カ月にわたる取引レンジを価格が突破したことによって裏付けられた。

関税の脅威とインフレ期待
MACDはまだ懸念すべき状況ではないが、いくつかのマクロ要因は、この暗号資産(仮想通貨)が9万ドル付近の長期にわたって維持されてきた支持水準を試す可能性がある下振れ変動の潜在的な要因として注目に値する。その水準を下回れば、MACDの新たなマイナス値が裏付けられ、勢いの弱気転換が確認されることになる。
その筆頭に挙げられるのが、トランプ大統領の関税に関する発言であり、これが実行に移されれば、債券利回りの上昇とリスク資産の下落につながる可能性がある。
トランプ大統領は今週後半に発表される予定の追加の金属への関税に加えて、すべての鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%の関税を課すことを発表すると述べた。UBSによると、トランプ大統領は今月末に欧州連合(EU)から輸入される幅広い商品に高い関税を課す計画を示唆している。
2月7日に発表されたミシガン大学の消費者信頼感調査では、関税の脅威がすでに経済における物価上昇に対する消費者の期待に悪影響を与えていることが示された。向こう1年間のインフレ期待は、1月の3.3%から2月には4.3%に上昇し、2023年11月以来の高水準となった。
このため、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は急速な利下げを控える可能性がある。「2年物インフレスワップは、関税に関するある程度のリスクプレミアムを織り込み始めている。2.72%という水準は、過去最高値だ。市場はFRBが長期にわたって利下げを保留すると解釈している。成長はまずまず維持されており、仮にインフレ率が2%まで低下しても、FRBは急いで利下げする必要はないという考え方だ」とマクロ・コンパス(Macro Compass)の筆者であるアルフォンソ・ペカティエロ(Alfonso Peccatiello)氏はXで述べた。
アメリカの1月の消費者物価指数(CPI)は2月12日に発表される予定だ。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Indicator That Signaled $70K Breakout Turns Bearish as Trump’s Trade War Rhetoric Grows