米証券取引委員会(SEC)に対して11月13日(現地時間)、中国最大の保険会社のフィンテック部門であるワンコネクト・ファイナンシャル・テクノロジー(OneConnect Financial Technology:金融壹账通)はIPO(新規株式公開)目論見書を提出した。同社はソフトバンクが支援しており、ナスダック(NASDAQ)での上場を計画している。
今回SECに提出されたワンコネクトの目論見書には、資金調達の設定額は1億ドル(約109億円)とされているが、この数字はさらに増える可能性もある。
ロイター(Reuters)は9月、同社が評価額の高い香港での上場に失敗した後、ニューヨークでの上場を検討していると伝えた。その報道によれば、同社は80億ドル(約8,700億円)の評価額で、IPOを通じて10億ドル(約1,090億円)の資金調達を目指していた。
今回のIPOの引受会社には、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、JPモルガン(JPMorgan)、HSBCなどが含まれる。
ワンコネクトは、ピン・アン・インシュランス(Ping An Insurance:中国平安)の一部門で、日本のプライベートエクイティ大手ソフトバンク(SoftBank)から直接支援を受けている。ピン・アンの2018年の年次報告書によれば、ソフトバンクは2018年、ワンコネクトの評価額を75億ドル(約8157億円)としたシリーズA資金調達ラウンドを主導した。
年次報告書によれば、ピン・アンは2019年上半期の終わりまでに274件と、中国で2番目に多くのブロックチェーン関連特許を申請しており、ワンコネクトは年間売上の1%をブロックチェーン開発に充てるとされている。
ワンコネクトは、金融サービス業界におけるブロックチェーンプロジェクトに取り組む8つの研究専門機関と50の技術ラボを抱えている。ワンコネクトのホワイトペーパーによれば、同社のFiMAXブロックチェーンネットワークは、データシェアリングとプライバシープロセスを改善するとされている。
ソフトバンクも後押しする壮大な野望
ホワイトペーパーには、貿易金融、資産の証券化、サプライチェーンファイナンシングにおける既存のプロジェクトと将来のプロジェクト、そして医療、不動産、スマートシティマネジメントなどの銀行以外の業界に適用できる14のユースケースが詳細に記されている。
ワンコネクトは2016年、R3企業ブロックチェーンコンソーシアムの最初のメンバーとなり、ハイパーレジャーを基盤とした技術インフラでのアプリケーションを検討していた。
ワンコネクトのウェブサイトによればブロックチェーンは、ブロックチェーン技術を利用する可能性のある人工知能、ビッグデータ、クラウドサービスと合わせて、同社の4つの主要事業分野の一翼を担う。
10月に国家インターネット情報弁公室により作成された最新のブロックチェーンプロジェクト登録リストに、同社の2つのプロジェクトは載っており、そこには、データ分析プラットフォームとブロックチェーンを基盤とした投票および意思決定システムが含まれていた。
2018年の年次報告書によれば、ワンコネクトは200を超える中国の銀行、20万の企業、500の政府および商業機関と取引があった。
翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真:NASDAQ image via Shutterstock
原文:Fintech Arm of Chinese Insurance Giant Files for US IPO After Blockchain Push